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世界平和統一家庭連合
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  世界平和統一家庭連合英語: Family Federation for World Peace and Unification、略称: 家庭連合FFWPU)は、宗教法人である。旧名称は世界基督教統一神霊協会英語: Holy Spirit Association for the Unification of World Christianity) 、略称: 統一教会統一協会)。朝鮮半島キリスト教の土壌から発生し、文鮮明によって1954年韓国で創設された宗教右翼団体である。
  開祖の文鮮明は「愛天、愛人愛国」の教えを説き、日本の初代会長の久保木修己は「美しい国、日本の使命」の教えを説いた。
  アメリカ合衆国下院調査小委員会の報告書では、朴正煕大統領の個人的な指示の下、韓国の政治的目的を達成する為にKCIA(大韓民国中央情報部)部長金鍾泌により設立されたとされている。

  欧米ではカルト宗教とみなされており、韓国、日本、米国ウクライナなどに拠点が存在する。フランスソビエト連邦諸国などでも活動を広めようとしたが、フランスでは反セクト法により、ロシアではプーチン政権が定めたネオナチ勢力(セクト勢力)に対する対テロ法により、統一教会を安全保障上の問題があるとして規制と監視対象とした。
  多角的にビジネスを広げ巨大な資金力と国際的な政治力を持ち、韓国では財閥組織の扱いを受けているが、教団の運営資金源の7割は日本で社会問題となっている霊感商法などから捻出されたものである。70年代当時には「マインド・コントロール」の手法を確立し、その後の新興宗教勢力であるオウム真理教をはじめとするカルト的宗教団体が模倣していった。
  日本では安倍晋三元総理大臣の祖父、文鮮明の盟友であった自由民主党元総裁岸信介の時代から、反共産主義運動右派運動などの保守政治、日本の右傾化の歴史に根深く関与してきた。
  1984年世界日報編集長兼連合幹部、副島嘉和1970年代の10年間で日本から韓国へ約2000億円が送金された事など、文藝春秋1984年7月号に18頁に渡る手記を内部告発した。1984年6月10日頃には全国の店舗に並んだが、その直前の1984年6月2日夜、副島が帰宅途中に何者かに襲撃され、全身を刺され瀕死の重傷を負った「副島襲撃事件」が発生。この事件後、世界日報はより統一教会色が強い新聞となった。この襲撃事件はマスコミも言論事件として一切取り上げず、犯人を特定できないまま1991年6月2日に公訴時効を迎えた。(詳細は「副島嘉和#副島手記」および「副島嘉和#副島襲撃事件」を参照)
  韓国と日本では史観が違っており、アダム国家韓国では献金などのノルマなどは厳しくなく、「サタン(悪魔)の国」であるエバ国家日本は「金のなる木」の場所として、アダム国である韓国と国内外の統一教会に全てを捧げる教義が教えられている。また、エバ国家日本のLGBT同性婚夫婦別姓は「生活共産主義」とされ、認めさせてはならないと説いている。
  連合ではイエス・キリストの「再臨論」も説いており、天照大神を崇拝してきた全体主義国家であり、韓国のキリスト教を過酷に迫害した日本と、共産化した中華人民共和国は「サタンの国」である為、イエスが再臨する『東の国』とは韓国であるとしている。また、「メシアを迎え得る国となるために我々は第三イスラエル選民となければならない」としている。
  文鮮明の教え(教義)の一つとして、文教祖の恨(ハン)を晴らすのは「エバ国家日本をアダム国家韓国の植民地にすること」「天皇を自分(文教祖)にひれ伏させること」としている。以下、便宜的に「統一教会」と表記する。
概要
  統一教会は宗教学ではキリスト教系の新宗教とされ、文化庁が発行している宗教年鑑ではキリスト教系の単立に分類されている。また、欧米ではカルト宗教であるとされている。1994年5月に名称が変更され、日本では遅れて、2015年8月26日に宗教法人名を管轄している文化庁から改称を認証された。
  開祖である文鮮明は、朝鮮半島がまだ日本の植民地であった現在の北朝鮮平安北道出身であり、南東朝鮮分断後に北朝鮮初代最高指導者となる金日成主席と親密関係であった。文鮮明は反共産主義者であり、南北朝鮮の統一を提唱し、その功績は南北朝鮮政府から認められていた。1947年、韓国のスパイとして北朝鮮政府から有罪判決を受け、5年間フンナム(興南)労働収容所に収監された[51]朝鮮戦争中の1950年国連軍アメリカ軍によって文鮮明ら捕虜は解放された。1954年、韓国ソウル世界基督教統一聖霊協会(統一教会)を設立し、聖書の新解釈による保守的で家族的な教えを基調とした活動を行い、1971年に渡米し、その信念を伝える講演を行い、米国内にて信頼を積み上げていった。その後、再度文鮮明は北朝鮮の金日成主席と関係を深めていった。
 また、文鮮明は自由民主党安倍晋三元総理大臣の祖父である岸信介と盟友であり、1950年代から日本の政界と協力していた。岸の自宅付近には統一教会の施設が存在し、そこで岸は交流会や講演会などを行っていた。神田外語大学民族主義運動の専門家であるジェフリー・J・ホールは、統一教会は岸信介の時代から日本の保守政治に関与してきたと指摘しており、国際勝共連合などと共に日本の反共産主義運動右派運動といった、日本の右傾化の歴史に根深く関与してきたとしている。

  文鮮明は教義の一つとして、「日本の天皇と韓国の王とが交差結婚をしなければならない。」「日本の皇室と(文教祖の)孫たちが結婚する時が来て、すべての国の王権の代表者たちと結婚する時代に入る。」「韓国が支配された立場とは逆に日本を支配するところまでいかなければなりません。」と説いた。
  統一教会の教典「原理講論」の韓国版には「日本はサタン(悪魔)の国」であるとしており、文鮮明教祖はイエス・キリストの再来と書かれており、日本支部会長扮する天皇陛下が文教祖一家にひざまずく儀式を行っている。
  日本統一教会の初代会長は、反共産主義政治団体国際勝共連合の日本における初代会長久保木修己である。久保木修己は「(反共産主義政治団体である)勝共こそキリスト者の聖使命なり」とし、韓国との交流を深めさせ、「日本という『美しい国』の使命」を説いた。

  1984年世界日報編集長で統一教会幹部、副島嘉和国際勝共連合の信者数百人から占拠監禁暴行を受け強制解任された後、元営業局長井上博明と連名で文藝春秋1984年7月号に18頁に渡る手記を暴露発表した。副島の内部告発により、1970年代の10年間で日本から韓国へ約2000億円が送金された事など、初めて日本国内の一部に統一教会の内情が露見した。1984年6月10日頃には全国の店舗に並んだが、その直前の1984年6月2日夜、副島が帰宅途中に何者かに襲撃され、全身を刺され瀕死の重傷を負った「副島襲撃事件」が発生。この事件は、マスコミも襲撃事件を言論事件として取り上げず、犯人を特定できないまま1991年6月2日に公訴時効を迎えた。(詳細は「副島嘉和#副島手記」および「副島嘉和#副島襲撃事件」を参照)

  統一教会は、霊感商法を利用した高額な物販と献金に関する問題や、教団が結婚相手を決める合同結婚式麻薬関連のマネーロンダリング密輸統一教会信徒の拉致監禁問題反共産主義朝鮮半島の統一の支持、歴史修正主義反同性婚反夫婦別姓反ロシア思想、岸信介政権時代からの自由民主党との関係などの政治との関わりなど、様々な問題で物議を醸している。特に統一教会の布教方法と、高額な献金や財物の購入を強いられることが問題とされ、統一教会を相手に元信者らが札幌地裁に提訴した「青春を返せ裁判」は1987年から2001年までの14年間に及んだ。
  2000年(平成12年)の広島高裁岡山支部での控訴審では一審を破棄し、統一教会/統一協会の伝道の違法性を認定する全国初の判決が出た。これは日本において、宗教団体による勧誘・教化行為の違法性を認めた全国初の判決となった。
  世界で活動する教団の運営資金の7割は日本での「霊感商法」から得られたものであり、日本は「金のなる木」、集金の場所として扱われた。
  1970年代中盤から80年代中盤までに日本での霊感商法で稼いだ資金のうち、8億ドルはアメリカに送金され、統一教会のアメリカでの大規模な布教活動やロビイング活動に利用された。この資金源はアメリカの信者には秘密であった。それらの資金を利用して、韓国、日本、米国で保守系日刊紙を刊行しており、文鮮明が推進した事業には、日本では1975年創刊の保守系新聞世界日報、1982年に文鮮明はアメリカの保守系新聞であるワシントン・タイムズ、国際ニュースメディア企業「ニューズ・ワールド・コミュニケーションズ」、などがあり、特に財閥組織である「トンイル・グループ(世界基督教統一神霊協会維持財団)」はその代表格である

  統一協会系月刊誌「世界思想」では、「戦後憲法の終焉」「今こそ日本を取り戻そう」等のフレーズが使われており、また安倍晋三元総理大臣の写真が過去複数回にわたり表紙に使われ、宣伝利用による霊感商法被害拡大の恐れが懸念されていた。また韓国の系列企業のビジネスには、日本の献身(無給に近い待遇で、教団の指示のもと様々な活動に従事すること)した信者による物販で稼ぎ出された資金が使われていた。
  全国霊感商法対策弁護士連絡会によると、判明している分だけで、1987年から2021年までの霊感商法による「被害件数」は3万4537件で「被害総額」は約1237億円に上り、物販には壺・印鑑・朝鮮人参濃縮液などが用いられ、その「被害」の高額さから社会問題化している。
  統一教会は韓国と日本では史観が違っており、韓国では献金などのノルマなどは厳しくないが、日本国内での統一教会の信仰者はまず始めに全財産の額の把握を教会にされる。その後「地獄に行く、天国にいけない」と教えられ、莫大な献金を促される。全財産を捧げる事を教義としており、破産しても借金する方法を教える事で貢がせ続ける。
  日本統一教会は「先祖の罪業を辿って償わないと不幸になる」という論理を教義の一つとしており、人値の先祖辺り70万円以上の定額寄付を促される。最終的に信者の財産を絞りつくす為にも、定額寄付は信者の資産ごとにコミットメントされ、場合によって縄文時代にまで家系図を遡るように作成され恐怖を植え付けさせ続ける
  統一協会の教義の確信は「堕落論」にあり、以下が教義内容の一部であり、この教義を利用して霊感商法を行っている。この教義の中の「万物復帰」という教えは、「全ての万物は神に捧げなければならない」という統一教会の集金システムであり、最終的に信者の全財産を捧げさせる為の物である。


  アダムとエバのうち、エバがサタン天使(天使長ルーシェル)と性交して汚れ、その後、エバはアダムを誘惑して性交してアダムも汚れてしまい、2人とも罪人になった。以来、この罪が血統と遺伝を通じて全人類に連綿と伝わってきている。現代社会にエイズレイプ売春テレクラなどの性犯罪が起きる原因は、人類始祖が淫行による罪を犯したため、その子孫である人間に血統遺伝として伝わった証明である。
  神とメシア(文鮮明)は責任を果たしているにもかかわらず、いまだに地上天国が実現しないのは、人間が責任を果たしていないのが原因だと、信者に責任転嫁することができる。
  人類の始祖であるアダムとエバの堕落によって、人間も物もサタンの支配下に入ってしまった。そして、人間はそれ以降、物より下の地位になってしまった。物以下の人間が物以上になるためには、サタンの支配下にあるすべての物(万物)を神側に取り戻さなくてはならない。この万物を神側(統一協会)に取り戻す行為を「万物復帰」という(万物復帰は、実際には資金獲得活動を指している)。
  エバ国家日本はアダム国家韓国に貢ぐことを義務づけられている韓国がアダム国家である理由は、神に選ばれた民族の国であり、世界に真理を発信したメシアの国であるから。日本がエバ国家である理由は、朝鮮を植民地にして多くの人民を苦しめてきた事実などによる。戦後、日本が経済大国になったのはメシア(文鮮明)が神に日本の罪をとりなし、エバ国家として神に認めさせたからだ。
  金と人物の両面で韓国と全世界の統一協会を支えることがエバ国家である日本の責任である。日本人に多く伝道して信者として、その信者を全世界に送り出していくこと、日本で莫大な資金を調達してそれを全世界に供給していくこと、それがエバ国家日本の使命だ。

以下が教義本「原理講論」の韓国語の原本版など、関連書籍の内容の一部である。
   有史以来、全世界にわたって発達してきた宗教と科学、即ち、精神文明と物質文明とは韓国を中心として、みな一つの真理のもとに吸収融合され、神が望まれる理想世界のものとして結実しなければならないのである(略)人類の父母となられたイエスが韓国に再臨されることが事実であるならば、その方は間違いなく韓国語を使われるであろうから、韓国語はまさに祖国語となるであろう。したがってすべての民族はこの祖国語を使用せざるをえなくなるであろう。
  男性(アダム)韓国が、真理の国ということができるとすれば、女性(エバ)日本は産業の国といえるのではなかろうか。深遠な真理をもって語りかけてくる男性に、女性は何をもって返答をするであろうか。婚姻の約束が成った後は、仲人を立て、調度品を将来の夫のもとに納める習いがあるではないか。日本は、驚異的な産業の発展を有している。この産業・経済を男性韓国へ結納として収める歴史的必然性がある。


  統一教会ではキリスト教における「再臨論」も説いており、韓国を蕩減復帰の民族的な基台を立て、第三イスラエル選民となければならないとしている。以下が世界平和統一家庭連合(旧統一教会)公式サイトに記載されている「再臨論」の一部である。


  イエスは東の国に再臨される。(略)では、東方にある多くの国々の中で、どの国がこれに当たるのであろうか。東方のその国は、すなわち韓国である。
  イエスは、アブラハムの血統的な子孫たちに再臨されるのではなく、彼らの遺業を相続して実を結ぶ国に再臨されることを我々は知り、また、実を結ぶ国は、東方の国の中の一つであることも知った。
  古くから、東方の国とは韓国、日本中国の東洋三国をいう。ところがそのうちの日本は代々、天照大神を崇拝してきた国として、更に、全体主義国家として、再臨期に当たっており、また、以下に論述するようにその当時、日本は韓国のキリスト教を過酷に迫害した国であった。そして中国は共産化した国であるため、この二つの国はいずれもサタン(悪魔)側の国家なのである。
  したがって端的にいって、イエスが再臨される東方のその国は、すなわち韓国以外にない。(略)韓国がメシヤを迎え得る国となるためには、原理的に見て、天宙的なカナン復帰のための「四十日サタン分立の民族的な基台」を立てなければならないのである。それでは、韓国民族がこの基台を立てなければならない根拠は何であるのか。イエスが韓国に再臨されるならば、韓国民族は第三イスラエル選民となるのである
  旧約時代に、神のみ旨を信奉し、エジプトから迫害を受けてきた、アブラハムの血統的な子孫が第一イスラエルであり、第一イスラエル選民から異端者として追われながら、復活したイエスを信奉して、第二次の復帰摂理を継承してきたキリスト教信徒たちが第二イスラエル選民であった。ところが、ルカ福音書一七章25節以下に、イエスが再臨されるときにもノアのときと同じく、まず多くの苦難を受けるであろうと預言されたとおり、再臨のイエスは、第二イスラエル選民であるすべてのキリスト教信徒たちからも異端者として見捨てられるほかはないということを、我々は、既に論じたことを通じて知っているのである。もしそのようになるとすれば、あたかも、神が、イエスを排斥したユダヤ人たちを捨てられたように、再臨のイエスを迫害するキリスト教信徒たちも捨てられるほかはないであろう。そうすれば、再臨主を信奉して、神の第三次摂理を完遂しなければならないその民族は、第三イスラエル選民となるのである。

  統一教会の教義には、日本人女性をマインドコントロール(洗脳)し、韓国人男性と強制的に結婚させて韓国の血の入った子を産ませることで、「日本の穢れた血」を浄化するという教えもあり、「合同結婚式」(信者は「祝福」と呼ぶ)と呼ばれる教団内婚制をとり、教祖のインスピレーションに従って信者同士で結婚する。小規模な閉鎖的コミュニティを除き、教団内婚制をとる巨大教団はほかには見られない。また教義として同性婚夫婦別姓は「生活共産主義」としており、エバ国家日本には許されないとして反対している。
  統一教会が大きく成長した最大の戦略的要因として、櫻井義秀は、統一教会が国別に機能を特化させる戦略をあげており、「宗教的競争力のなさを、政治・経済部門の事業多角化とグローバルな事業展開で乗り切ったこと」であると述べている。
  また統一教会が拡大を続けたもう一つの理由は、統一教会の関係者が教義の内容や「自分は統一教会の人間である」ことを隠した状態で教団への「入り口」をカモフラージュしていることがあげられる。何も知らない一般人はそこに集まるように勧誘されて、実はそこは統一教会だった、ということが最後に明かされて、その後、入信にまで誘導する。
  相手を入信させる事に成功すると、次は、自分が統一教会である事や統一教会の教義を段階的に刷り込み、特定の恐怖の対象を与え、その恐怖の対象からの開放手段を与えていく。これは、統一教会がマインド・コントロールの手法をうまく活用している典型である。
  統一教会2世被害者弁護団は、「興味本位などで統一教会関係者や、関連の人物などに接近を試みるのは非常に危険である」と警告している。親世代が統一教会の信者であり、幼少期からドメスティック・バイオレンス(DV)の状態にあった当時の子供達、統一教会2世の被害者は信者や教会からの特定を恐れ、息をひそめ生活せざる得ない等の理由により散在状態になっており、統一教会2世被害弁護団が救済の為に活動している状態である。統一教会2世被害弁護団は今も統一教会による被害は発生し続けているとしており、2022年(令和4年)7月8日に発生した安倍晋三銃殺事件の犯人の動機に関する弁明を行った統一教会による、「2009年以降は全く問題はおきていない」「犯人の母親の寄付額は把握できていない」等とした会見内容は虚偽だとしており、「統一教会と安倍晋三元総理は大して関係が無く、犯人は思い込んだだけである。」とするメディアの報道姿勢や内容も糾弾している。一方で、ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス名誉教授であるアイリーン・バーカーの論文によると、1970年代に統一教会に入信した信者たちは教団に残っているが、その後に入信者を増やすことには成功していないため、教団の高齢化が進んでいる。
  韓国では、宗教としてはシャーマニスティックなキリスト教祈祷院のメガチャーチというようなものであるが、むしろ多様で巨大な複合企業体と認識されており、経済活動や社会事業を行い、結婚に悩む農村部では結婚相談所のような役割も果たしている。統一教会は初期から政治・経済領域に事業を拡大し、政権との間に宗教活動を政治的に庇護してもらう関係を構築し、このやり方は韓国と日本で成功した。異端視される宗教がこのような戦略に成功することは非常に珍しい

  アメリカでは、保守政治や信教の自由を擁護する活動を積極的に行っており、ウェールズ大学サラ・ルイスは統一教会の宗教間対話と平和志向の促進を評価し、統一運動の関連組織の主要な目的のひとつに、「異なる信仰を持つ人びとが出会い、信仰のうちに調和を見出せるようにすることがある」と述べている。日本での収入は、組織全体の7割に昇ったとも言われる。
  アメリカ進出当初、統一教会は活発な活動で欧米のメディア及び研究者の注目を集め、宗教社会学の古典的業績のかなりの部分が統一教会の研究で生み出された。そして1980年代の路線転換後をフォローする研究者がいなかったため、これ以前の研究が教団に利用された。

  日本では、脱会者の証言に軸を置く批判的な研究や、現役信者の証言による教団像の研究はあったが、調査の範囲は狭い。研究者が統一教会と適切な距離を保つことの困難さ、統一教会から研究者へのコントロールの懸念もあり、総合的な調査研究は非常に少ない
  全国霊感商法対策弁護士連絡会事務局長代行を務める紀藤正樹によると、統一教会の信者は自民党の応援団として選挙活動などにも駆り出されているが、2012年(平成24年)に発足した第二次安倍政権以降、国会議員が統一教会の行事へ公然と参加するようになった。統一教会との関係を深めると大臣などへの出世が早まる事が認知され、自民党議員らは教会からの寵愛を受けるために統一教会のイベントに参加するなど関わりを深めていった。統一教会との関係を問題視している自民党議員も一部存在はしたが、彼らは党内での発言権は弱く、出世コースからは事実上外されている。信者は自由民主党への投票を求められる事を、統一教会2世の被害者が語っている。
  統一教会2世被害者弁護団は「統一教会は自身らに都合のいい関係の議員を求めており、自由民主党の議員以外にも関係を持っているが、やはり大部分は自由民主党議員である」、と語っており、1990年代の時点で日本の国会議員の内、百数十名(多くは自民党)の秘書は統一教会の信者であり、議員たちの活動は統一教会へ報告され、指示を受けていた。2018年、自民党代議士が統一教会青年イベントに連続出席。来賓祝辞で教祖への感銘を鮮明語った。

  教祖文鮮明韓鶴子の7男の韓国系アメリカ人である文亨進は、父親の文鮮明が2012年に亡くなった後、母親の韓鶴子が父親の教え以上に自らの立場を上位の物にしようとしたとして、韓鶴子との違いを明確に表明した事により対立、2013年には韓鶴子により教会の複数の立場から解任され、文亨進は分家組織である世界平和統一聖殿(通称:サンクチュアリ教会)を、アメリカ統一教会とは別にアメリカ国内にて立ち上げた。統一教会は現在、文亨進のサンクチュアリ教会を「脱会組織」とみなしており、文亨進が主導した統一運動の変革のほとんどは、彼の解任後に却下された。文亨進は有力なトランプ支持者であるとされ、AR-15を重要視する“Rod of Iron Ministries”を率いている事で知られ、2021年アメリカ合衆国議会議事堂襲撃事件にも参加した。
  990年代にはソビエト連邦でも活動を開始したが、ロシアを含む多くのポスト・ソビエト諸国の宗教当局は、統一教会を安全保障上の問題があるとして規制と監視対象とした。
  2022年2月24日からのウクライナ侵攻後、ウクライナの家庭連合(ウクライナ統一教会)会長アーニャ・カルマツカヤは、「ウクライナとはロシアと戦っているだけではありません。人類の平和、自由、人権の為に戦っているのです。」とメディアやSNS上などを通じてウクライナ愛国心反ロシア思想を世界へ向けて説いている。
歴史
  朝鮮半島の平安北道定州出身の文鮮明[102][103](1920年- 2012年)は、1945年に布教活動を始めた。その後1950年に朝鮮戦争が勃発、1952年に経典の「原理原本」の草稿が完成した。
  1954年5月韓国ソウルで、「世界基督教統一神霊協会」を創設した。なお、名称の「神霊」は、主流派キリスト教における三位一体聖霊とは関係がない。
  1965年に文鮮明一家と幹部たちは、アメリカに宗教・政治的情宣活動の拠点を移し、世界宣教・経済活動を拡大し巨大な統一運動傘下の組織を創設した。韓国の多くの少数派宗教団体とは異なり、朝鮮半島を超えて世界中に普及したという特異性を持つ。世界193か国に支部がある。
  日本では、1958年6月に崔奉春(チェ・ボンチュン。通称名西川勝。)が密航し、統一教会を伝えた[109]。1959年から1965年まで宣教が行われ、同年にアメリカ、イギリスでも布教が行われた。近年は東ヨーロッパと南アメリカで拡大している。
  1964年7月16日、日本で宗教法人の認可を受けた。初代会長になったのは元立正佼成会信者の久保木修己だった。同年、「原理研究会」が設立され全国の大学で学生伝道を開始した。世界平和統一家庭連合の総裁は、文鮮明の妻である韓鶴子が就任している(2008年時点)。
  1968年4月、文鮮明岸信介らの協力を得て反共産主義政治団体「国際勝共連合」を日本に設立した。
  1971年、文鮮明は大韓民国籍のまま米国に移住した。

  1970年代には、1974年にニューヨークのマディソン・スクエア・ガーデンで、1976年にはニューヨークのヤンキースタジアムで2回、そしてワシントンDCのワシントン記念塔の敷地内で30万人を前に「アメリカに対する神の希望」について講演するなど、米国で次々と公の場で演説を行った。
  1973年、自由民主党の岸信介は統一教会開祖の文鮮明に朝鮮半島にて出会い、日本に統一教会を広める切っ掛けを生み出した。文鮮明は岸信介と盟友であり、1950年代から日本の政界と協力していた。岸信介が文鮮明握手した写真は統一教会で「世界でいかに統一教会が認知され、我々の理念が間もなく達成されようとしている。」 といった説明に使われている。
  1990年代の前半に霊感商法や合同結婚式で話題になったが、この時代でさえもあまり信者を獲得できていなかった。この合同結婚式によって家庭を持った日本人の信者数は10000組を超え、2004年時点で統一教会による合同結婚式で韓国人男性と結婚して韓国で暮らす日本人女性信者数も7000人ほどいる。
  1975年、統一教会は韓国の汝矣島で120万人を集めて史上最大の平和的集会を開催した。
  1970年代、統一教会は他のいくつかの新宗教運動とともに、反カルト運動のターゲットとなった。活動家たちは、この運動が会員を「洗脳」していると非難した。
  1978年、イギリスのタブロイド紙デイリー・メールは、「家庭を崩壊させる教会」という見出しの記事を掲載した。その記事は、統一教会が家族を洗脳し、引き離していると非難するものであった。英国統一教会のデニス・オーム所長は、デイリー・メールとその親会社であるAssociated Newspapersを相手に名誉毀損訴訟を起こし、英国法史上最長となる6ヶ月の民事訴訟となった。オーム所長と統一教会は、名誉毀損訴訟、控訴審で敗訴し、貴族院への提訴も拒否された。元の裁判では、アメリカの反カルト精神科医マーガレット・ターラー・シンガーを含む117人の証人の話を聴取した。原審では、統一教会はAssociated Newspapersに75万ポンドの費用を支払うよう命じられたが、これは控訴後も維持された。原審の陪審員は関連新聞社に費用を与えただけでなく、法務長官に統一教会の慈善団体としての地位を再調査するよう要請し、1986年から1988年までの長期の調査の後も解任されなかった。ジョージ・クリシデスによれば、英国にいた統一教会の500人のフルタイム信者の約半数が米国に移った。統一教会は判決の後、12の主要な教会センターのうち7つを売却した。ドイツのような国の他の反カルト主義者は、ロンドン高裁の判決を法律に組み入れようとした。統一教会は、デイリー・テレグラフ紙に対する同様の裁判を含め、英国で他の名誉毀損や誹謗中傷の裁判に勝利している。
  1982年、文鮮明は米国で虚偽の連邦所得税申告と陰謀の罪で有罪判決を受けた:United States v. Sun Myung Moonを参照。彼はコネチカット州ダンベリー連邦刑務所で13ヵ月間服役した。この事件は、モラル・マジョリティー代表のジェリー・ファルエル、南部キリスト教指導者会議代表のジョセフ・ローリー、ハーバード大学神学教授のハーヴィ・コックス、アメリカ合衆国上院議員で元民主党大統領候補のユージン・マッカーシーなどから、選択的起訴であり信仰の自由への脅威であると抗議を受けた。
  1980年代から、文鮮明は統一教会のメンバーに「家庭教会」と呼ばれるプログラムに参加するよう指示し、公共サービスを通じて隣人や地域住民に手を差し伸べるようにした。
  1982年、文鮮明はアメリカ脱税の罪で懲役判決を受けた。
  1984年、日本統一教会元幹部、副島嘉和と元営業局長井上博明が連名で、文藝春秋1984年7月号に「これが『統一教会』の秘部だ―世界日報事件で『追放』された側の告発」という18頁に渡る手記を暴露発表した事で、初めて日本国内の一部に統一教会の暗部が露見した。
  1984年6月10日頃には全国の店舗に並んだが、その直前の1984年6月2日夜、副島が帰宅途中に何者かに襲撃され、全身を刺され瀕死の重傷を負った「副島襲撃事件」が発生した。襲撃事件時、世界日報の元社会部記者が副島の自宅に偶然おり、副島が瀕死の状態で自宅にたどりついた時の様子を証言している。副島は全身を刺され、最も深い物で刃渡り15㎝まで到達していたが、心臓からわずかに2センチメートル外れており、また世界日報の別の記者が事件直後にたまたま副島の自宅を訪ねており、救急車に担ぎ込まれた事により副島は奇跡的に生還した。副島らは、この襲撃事件前後の統一教会との確執に関して原稿を書き『週刊文春』に持ち込んだが採用されなかった。また、マスコミも襲撃事件を言論事件として取り上げようとするところはなかった。副島らは孤立無援の状態で統一教会の告発を続けたが、さまざまな事情によりグループから脱落者が出て、それを続けることは難しくなっていた。偶然ではあるが、1984年秋から『朝日ジャーナル』が統一教会、霊感商法の批判キャンペーン記事を掲載しはじめたため、副島らが始めた統一教会批判は実質的には『朝日ジャーナル』へ引き継がれることになった。この襲撃事件は殺人未遂事件としてではなく、傷害事件として捜査された。
  1990年代、ソビエト連邦で活動を開始したが、ロシアを含む多くのポスト・ソビエト諸国の宗教当局は統一教会を安全保障上の問題があるとして規制と監視対象とした。
  1991年、文鮮明は、統一教会員が故郷に戻り、そこで使徒的活動を行うべきであると発表した。新宗教運動の研究者であるマッシモ・イントロヴィーニュは、このことは運動のメンバーにとって、もはやフルタイムの信者が重要であるとは考えられないことを確認したと述べている。同年6月2日、「副島襲撃事件」は犯人を特定できないまま公訴時効を迎えた。
世界平和統一家庭連合(1994-)
  1994年5月1日(統一教会創立40周年)、文鮮明は統一教会の時代が終わったことを宣言し、新しい組織を発足させた。統一教会のメンバーと他の宗教団体のメンバーが共通の目標、特に性的道徳や異なる宗教、国家、人種の間の和解の問題に向けて働く「世界平和統一家庭連合」(FFWPU)であった。FFWPUは祝福式を共同主催し、他の教会や宗教の何千ものカップルに、以前は統一教会のメンバーだけに与えられていた結婚の祝福が与えられた。
  2000年、FFWPUは、ワシントンD.C.で行われた家族の結束と人種的・宗教的調和を祝う集会「100万家族行進」を、ネーション・オブ・イスラムとともに共催した。2000年10月16日、同じくルイ・ファラカンが主催した100万人行進の5周年記念日に開催され、ファラカンがメインスピーカーとして登壇した。FFWPUの指導者であるダン・フェファーマンは、ファラカンと文の見解は複数の問題で異なっているが、「神を中心とした家族」という見解は共有していることを認める手紙を同僚に送っている。
  2003年、韓国のFFWPUのメンバーは、韓国で「神と平和と統一と家庭のための党」という政党を立ち上げた。新党の発足宣言では、神と平和について国民を教育することによって、朝鮮半島の統一を準備することに重点を置くと述べている。FFWPUのある幹部は、日本や米国でも同様の政党を立ち上げると述べた。FFWPU関連の万国平和連合会の中東平和構想は2003年から、ユダヤ人、イスラム教徒、キリスト教徒の間の理解、尊敬、和解を促進するために、イスラエルパレスチナの団体ツアーを開催している。
  2012年2月の始め、旧ソビエト国家であるキルギスでは、キルギス国家保安委員会、キルギス検察庁、および州宗教問題局が、統一教会の活動が適切な登録なしに非伝統的な宗教的見解を強制的に広めることにより、キルギスの国家安全保障に脅威を与えたと主張。裁判所に苦情を申し立てた。ビシュケク裁判所は、キルギスの領土での統一教会の活動を実質上不可能とする判決を下した。
  には開祖の文鮮明が死去し、妻の韓鶴子が組織全体の責任者となったが、「家庭連合幹部と母親韓鶴子女史が、後継権を奪い、韓鶴子女史が自ら教主となり、相続権を奪われた」と主張する七男の文亨進派と分裂した。
  その後、文亨進は、サンクチュアリ教会を設立した。そして、文亨進は家族連合(韓鶴子率いる統一教会)と裁判で争い(『統一マーク使用権訴訟』)、勝訴した。

  サンクチュアリ教会の掲げる主張は統一教会とは異なり、「全能の神が与えた権利によって武器を持ち、民が互いと人類の繁栄を守ることのできる平和の警官、平和の兵士の王国」と銃賛美の宗教となっている。同年には札幌地裁により、違法な布教活動、伝道や献金を強いたとして布教活動を違法とする判決が下された。
  韓鶴子は、現在のこの運動のリーダーであり、公的なスポークスパーソンとして活動している。2019年、日本での集会で講演し、環太平洋諸国間の理解と協力の拡大を呼びかけた。2020年、家族連合主催の朝鮮半島統一のための対面・仮想集会で講演し、約100万人の参加者を集めた。
  2020年、潘基文国連事務総長鮮鶴平和賞を受賞し、100万米ドルの賞金を授与される[155][156]。同年11月4日、ウクライナ出身の政治評論家アンドリー・ナザレンコは「改憲実現オンライン集会2020」(主催=同実行委員会、後援=勝共 UNITE、国際勝共連合)にて基調講演し、自衛隊の明記など憲法改正の実現を訴え、これらは世界平和統一家庭連合(旧統一教会)系日刊紙、世界日報に掲載された。また、同年12月18日の世界日報のインタビュー、「『家族』保護は国の優先課題 政治評論家 ナザレンコ・アンドリー氏に聞く」では、同性パートナーシップ制度をはじめ現在のLGBT運動について、政治家が反対の立場で発言すると、少なからぬテレビ・新聞から強く批判される事について、日本のメディアをどう見るかというインタビューが掲載された。
  2021年、統一教会の関連団体が主催するイベント「希望の結集(Rally of Hope)」でドナルド・トランプ安倍晋三が演説を行った。統一教会は、安倍の祖父で元首相の岸信介や、安倍の父で元外相の安倍晋太郎と関係がある。
  2022年2月24日からのウクライナ侵攻後、ウクライナの家庭連合会長アーニャ・カルマツカヤは、「ウクライナは人類の平和、自由、人権の為に戦っている」とメディアやSNS上などを通じてウクライナ愛国心反ロシア思想を世界へ向けて説いている。
  2022年7月8日、安倍晋三元首相が奈良市で暗殺されたが、犯人は、安倍が統一教会と強い関係性があると主張し、統一教会への恨みを晴らすために安倍を銃撃したと動機を説明しているとされる。

政治思想
  文鮮明は戦闘的な反共産主義者であり、共産主義は神の摂理に基づく民主主義に対抗する悪魔によるものと主張していた。韓国主導の南北統一を望む西側諸国、特に西側諸国の反共派から相互支持を獲得することで統一教会は規模を拡大した。
  ソ連には共産主義が失速した後、西側から様々な新興宗教が進出していたが、文鮮明もソ連人を援助し、1990年4月にモスクワで開かれた統一教会の世界メディア会議の後、ゴルバチョフと個人的に面会し、日本の経済界に働きかけて対ソ投資について調査させることを約束した。
  アメリカでは1970年代以降、共同的な組織から権力を分散した家庭的な構造に移行し、「ホームチャーチ(家庭教会)」として知られる一つの家族の家庭で暮らすことが奨励されるようになった。ホームチャーチは地域の家族に仕え、責任を持つよう期待される。
  1980年代に祝福を受けた会員のほとんどは、この落ち着いた生活スタイルになり、統一教会の正会員をやめ賛助会員として、個人的な家庭と仕事を持って暮らしている。しかし、文鮮明の子息で末っ子の文亨進が2015年頃にアメリカ合衆国でワールド・ピース・アンド・ユニフィケーション・サンクチュアリー教会(通称:サンクチュアリー教会)を分派的に設立している。クーリエ・ジャポンによると、教会の信念はキリスト教と聖書に根ざしてはいるが、「武器信仰」が特徴であり、経典は独自のものとなっている。
北朝鮮に対する融和路線への転換
  統一教会は北朝鮮とは、「宗教の自由を認めず、弾圧している」として長年敵対関係にあった。政治団体である国際勝共連合という「反共組織」を通じて、反共の先頭に立って「共産主義撲滅」「打倒金日成政権」の運動・活動を展開していた。北朝鮮の金日成主席を「共産主義の悪魔」と攻撃し、北朝鮮もまた世界基督教統一神霊協会(統一教会)の創始者・文鮮明教祖を「反共の頭目」と痛烈に批判していたように統一教会と北朝鮮はまさに不俱戴天の間柄だった。
  しかし、ベルリンの壁の崩壊と東欧社会主義諸国の瓦解後である1990年11月30日に、文は金日成による招聘を受けて北朝鮮を電撃訪問し、金日成主席と会談している。金日成は「連邦制による祖国統一実現のためには反共主義者とも手を握る必要がある」として、文をVIP待遇で「統一の使者」として受け入れるよう指示していた。これは、北朝鮮の党国際局・対韓担当の祖国平和統一委員会などの反対を押し切った判断であった。
  文鮮明は1950年12月以降から韓国へ移住まで北朝鮮部分に住んでいた拷問を受けたこと、3年近くの興南監獄で多くの罪なき囚人たちが死んでいくのを見たことで反共思想になったと述べている。
  満40年10か月ぶりの北朝鮮訪問後の1991年12月7日に北京での声明文「北朝鮮から帰って」において、「北朝鮮に恨(ハン・恨み)が多いと言えば誰よりも多い人間です。」「過去40年の東西冷戦時代に誰よりも徹底した反共指導者であり、国際勝共連合の創始者として一生を勝共闘争に捧げてきたことは、世界がみな知っております」「冷戦時代の終焉とともに招来した平和の運勢を世界的に拡散させるために、私は「世界平和連合」を創設し、国際的平和運動を主導しています。」「統一祖国の明るい新世紀を迎える準備を急ぎましょう。」と冷戦崩壊後に対北朝鮮方針を転換した理由を述べている。
  2012年9月3日に世界基督教統一神霊協会(統一教会)の創始者の文鮮明が死亡した際には、北朝鮮の金正恩第1書記は遺族に弔電を送り、「文鮮明先生は逝去したが、民族の和解と団結、国の統一と世界平和のために傾けた先生の努力と功績は末永く伝えられるだろう」との哀悼の意を表している。
  2013年1月22日には北朝鮮と世界基督教統一神霊協会(統一教会)の合弁会社「平和自動車(Pyeonghwa Motors)」の最高経営責任者(CEO)で、米国市民権を持つ朴相権へ追加投資を引き出すために、北朝鮮から平壌市の名誉市民証を授与されている。
名称
教典
  統一教会の教典は1966年に初版が刊行された『原理講論』(原理講話)とされる。日本語版は1967年に刊行され、日本の統一教会信者は長らく教典として重視しており、これを基に信仰心を形成してきた。日本の教団幹部や彼らに教化された教団信者の世界観・信仰観を知るための、検討の対象となる文献である。文鮮明の『原理原本』をもとに、劉孝元(ユ・ヒョウォン)が『原理講論』をまとめ、表向きは「聖書の解説書」と称するが、実質的教典として扱われている。
  『原理講論』は、文鮮明の高弟である劉孝元(教会長、1970年死去)が、文鮮明の『原理原本』を増補し、彼の説教を整理したものである。
  『原理原本』(1952年発行)は、韓国の神秘主義的キリスト教改革運動の流れを汲む「イスラエル修道院」の金百文(キム・ベンムン。キリストの親臨を主張した、柳明花の信奉者のひとり白南柱の弟子)の著作『基督教根本原理』(1946年3月2日起草、1958年3月2日発行)の執筆中に文鮮明が盗作したという証言がある
  それに対し統一教会側は「金百文の著作が世に出る前に、『原理原本』そして『原理解説』(1957年発行)が作成された」と主張している。
  『原理講論』は初版以降数度改版され、新しい部分も追加されている。初版には、メシアが文鮮明であること、メシアが誕生する国が、韓国であることの論証部分はないが、第3版には追加されている。
  『原理講論』のはしがきには、本書が完成版ではなく、編者により適時増補、または加筆修正される可能性のあることが説明されている。『原理講論』の言葉を勝手に解釈したり、自分の言葉を付け加えることは、分派発生の原因になるとして信者には禁止されている。
  ハンガリー人のカトリック神学者神父上智大学神学部教授であったネメシェギ・ペトロは、『原理講論』では、神は「ゲルマン民族を新しい選民として立て」たという主張を基に、古代末期以後の歴史はすべてゲルマン民族に集中して語られていて、カトリック教会はキリスト教の堕落したものとして描かれており、ルターが新しい福音の光をもたらした存在とされるなど、韓民族を現在の選民であるとする最後の唐突な飛躍を除き、ゲルマン・アングロサクソン系のプロテスタンティズムの立場で書かれていると述べている。(日本語版では削除されているが、英語版『原理講論』には、「韓国の民が神によって選ばれた第三のイスラエルとなる」と書かれている。)
  聖書に預言された再臨のキリストが文鮮明であるとすることから、エホバの証人モルモン教末日聖徒イエス・キリスト教会)と共に全てのキリスト教会から異端と見なされている。
  弟子がまとめた教説よりも、生きている文鮮明が直接語った言葉こそが神の教えと考えられるため、初期の説教内容をまとめた『原理講論』だけでなく、教祖の言葉をまとめた『文鮮明先生御言選集』(360巻以上)、『御旨と世界』(1985年)などの説教集、信者の規律についての『御旨の道』なども併せて教義体系を構成しており、近年では説教集『天聖経』(2003年編纂)が『原理講論』以上に重視されるようになっているといわれる。
  「原理講論(Divine Princple)」を見るとキリスト教用語や漢字語の初歩的な誤謬が散見され、著者・劉孝元及び翻訳者・崔元福がそれらに無知であったことが判る。
教義・教説
  統一教会で「原理」とは、文鮮明が霊的体験や独学によって与えられた啓示とされる。他方で文鮮明は1945年に妻の崔先吉と共にイスラエル修道院に通い金百文の教えを学んで盗作したという証言がある。 統一教会の信者は「原理」は旧約聖書新約聖書の解釈であり、究極的、決定的な真実であると信じている。
  「原理」は主に「創造」、「堕落」、「復帰」の3つの部分からなる。『原理講論』は文鮮明の啓示の様々な解釈を書いたもので、「原理」とは厳密に区別されている。1954年に統一教会が創立されて以降、一貫して、聖書よりも『原理講論』が重要視されており、現存する聖書によるキリスト教の正典を超越すると考えられている。この節は本書の内容を中心に述べる。
  『原理講論』の「堕落論」には、「人間始祖の堕落によって、その子孫が、一人残らず、神の血統を受け継ぐことができず、サタンの血統を受け継いでしまった」と記され、「真の父母として降臨されるイエスのみがこれを知り、清算することができる」とする一説が記されている。
  プロテスタントの日本基督教団牧師・宗教研究者の石井智恵美は、教義内に明確な記述はないが、信徒にとって教祖の文が「再臨のイエス」=「人類と霊界を結ぶ比類ない存在」であることが信仰の前提であると述べている。神の愛を中心に結婚し、完全な子供を産み、真実の家族を作ることで、地上の楽園(地上天国)を建設することが目指される。
  ネメシェギは、『原理講論』の思想の特徴として、朝鮮半島の陰陽説、文鮮明が受けたキリスト教的教育に由来する一神論と旧・新約聖書の権威の容認、根本主義的な聖書解釈、象徴的聖書解釈、科学性の主張、終末論的歴史神学、神との「霊交」で得られたという「啓示」を挙げ、『原理講論』の教えの根拠は、実際には哲学・自然科学・客観的な聖書解釈・キリスト教会の教えのいずれでもなく、真の根拠は著者が述べているように、文鮮明が受けたという「啓示」であると述べている。
神の世界創造の目的
  神はこの世からの刺激によって、はじめて喜びに満たされるとされている。旧約聖書の創世記第1章28節「生めよ、増えよ、地を従わせよ」から、神の創造の目的は3つあるとされ、統一教会では三大祝福と呼ばれている。

  1-「生めよ」を、人格完成、個性完成せよと解釈する。但しヘブライ語にはそのような意味はない。また神は人が創造される前、全ての生き物に対しても与えている。
  2-「増えよ」子供を産み増やせを、家庭完成せよと解釈する。但し神は人が創造される前、全ての生き物に対しても与えている。「神の二性性相が各々個性を完成した実体対象として分立されたアダムとエバが夫婦となり、合体一体化して子女を生み殖やし、神を中心として家庭的な四位基台をつくらなければならないのである」とされる。
  3-「地を従わせよ」を、万物を主管せよと解釈する。これが神が人間にだけ与えたもの。神、人類、その他の生物の調和のとれた理想的な世界を創造することを意味する。「万物世界に対する人間の主管性の完成を意味する」とされる。人間は完全な家庭を築くことで、完全な社会、国家、世界を実現するために「増殖」できるのである。統一教会が説く神の目的には、「人間の個性完成」という、近代主義的な発想が持ち込まれている。また、家庭形成という「アジア的家族主義を織り込んだ人間論」(櫻井)も神の創造目的に取り入れられている。
楽園追放と原罪
  『旧約聖書』の「創世記」には、神が創造した最初の人類であるアダムとエバが、罪を犯し楽園を追放される逸話がある。エバが蛇にそそのかされて、次にアダムがエバにそそのかされて、食べることを禁じられていた知恵の樹の実を食べた。この蛇はしばしば悪魔であると解釈される。この罪のために、二人は神に罰せられて、人間は死や労働、出産の痛みといったあらゆる生の苦しみを持つようになり、この世に罪と死とのろいが入り込んだとされる。西方教会では、これがアダムとエバから全人類に「原罪」(ラテン語: peccatum originale)として受け継がれていると考えられている。神学者の宮本久雄は、統一教会における原罪とは、狭義には人間の神との関係の破綻、神と人間との生命的な関係の虚無化を意味しており、従って本来は、モラル規範への単なる違反や男女の性的欲求とは直接関係がないと述べている。(詳細は「原罪」を参照)

  『原理講論』の著者は、文鮮明の説教からルシファー(『原理講論』では「ルーシェル」。「Lucifer」の北朝鮮式発音。魔王サタンが堕落する前の天使の頭の呼称)の堕落を次のように説明している。ルシファーは元々神に最も近い大天使で神の愛を独占するような位置にいたが、神が人間を創造した後はその愛が減少したと感じた。ルシファーは嫉妬に駆られてエバを誘惑し、エバは10代の処女であったが、「神のように目が開けることを望み、時ならぬときに、時ならぬものを願」い、両者には授受作用(相互作用)が生じ、「不倫なる霊的性関係」を結んだ。統一教会ではこれを「霊的堕落」と呼ぶ。天使は肉体を持たないため、これは肉体的な交わりではなく、霊的交わりであった。
  ことの重大さに気が付いたエバは、罪悪感から神の元に戻りたいと願い、神が定めた配偶者であるアダムと結ばれようと、彼をそそのかし性的関係を結んだ。エバは神の元に戻れたと思ったが、ルシファーとの「授受」は真の配偶者との「授受」だけでは回復されず、さらにエバとアダムが性的関係を持つことは神の意志ではなく、神の祝福を受けていなかった。エバは3重に罪を犯しており、神に従うべきであり、婚約者を裏切るべきではなく、婚約者と共に完全に精神が成長してから性的関係を持つべきだった。アダムとエバは、自らの個性を完成する前に時期尚早な夫婦関係を結び、それは神ではなくルシファーを中心としたものであったため、人間は家庭形成に失敗したのである。これは「肉的堕落」と呼ばれる。
  以降すべての人間は、善と悪、神の要素と堕天使の要素を併せ持つ存在になった。アダムはエバと性的関係を結ぶことで、エバがルシファーから受け継いだすべての要素を受けつぎ、子々孫々にもサタン(ルシファー)の血統が継承されているという。これが統一教会における「原罪」である。原罪は遺伝によって伝わるようなものとされている。アダムとエバはその罪によって、人類を偽りの主、サタンに仕えさせることになった。
イエス・キリストと再臨のメシア
  統一教会では、イエス・キリストは既成神学における三位一体の存在ではな、霊的な三位一体と解釈する。心情的には神と一体であるが、イエスを神と言えるのは「すべての完成した人間は神と一体である」という意味においてのみであり、「創造理想を体現した男性」としてその価値は認められる。この点が、主流派キリスト教と最も異なる点である。イエスは、司祭ザカリヤマリアの間に生まれた原罪のない人間であると考えられている。
  イエス・キリストは、サタンが不当に奪った神の「主管性」を回復し、堕落した人類を原罪のない善の人類に産み直し、神を中心に据えた新し人間の血統を築き、地上天国を築くために来たとされている。聖霊は女性神であり、真の母でありエバであるとされる。神はユダヤ民族をはじめとする全人類を救うための代償として、イエスの肉体をサタンに引き渡さざるをえず、イエスの肉体はサタンの侵入を受け虐殺されたとしている。そのためイエスの肉体が復活することはなく、今は霊人間として神のもとに生きているという。
  イエスは十字架上で死に、それは人類の霊的救済のための蕩減条件(代償)になり霊的救いが達成されたが、新しい血統を築くことはできなかったため、救いの摂理は完成されていないと考えられている。
  イエスの死はイエス自身の失敗によるものではなく、洗礼者ヨハネや弟子たちといったほかの人間がイエスを裏切り、見捨て、ユダヤ人が彼を受け入れなかったためであると考えられている。統一教会の信者たちは、神はイエスの死を「神の国」を築くための手段にしようとはしなかったことを強調する。

  宗教史学者の古田富建は、統一教会の教理の核心は、神、イエスの「(ハン)」を解くこと、つまり「恨解(ハンプリ)」であると述べている。「恨」とは、朝鮮文化を語るときにクリシェとして用いられる言葉で、その意味合いには幅があるが、韓国近代宗教史の研究者の川瀬貴也は「様々な要因で叶えられなかった思いが、澱のように沈んでいる状態」と表現している。
  韓国の民族的な霊魂観においては、夭折者・横死者は成仏できず、怨みを抱いた「怨魂」となって彷徨うとされており、特に無念を抱えた者、子孫を残さずに死んだ者の恨みは強く、生者に災いをもたらすとされる。こうした死者の恨みを鎮める儀礼が「恨解」である。
  統一教会では、人間の堕落のために神の創造目的を果たすことができず、神に「恨」を作ったと考えており、神はこの「恨」を解くためにメシアとしてのイエスを遣わしたが、人間が「責任分担」(5%の責任)を果たせずイエスを殺してしまったため、神の「恨」はさらに大きなものになったとされている、と説明している。
  1960~70年代の韓国のキリスト教の一部では、「恨」を教義に取り入れている。李龍道はイエスを人間として理解しようとし、三位一体を否定していた。
  古田富建は、李龍道らはイエスを悲しみや痛みを抱える人間としてとらえ、その孤独や悲しみを理解し共感しようとする姿勢が、聖主教ではシャーマナイズ化された「恨解」の儀礼となっていき、統一教会では教義の根幹になっていると述べている。1965年ごろに、「恨」という言葉が文鮮明の説教に定着した。
  イエス・キリストを救世主として崇める一方、イエスがやり残した多くのことを成就するために、「再臨のイエス」が韓国に生まれると主張している。それは、地上に戻ったイエス・キリストではなく、イエスが霊界から支援する、聖書に示されている普通の人間であるとしている。

  *文鮮明はメシアが、出生する時期や場所といった条件を示しているが、メシアが生まれる地とは韓国であり、示された条件には文鮮明自身が適合する。神学的には、メシアは一組の男女である。
  *文鮮明は1960年に、23歳若い17歳の信者韓鶴子と結婚し、メシア的使命の一環として14人の子供をもうけた。
  *文鮮明は1992年に自身と妻が全人類の真の父母であり、救世主で、再臨の主であり、メシアであることを宣言した。この宣言の前が「新約の時代」、以降が「成約の時代」であるとされる。新宗教ニューエイジなどを研究し、統一運動を肯定的にとらえるウェールズ大学のサラ・ルイスは、この宣言以降、信者自身がメシアになりうるというように強調されるようになり、文鮮明がメシアであるということへの言及は減ってきていると述べている。メシアを受け入れることができなければ、ユダヤ人やローマ時代のキリスト教徒、江戸時代のキリシタンのような受難を罰として与えられると考えられている。
人間における神の要素とサタンの要素の戦い
  人間の堕落は、上記の神と人間の関係を損なったという縦の軸(信仰基台)だけでなく、もうひとつ人間を人間性自体から引き離したという横の軸(実体基台)があるとされる。横の軸の堕落は、旧約聖書におけるアダムとエバの息子カインとアベルの、兄カインが弟アベルを殺したという逸話に基づいている。この人類最初の殺人によって、人間における神の要素とサタンの要素が分離し、互いに争うことになり、横の軸の堕落が起こったとされる。
  「最初の兄弟」の間の敵意は、歴史を通して民族、国内・国際的レベルで繰り返されており、20世紀における無神論的共産主義(カインの勢力)と神を畏れる民主主義(アベルの勢力)の衝突に明らかに見られるという。
  世界中に民主主義が現れたのは神の復帰摂理によるもので、共産主義の専制政治はそれに対抗する悪魔によるものである。従って、第三次宗教改革によって、理念的に共産主義勢力を屈服させ、世界を一つの地上的な「神の国」に統一することが目指される。
  文鮮明は、もし理念的戦いに勝利、つまり共産主義のイデオロギーが敗北しなければ、第三次世界大戦が起こり、サタン側の共産主義が敗北するだろうとしている。そして原子力による第三次産業革命がおこり、幸福で理想的な社会環境が世界的に建設される。その時全人類はキリスト教(統一教会)を受け入れ、最後に神を中心とした、神主義が現れなければならない、という。
二性性相(陰陽二元論)
  初期には、『原理講論』で説かれた統一原理は宗教と科学を統一する原理であると考えられていた。神の存在の弁証も自然科学的な因果論的推測に基づき、結果から原因を探ろうとしている。被造世界を観察することで、神の神性を知ることができると考え、観察によって知れることは、被造物がすべて陽性と陰性の二性による授受作用(相互作用)により存在するということであり、存在というものは性相(内性、性質を示す内性)と形状(外形、内性が現れた外形)の二相を持つとしている。
  神は霊とエネルギーという二重の性質からなるとされ、この2つによってあらゆるものが生まれるとされる。神はエデンの園でアダムとエバを作り、神自身の二重性を反映させた。人間には外形である肉体と、内性である精神が備わっているとされる。
  神の内性の本質は心とも呼ばれ、神がどのように人間の復活を達成しようとしているかを理解するには、神の心にある愛、喜び、悲しみといった、もっとも奥深い神の感情を理解することが重要であると考えられている。人間は神の似姿として想像されたのだから、神は男性的な面と女性的な面の両方を持つと考えられているが、習慣的に神は男性として「父」と呼ばれている。
  被造物がすべて陽性と陰性の二性を持つという考え方は陰陽二元論であり、宗教社会学者の櫻井義秀は、「この発想は統一教会が人間を男性性と女性性において理解し、双方の性質が合体した時に繁栄・繁殖がもたらされるという基本的なモチーフから出てきている」と述べ、極めて民族的、東アジア的な感覚に根差したものであり、イスラエル・アラブの民の神の理解と著しく異なることを指摘している。内と外、男性と女性は対極にあるのではなく、それぞれがもう一方の要素を内在していると考えられている。
四位基台
  四位基台という概念は、神と、神の二性性相から生まれた男性(主体)、女性(客体)、男女の相互作用(授受作用)で生まれた子(合性体)が、それぞれほかの3つの対象と相互作用を持ち、「主体と合性一体化をなすという菱型モデル」である。
祝福(詳細は「合同結婚式」を参照)

イエス・キリストによる救済は霊的救済のみに留まり、子孫を残さず天に上げられたため、肉的救済はメシヤに託され、文鮮明夫妻が人類の真の父母として信者に「祝福」を与えなければならないとしている[175][91]。祝福は、鮮明夫妻司式の合同結婚式で教祖に配偶者を決めてもらう信者同士の結婚である[175]。結婚したカップルだけが天の御国に入ることができ[214]、祝福を受けた家庭からは原罪のない子供が生まれるとされており[175]、特に重要な儀式である[214]。祝福は象徴的な堕落の撤回のプロセスであり、これによってサタンの血統から自由になり、メシアの血統に結び付けられる。無原罪の子をなし、神を中心とする家庭を完成させることが目的であるとされる[215]

祝福では、メシアとの一体化による「血統転換」を象徴する秘儀ともとることができる「聖酒式」が行われていた。初期の合同結婚式では、新婦が「聖酒」を半分飲み、残りを新郎が飲み干す儀式が行われていた[216]。儀式に使われるワインには、文鮮明と韓鶴子の結婚式で使われたワインがわずかに含まれ、受け手の血統を転換する力があるとされる[214]

1992年時点では聖酒式ではなく、文夫妻が参加者一人一人に水滴をかける「聖水儀式」が行われていた。また祝福を受ける前には、すべての罪を贖い合うことを象徴する、結婚する男女が互いにバットのような棒で互いの臀部を3回たたく「蕩減棒」という儀式も行われた[216]。挙式後は家庭生活に入る前に、最低40日間の「聖別期間」という心身を清める準備期間があり、夫婦の性交はその後に行われる。最初の性交には詳細な手順が決められている[216]

カップルのマッチングの権威は、文鮮明から各国の祝福委員会に次第に移譲された[217]。祝福を受けた妻たちがスタッフとして入るなどしているこの委員会が、資格を持った候補者たちを、相手の好みのデータを基に組み合わせる[217]。相手が気に入らなければ、断って次の紹介を頼む人もいる[218]

現在では、40日間の分離期間を除く蕩減条件は削除されている[217]。いずれにしても、過去から現在に至るまで教団で祝福する男女のカップルのマッチングは、女性(妻)の方が1〜4歳程度年長である「姉さん女房」となるように組み合わせられる場合が多い。教祖一家である文一族や既成祝福の場合を除き、男性(夫)が年長者であるカップルは稀である。

宗教学者のダグラス・E・コーワン英語版、宗教社会学者のデイヴィッド・G・ブロムリー英語版 は、初期には祝福を受けるために多くの奉仕が求められたが、現在は候補者は24歳以上で3年以上会員であることが求められ、儀式も簡素化されていると述べている[217]

1992年には、祝福には非会員も候補に入れられるようになり、90年代半ばには、存命中の信者と亡くなった配偶者との再結合、信者の先祖も祝福の候補に含まれるようになった[217]。2016年の合同結婚式には、主催者によると62カ国から約3000組が参加し、うち日本からは778人、オンラインでも世界から1万2000組が参加したという[219][220]。会場で結婚した3000組のうち1000組は新規の結婚で、残りの2000組は入信前に結婚しており、改めて祝福を受けるために出席した[220]

ジャーナリストの鶴野充茂は、統一教会によると、コミュニティ内の出生率は第二次ベビーブーム時並みの2.1人、基本的には結婚率100%で、離婚率は1.7%と非常に低いと述べている[219]

2016年5月、フジテレビの番組「みんなのニュース」の中で、合同結婚式が取り上げられており、かつては直接会ったことがない信者同士を文鮮明氏が“組み合わせ”ていたが、現在は、教団のマッチングサポーターと呼ばれる仲人が、信者から希望をヒアリングして、信者の相手探しを手伝うことになっている、と報道されている[要出典]

同性愛

  

統一教会は祝福による男女の結婚・家族形成による救いを主張しているので、それに反する同性愛は「創造の原理に反する不自然な関係」であるとして否定・批判している[221][222]。統一教会は「同性愛は倫理道徳の問題であり、人権問題ではない」、「キリスト教はもちろんのこと、同性愛を“罪”とみなすのは、古今東西の主要な宗教で共通している」と述べている[223]。同性婚を認めれば、「不倫はもちろんのこと、一夫多妻や近親相姦などの“権利”を主張することも可能となる。さらには、文字にするのもおぞましいが、『獣婚』(獣姦、動物とセックスすること)も論理的には認めざるを得なくなる」と主張している[223]

霊魂観

統一原理では、アジア的な霊魂観が説かれている[193]。被造世界は神に似た人間を標本に創造されたため、あらゆる存在は心と体からなる人間に似ているとされ、独特な霊界、霊人間の存在が説かれる[193]。霊界は霊的な五官で知覚される実在世界であるという[193]。霊人間は現実の人間の合わせ鏡のようなものであり、霊魂を浄化するには身体の浄化や贖罪が必要であり、それをしなければ地獄行きであるとされる[193]。天国には地上に建設される地上天国と、その建設に伴ってできる霊界の天国があり、死後に霊界天国で安らぐために地上天国の建設が目指される[193]

終末観

現在は、サタンの支配する罪悪世界から、神が支配する創造理想世界に転換される終末(末世)であるとされる[224]

復活
復活とは、サタンの支配圏に堕ちた立場から、神の支配圏内に復帰するその過程を意味するとされる[206]。統一教会では、イエスが埋葬された3日後に弟子たちの前に現れた復活など、キリスト教の伝統的な復活論は全く顧みられていない[206]。聖徒、善霊、悪霊といった霊界をさまよう霊は、地上の人間に憑依して思いを遂げるとされ、霊たちの助けで摂理が進むとされる[225]

蕩減(とうげん)

原義(朝鮮起源の漢字語
借金を全部帳消しにすること。借債を悉く免除してやること。remission(ゆるし)。[226][227][228][229][230] 「蕩」の字義は「すっかり無くする。『蕩尽/掃蕩』」[231]
 韓国では一般に金融用語として「債務の減免」の意味で使われ[232]、頻繁にマスコミに登場する[233]。また韓国語聖書で負債や罪の「ゆるし」の訳に用いられており[注釈 2][234]、韓国のキリスト教会の説教でも頻繁に用いられる[235]
原理用語
統一教会の教義「統一原理」の中核にあたる救済観を「蕩減復帰原理」という。文鮮明教祖が「蕩減」と言う時、99%は統一教会独自の用語である「蕩減条件」「蕩減復帰」「蕩減復帰原理」いずれかの略語で、原義で言うことは1%未満[236]。文鮮明教祖の原義の解釈は「小さな条件で大きな負債を赦すこと」[237]であるのに対し、劉孝元著「原理講論」では「本来の位置と状態を復帰するために必要な条件を立てる(満たす)こと」[238]、崔元福による英訳では「indemnity(賠償)」[239][240]と異なる定義をしている。[241]これを読んだ金東俊神田外語大名誉教授は「これは間違い」と明言している[242]。この教会自ら陥った誤認によって国内外のキリスト教会からの批判を招いている[243][244][245]
教会内部では無原罪で生まれた再臨のキリストとされる文鮮明(今それは否定され再臨のキリストは妻韓鶴子[246])が生誕した韓国を最も迫害したとする日本が支払うべき「賠償(indemnity)」の意味で使われることが多い。[247]
信者達の認識
救済、正確には復帰のプロセスは、神と人間の関係という縦の次元と、人間同士の関係という横の次元がある[199]。復帰は、信心や行いではなく、蕩減(とうげん。償いの意)によって得られるとされる[248]。人類はメシアが出現できるだけの「基台」を築くように務めなければならない[248]。救済の摂理において、神の責任分担は95%、人類の自己責任分が5%であるとされる[249]。神が求めるのは、人間の罪を償いうるに足る以下のものだが、その正確な量は神によって決められるとされる[248]。摂理の成就は、信者の信仰と働き次第であり、よって完全な献身を求められる[249]

教義・教説への批判

宗教社会学者の櫻井義秀は、ルシファーとエバが「不倫なる霊的性関係」を結んだという聖書における根拠はないと指摘している[197]。アダムとエバが楽園追放前に性的関係を結んだという聖書の根拠はなく、『旧約聖書』「創世記」四章一節では、実際に二人が夫婦になったのは楽園の外であることが明言されている[250]。また、霊的堕落・肉的堕落が不倫の性関係であるという根拠は聖書にはない[250]

現在の聖書学では、旧約の諸文書には原罪の観念はないと理解されている[251]。櫻井は、統一原理では、「仮説を公理として議論を進めていって、議論に必要な概念(二性性相、四位基台、肉身と霊人など)もまた直感・霊感的に想定可能な準公理として用いながら、すべての議論を展開していく」と述べている[252]

カトリック神学者のネメシェギ・ペトロは、『原理講論』を対象とした論文において、この書において哲学、自然科学、歴史、聖書解釈学、神学等においての主張は、完全に確信のあるものとして羅列されているが、その裏付けは非常に弱いか全くないと述べている[167]。文鮮明の理性は鋭く、思弁を好んで入るが、思惟方法は全く独特で、教育を受けているが狭い分野に限られており、独学者であることは明白であるという[167]。文鮮明の思考の特徴は、ミシェル・フーコーが前近代的な思考方法の特徴として明らかにした類似に基づく考え方(呪術的思考の一種)であり、『原理講論』の歴史神学の論証の多くはこのタイプであり、この思考方法は近代以後の思想界では通用しないと述べている[167]

ネメシェギは、人間は皆悪魔の血を引いているとされるが、統一教会の楽園追放の話においても、人類はサタン(ルシファー)とエバの子孫ではなく、アダムとエバの子孫とされており、そうであるなら、統一教会の原罪を遺伝的にとらえる考え方と統一教会の楽園追放の話は合致しないと述べている[167]

イエスの死が、罪深い人類を正当な理由で虜にしていた悪魔に支払われた身代金のようなものであったという説は、古代に幾人かの教父が唱えていたが、これには聖書的な根拠はなく、キリスト教神学では中世には捨てられている[167]。また、人類の歴史を神とサタンに分け、人々を恣意的(この分別の基準は、良識や常識の判断と必ずしも一致しないとされる)に神の側、悪魔の側に分けることは、狂信的で極めて危険であると指摘している[167]。ある宗教が天の側により近い宗教の邪魔をする場合、それはサタンに属するとされ、『原理講論』の倫理観では、それを滅ぼすためにはあらゆる行動が許され、善とされることになる[167]

また、ネメシェギは次のことを指摘している。『原理講論』では、旧約聖書に書かれた様々な出来ごとを文字通りに受け取り、その年代も書かれたとおりであるとする根本主義的な聖書解釈(現代聖書学の立場では支持されない)と、聖書の表現を字義通りにではなく象徴的に解釈する象徴的聖書解釈が混在している[167]

ネメシェギは、歴史学から否定されていることを事実とする一方、他のことを単なる象徴としているが、どちらの解釈を用いるかの判断基準はなく、文鮮明の独断にしか思われない[167]

科学と宗教とを混合するような考え方は、現代のキリスト教哲学の認識論ではすでに排除されているが、『原理講論』には認識論が全くない[167]。世界の終末を計算するための歴史観は、非神学的、非学問的であり、その歴史観には驚くほど空白が多く、ギリシア・シリア・ロシア等の東方、ラテン系、アジア・アフリカ系諸民族は全く無視されている[167]

神に二性性相があるとし、それを性的にとらえることは極めて危険であり、このような神理解から、統一教会の思想で性が過度に大きな位置を占め、結婚が絶対視されているのであろうと述べている[167]。独身性・童貞性に対する評価が全くないという点でも、世界三大宗教のどれとも区別される[167]。神の永遠の幸せがこの世なしにはあり得ず、初めてこの世から得られるという考え方は、キリスト教的な神信仰ではなく、神を進化するもののように考える汎神論の系統のものであるという[167]

諸問題との関連

宗教学者島薗進は新宗教における「隔離型教団」の代表的な例としてオウム真理教エホバの証人幸福会ヤマギシ会と共に統一教会をあげている[253]

櫻井義秀は、万物復帰の教えが教団の資金調達と密接に関連することを指摘している[193]

「霊的な子ども」を生み出すことと考えられていた「勧誘活動」と共に、「資金調達」はサタンの領域から神の領域への合法的な金銭の移動と考えられ重視された[254]。勧誘活動と資金調達は、共に非常に儀式的な活動であり、たとえその活動で敵意にさらされようと、愛を与え、多くの人に復帰に関わる機会を与える活動と考えられていた[254]。多くの信者は、寄付した人がその行為の霊的意義を認識しているか否かに関わらず、神の領域へ資金を移動することで利益を得ると信じている[254]。宗教学者のダグラス・E・コーワン英語版、宗教社会学者のデイヴィッド・G・ブロムリー英語版 は、これが一部の資金調達チームの「聖なる詐欺」の実践、寄付の見込みのある人からさらにお金をだまし取ることに結びついたと述べている[254]

合同結婚式も統一教会がカルト視される一因となっている。教団内婚制で世代が再生産されるため、ピークを越えたとはいえ教団の持続力は強い。教団内婚制も、カルト視されたりマインド・コントロール疑惑が持ち上がる一因になっている[35]

日本では1992年には、歌手で女優の桜田淳子(当時34歳)、元新体操選手の山崎浩子(やまさきひろこ、当時32歳)、元バドミントンの世界チャンピオンの徳田敦子(当時36歳)ら有名人が韓国ソウルのオリンピック・スタジアムで行われる「3万組国際合同祝福結婚式」(前年までに12回行われ、計2万組の夫婦が誕生していたとされる)に参加することが公になり、マスコミでスクープとして飛びつき、過熱気味な報道が繰り広げられた[255]。次第に霊感商法被害や、見知らぬ異性同士が教祖のマッチングで結婚するのは不気味だと、激しいバッシングに変わった[256]

1993年には前年の合同結婚式に参加した山崎が突如行方不明になり、統一教会側は拉致監禁であると記者発表してデモ行進を行った[256]。1か月後、週刊文春の独占で山崎の動静が伝えられ、その後山崎はテレビで婚約破棄と脱会宣言した[256]。1990年代以降、元信者が結婚無効を求める裁判も相次いでいる[216]

日本「エバ」論

日本のセミナー等で、『原理講論』で説かれる堕落の経緯と復帰の歴史を説明される際に、韓国は「アダム国家」、日本は「エバ国家」とされ、先に堕落したエバがアダムに侍ることは当然であると説かれている[249]

朝鮮を植民地支配し民族の尊厳を踏みにじった日本はエバと同じであり、韓国に贖罪しなければならないとされているのである[257]。合同結婚式では、日本人女性・韓国人男性のカップルが多く生み出されており、結婚した日本人女性は韓国人の夫や家族に尽くすことが求められる[257]。サタンと姦淫したエバである日本とアダムとされる韓国という構図で規定される[258]

「血分け」批判と諸見解

カトリック神学者のネメシェギ・ペトロは、神に陰陽説を当てはめるという考え方から性が過度に大きく扱われているが、性的乱交のような腐敗は今のところ見られないと述べている[167]。櫻井義秀は、統一教会の布教当初、血分けの疑惑が持ち上がったが、それは未確認のまま終わっていることを紹介している[259]

1955年の梨花女子大事件の時も、「血分け」と称して淫行が行われているのではないかという疑いがもたれたが、文鮮明の容疑は兵役法違反及び不法監禁であり、無罪となっている[260]

韓国では、統一教会は数ある異端の一つと認識されているが、単に宗教団体というよりある種の財閥と認識されている[261]。日本ほど反社会的宗教団体とは見なされておらず、韓国ではむしろ、日本で「摂理」と呼ばれるキリスト教福音宣教会が教祖による女性信者への性的暴行などで社会問題となっている[260]

櫻井義秀は、文鮮明が初期の信者たちと「血統転換」をどのようにやったかは伝聞でしかないと述べており、統一教会の血分け疑惑に関して著書でさらなる論考はしていない[259]。そして文鮮明が、北朝鮮の興南牢獄に収監され国連軍の進攻で解放された経験や「血分け」スキャンダル等の迫害を受けたことを受難として、メシアにふさわしい聖痕として教説化したことを指摘している[262]

ポリテクニック・サウスウェストの哲学科助教授・バーミンガム市のセリーオーク・カレッジ新宗教運動センター理事のジョージ・D・クリサイディス英語版は、統一教会は血分け教、セックス教であるという主張には裏付けがなく、想像の域を出ていないと述べ[263]、次のように解説している。

統一教会の初期には、夜遅くまで講話が行われることがあり、その際は夜間外出禁止令のために信者たちは朝まで帰宅できなかったが[106]、敵対者はこれを不道徳な性的行為、乱交パーティーであると批判し噂が広まった[264]。官憲が1954年に文鮮明と信者四人を逮捕し、罪状には姦通罪も含まれていた[106]。しばらくして徴兵拒否以外のすべての罪状は取り除かれ、徴兵拒否も無罪となり3か月後に釈放された[106][265]。キリスト教主流派や統一教会の批判者は、統一教会は批判者が血分けと呼ぶ性の入会式を行っており、救世主的教祖が女性の新入団者と性行為を行って女性を浄化し、その上で夫と性行為を行い夫の浄化と子孫の浄化を復帰するということを行っていると主張している[266]

しかし、クリサイディスは、統一教会がこれらを実践しているという情報は、いずれも間接的なものにとどまっており、統一教会と性の儀式を結びつける証言はごくわずかしかないとのべている[263]。統一教会の信者であるユー・ヒョーウォン夫人は、歴史的に統一教会と関係のある聖主教で裸体儀式(楽園で人間が裸体であったことにちなむもので、性儀式ではない)が行われていたため、統一教会もその槍玉に挙げられると述べている。

ヨン・ポクチョンによる、文鮮明がキリスト教主流派から「血分け教」の開祖とも呼ばれる李龍道に出会い傾倒していたという証言は、年代が史実と合致しない[267]。クリサイディスは、ユー夫人の見解の方がヨンの証言より問題が少ないと述べている[268]。またクリサイディスは、現実問題として、教祖が合同結婚式に参加する8,000人もの花嫁と性交渉を行うことは不可能であると述べている[269]

クリサイディスは反カルト派や主流キリスト教の論者で、統一教会は血分け教、セックス教であると批判する論者は、「血」は実物なのか象徴なのか、性行為の相手は救世主である教祖なのか配偶者なのか、後者の場合、集会で行われるのか非公開であるのかを論じることもなく、出どころの不確かな引用、さらなる孫引きを行っていると述べている[265]

クリサイディスは、「血分け」(ピガルム)というハングルが存在するのだから、その言葉が指す何らかの宗教儀式(乱交パーティーではない)は朝鮮半島にあっただろうと推測することはできる[269]が、正確にどの新キリスト教集団が血分けを実践していたかはわからず、統一教会が行っていたことを裏付けるだけの証拠はないと述べている[269]

統一教会が元々「セックス教団だ」、「入会した女性信者は儀式と称する教祖との性行為を強いられる」、「血分け教である」、というバッシングは、1995年の文鮮明の逮捕に関する噂が元になっていると思われるが[265]、その後の無罪放免になった顛末は無視されているという[265]

クリサイディスは、統一教会に血分けの疑惑がかかるのは、同会が婚姻外の性交渉を厳しく戒めていること、血統の復帰の過程は婚姻関係の中だけで「原理的」性交渉として行われること点から見ても筋が通っていないと論じている[269]。クリサイディスは、このような主張が行われるのは、糾弾する側が悪意を持っているということか、より寛容に解釈するならば、血分けの実践と「祝福」(合同結婚式)の後の夫婦間の決められた手順の性行為を混同したのだろう、と述べている[270]

統一教会とキリスト教主流派

異端・カルト110番によると異端・カルトである[271]。また日本カトリック司教団が1985年6月22日に出した世界基督教統一神霊協会に関する声明では、キリスト教ではなく、ましてやカトリックでもないことを示し、キリスト教一致運動としてのエキュメニズムの対象にもなり得ないことを明確に宣言とある[272]

キリスト教は世界中に布教されたが、その過程で様々に変質し、伝道する国の文化に順応してきた[273]。世界の新宗教の多くはキリスト教の伝道活動の影響を受けて発生している[273]。キリスト教の他文化への順応は、1世紀におけるヘレニズム化のように容認される場合もあれば、認められない場合もある[273]

キリスト教が土着の宗教と混合して生まれた宗教が、キリスト教の主流派から認められず、その宗教がキリスト教であると主張した場合、モルモン教のように主流の教会から異議を申し立てられたり、ラスタファリアンのように独立した宗教を形成することもあった[273]

櫻井義秀は、統一教会は独特の聖書解釈が見られる『原論講論』を教典とし、教祖・文鮮明が再臨主であると主張していることから、キリスト教の主流派からは異端と見なされていると述べている[175]。統一教会側は、キリスト教の主流ではないが、その教えは韓国に伝来したキリスト教の土着化による正当なものだと主張している[273]

文鮮明はプロテスタント的なキリスト教の影響を受けており、聖書の正典を知るために教会の伝承が必要であるとは考えない[167]。しかし、キリスト教の最大会派であるカトリック教会では、エキュメニズムの対象にもなり得ないため、キリスト教ではない宗教であると宣言している[274]

ジョージ・D・クリサイディスは、統一教会を研究する際は、キリスト教の主流の信仰・実践と比較して「逸脱したキリスト教徒」とするのは単純に過ぎ、キリスト教だけでなく韓国の宗教と文化的背景を考慮し[273]、韓国の伝統的な宗教とキリスト教宣教師の到来と活動の結果生まれた新キリスト教集団にルーツを探り研究する必要があると指摘している[273]。独自の神学は仏教、儒教、道教、シャーマニズム等の土着の諸宗教の影響も受けている[4]

宗教社会学者のマーク・マリンズ(Mark R. Mullins)は日本のキリストの幕屋イエス之御霊教会を「メイド・イン・ジャパンのキリスト教」と名付けて、キリスト教の土着化の例として欧米に紹介した[275]。死者にを授け仏弟子とする日本の仏教が「仏教の土着化」であるなら、先祖に洗礼を授けることも「キリスト教の土着化」になるかもしれないが、これはバプテスマや自発的信仰を重視するプロテスタントとの根幹にかかわることであり、異論もある[275]

櫻井義秀は、こうした日本のキリスト教のマイノリティ教派を土着化の事例として認めるならば、韓国におけるキリスト教系新宗教も土着化の事例に相当するかもしれないと述べてる[275]。宗教社会学的には、どちらも外来宗教の土着化と見なせる[275]。櫻井は、但し、十字架上のイエス・キリストの血による贖罪を最終的な救済として認めるか否かでキリスト教と異端を分けることは、教派の神学としてはあり得るだろうと述べている[275]

統一教会は、イエス・キリストは霊的救済のみに成功し、肉的救済はメシヤに託されたとしており、十字架上のイエス・キリストの死を最終的な救済とは考えない[276]

統一教会は、アメリカの保守的な宗教指導者・政治的指導者たちと連携を築き、これによって社会的存在感を確固たるものにしてきた[277]。文鮮明は、アメリカのキリスト教根本主義ジェリー・ファルエル牧師が設立した私立のクリスチャン大学であるリバティ大学が経済的危機に直面した際に多額の資金援助をするなど、多くの保守派の活動に援助を行った[278]

発生の背景には、1930年代の韓国のキリスト教における神秘主義的な運動があり、独立後の朝鮮戦争を経た1950年代以降の韓国において生まれた、新宗教運動の潮流の一つである[4]。その神学は、仏教、儒教、道教、シャーマニズム、さらに韓国のキリスト教の影響を受けており、西洋的文脈になじまない信念も見られる[4]。宗教的コミュニオンへの家族的没入が統一教会の実践的規律になっている[279]

カトリックの聖職者の減少を憂慮していたザンビア出身の大司教エマニュエル・ミリンゴ英語版は、2001年に韓国人鍼灸医師マリア・スンと合同結婚式で結婚し破門されかかった[280]。ミリンゴはスンと別れて静かに暮らしてたが、2006年にワシントンでスンと共にカトリック教会における聖職者妻帯の認可を求め、4人の妻帯司祭を司教に任命し、自動的に破門された[280]

カトリック神学者のネメシェギ・ペトロは、統一教会はキリスト教、特にカトリック的キリスト教とは本質的に異なる宗教であり、キリスト教に属する諸教会・教団の再統合を目指すエキュメニカル運動の対象外であると述べている[167]。また、統一教会はキリスト教との関係という点で、マニ教と非常によく似ているという[167]。(マニ教はサーサーン朝ペルシャマニ(3世紀)を開祖とする二元論的な宗教で、統一教会と異なり性を忌むべき悪と見なしていたが、イエスを高く評価し、開祖マニこそが最終的な真理をもたらすものであり、自説が宗教・哲学・科学全ての問題を理性的に解決する真理であると主張し、人類の最終的な唯一の宗教にならなければならないと考え、信徒は世界的な布教を行い、強固な宗教組織を作り、社会生活においても互いに連帯していた[167]。)

ネメシェギは、人間と悪魔が性交できるといった神話的な思想は絶対に排除しなければならないものであり、原罪の教えは人間の悪魔化についての教えではなく、この世の一切の悪いことは神の意志に適うものではなく、神との調和を取り戻すことで、神の助けによってそれらの一切を取り除くことができるという希望を抱かせる教えであると述べている[167]。統一教会は、イエスの復活を認めないからこそ、その死の理解が間違っているという[167]

またネメシェギは、次のように批判している。『原理講論』は文鮮明が受けたという啓示を根拠にしているが、啓示の客観的根拠は本書では述べられておらず、その教説には誤りが多く、実際に神の啓示であるとは思われず、文鮮明が啓示であると思い込んだのは、若い時からかかわっていた神霊主義的現象や、朝鮮半島のシャーマニズムの影響であったかもしれない[167]。また陰陽論を神に当てはめるやり方は、キリスト教神学と哲学が初めから支持してきた神の絶対的超越性、独立、自己充足性、純一性、自由についての教説とは一致しておらず、神の絶対的超越性を十分理解できていないからこそ、被造世界にみられる特徴をそのまま神に当てはめてしまっているという[167]

日本では、日本カトリック司教団がカトリック信者向けに、「私たちは、一つの人間家族をつくり上げることの意義を否定するものではありませんが、この世界基督教統一神霊協会がキリスト教ではなく、ましてやカトリックでもないことを示し、キリスト教一致運動としてのエキュメニズムの対象にもなり得ない」ことを宣言し、その教えはカトリックの教えと明確に相反するため、統一教会のいかなる運動や会合などにも関与しないように注意を喚起している[281]

プロテスタントの日本基督教団牧師・宗教研究者の石井智恵美は、キリスト教を名乗ることについては、正統派キリスト教による根強い批判が見られると述べている[179]

キリスト教の主流派における公式の教会会議や委員会の中には、統一教会の統一思想に反対し、キリスト教であるという主張に異議を表明したり[273]、危険性を警告するものもある。

1975年には、フランスのカトリック司教協議会が統一教会の危険性について警告書を出している[282]。パナマの司教会議も、同一の立場から統一教会の実態について述べる司牧書簡を発表した[282]

1976年には、ニューヨーク大司教区が、アメリカのユダヤ系委員会、全米教会会議と共に、統一教会は反キリスト教的・反民主的であるという共同声明を出した[282]

プロテスタントの日本基督教団は、教団として統一教会対策に取り組んでおり[282]、ジャーナリストの米本和広は、日本基督教団は総会で「統一教会を潰す」という決議を採択したと述べている[256]

日本福音同盟は統一教会はキリスト教ではないと表明し、様々な姿と紛らわしい組織体を持ち、それらを通じて多くの人々を勧誘し「マインドコントロール」していると断じ、その活動に憂慮を示している[283]

統一教会に対するこれらの動きは日本基督教団だけでは限界があると考えられたため、キリスト教諸教派に協力が呼びかけられ、2004年「統一教会問題キリスト教連絡会」が発足した[282]。そこに、カトリック中央協議会在日大韓基督教会日本聖公会日本バプテスト連盟日本福音ルーテル教会が新たに加わり、日本のキリスト教エキュメニカル運動団体・日本キリスト教協議会オブザーバーとして参加した。そして、定期的に会合を開いて情報交換を行い、統一教会問題の啓発冊子『これが素顔!』を作成、「連絡会」所属の司祭、牧師と「霊感商法対策弁護士連絡会」の弁護士、「全国統一教会被害者家族の会」の有志メンバーが訪韓し、韓国のキリスト教諸派に日本における統一教会の実態を伝えた[282]

統一教会などのカルト視される新宗教の信者に対する脱会カウンセリング(特定教団に入信した信者はマインドコントロールされているために信者であり続けるとみなし、家族とカウンセラーが積極的に信者当人の信仰問題に介入することでマインドコントロールを解き、教団から脱会させようという特殊なカウンセリング)には、信教の自由などの面から問題視する向きもあり、強制棄教であるというジャーナリストによる批判もある[284]

この脱会カウンセリングに関わるキリスト教関係者もおり、1998年以降、統一教会信者とエホバの証人の信者が、違法に脱会・棄教を強要されたとして、家族や関係者、脱会カウンセリングに関わった牧師が相次いで提訴されている[284]。このような裁判は2005年時点で5件あり、2件が信者の請求を全て棄却し、3件が一部に違法行為があったとして損害賠償の請求を認めた(うち1件はエホバの証人)[284]

統一教会が聖酒には「父母の愛の象徴が入っている」と表現したせいか、聖酒には「精液」が混入されていると報道されたこともあったが、統一教会側は事実無根であると述べている[216]

同性愛者の信者は、当然同性愛を「克服」しなければ教会に残ることはできない[221](同性を愛するのは倫理道徳に問題があるから、同性愛者が人種のマイノリティのように権利を求めることは間違いとされるため)。

渋谷区で同性パートナーシップ制度の条例案が提出され、これに反対するチラシが組織的にポスティングされた。チラシでは、条例でエイズが蔓延する、言論の自由を侵害する、伝統的な家族制度に混乱をもたらし、学校教育や子供の躾にも悪影響を及ぼすなどと主張されていた。チラシの連絡先は、統一教会の関連組織として知られるpure love allianceである[285]

2008年に大阪府の堺市立図書館で、男性同士の愛や絆を扱う女性向けのジャンル「ボーイズラブ」小説が収蔵・貸出されていることを非難する「市民の声」によって廃棄が要求され、ボーイズラブとされた5500冊の本が開架から除去される「堺市立図書館「BL」本排除事件」が起きたが、これに統一教会の関連会社「世界日報社」が関与していたのではないかと指摘されている[286][287]

2012年の設立者の文の死後に組織は分裂したため、韓国でも脱会者が相次いでいるが、まだ地方の不動産を保有しているため韓国内では影響力は残している[288][出典無効][289][要ページ番号]

日本共産党の政党機関紙「しんぶん赤旗」を刊行する「赤旗」社会部は、文鮮明は若い時「混淫派」とよばれる血分け(ピガルム、「血の浄化」を意味する[266])教の信者であり、血分け教とはセックス教であると主張した[290]。また、統一教会の教義は「文鮮明との血分け(セックス)によって人間は清められ、無原罪の子を産むことができる」というものであると断じ、激しく批判している[291](「赤旗」社会部の主張の情報源は、上記批判を掲載した書籍『赤旗―統一教会元会員の証言』には記載されていない)。統一教会に対する通俗的なバッシングには、しばしばこのような主張が見られる。

また、ワシントン市の統一教会所属の「ユニヴァーサル・バレエ団」とレニングラード市のキーロフ・バレエ団は公式に関係を結び、1990年代初頭には統一教会のロック・グループ「オリジナル・マインド・バンド」が、ブルガリア、ルーマニア、ハンガリー、チェコスロバキアで演奏するなど、東欧で活発に活動した[166]

信徒数

2008年時点で統一教会は世界の200近い国で活動しており、日本と韓国を中心に300万人といわれるが、研究者たちは、事実上の会員はアメリカの数千人の信者を含め、数万人程度と考えている[292]

1995年12月31日現在の文化庁宗教団体信者数統計によれば日本の信徒数は477,000人だが、これは各教団からの申告に拠るもので、統計の全信者数を合計すると全人口を超えてしまい、実際の信者数とはズレがあるため、統一教会の477,000人という数字も実際とは異なると考えられる。

マスメディアによる批判報道(特に『朝日新聞』と『文藝春秋』)や度重なる多額の献金要求の影響もあって、信者数は減少したといわれる。ジャーナリストの米本和宏は、1992年以降の激しい批判報道やその後の貨幣復帰疲れ(献金疲れ)で退会した信者は相当に多く、累計の入会数56万人に対し現在(2009年時点)で活動している信者は推定6万人、残り50万人は退会したか退会同然の状態であると述べている[293]

批判

洗脳・マインドコントロール批判

1992年、山崎浩子桜田淳子らとともに統一教会の合同結婚式に参加したが、その翌年の1993年山崎浩子は親族によって統一教会から隔離され、そこで元信者の牧師らの説得を受け脱会を決意した。山崎浩子は、脱会を表明する記者会見で「すべてが間違いだったことがわかった」と語り結婚を破棄した[216]。さらに記者会見では「わたしはマインドコントロールされていました」とも語り、同日、アメリカの元信者であったスティーブン・ハッサンの書いた『マインドコントロールの恐怖』(恒友出版)が発売されてベストセラーになった。この頃から、日本でも「マインドコントロール」という言葉が広く知られることになった[294]

「マインドコントロール」の概念は、具体的な物理的手段を用いた強制的な「洗脳」に対し、物理的手段を用いない方法であるとされ、本人が気づかないうちに取り込まれてしまうというカルトなどによる巧妙な手法を指すものとして登場した。

信者にマインドコントロールを施しているという批判に対し、統一教会は、「マインドコントロール」という理論は、もともとアメリカで宗教運動から信者を強制的にやめさせるための理論として出現したものであり、非科学的理論であり、反宗教的なイデオロギーに基づいた空論だと反論している[295]

日本共産党の政党機関紙「しんぶん赤旗」を刊行する「赤旗」社会部は、神学者の浅見定雄が分析した統一教会の「洗脳」の仕組みを明らかにした。主な特徴は以下の7点である。

  1. 隔離 - 信者が自分の親に説明し難くなった場合に「親に会わない口実」「統一教会をどう説明するか」などの手引書を作っており家族に秘密にさせる[296]。ビデオも一人で見る[297]
  2. 雰囲気 - 親切にする。歌やゲームもある共同生活[297]
  3. 反復 - 同じことを徹底的に反復して教え込む[297]
  4. 精神管理 - 感想文や日記を書かせて弱点や疑問点を把握する[297]
  5. 食事管理 - 信仰の名の下で粗食をともにする[297]
  6. 睡眠管理 - 慢性的に寝不足にし暗示にかかりやすくする[297][298]
  7. 呪いの暗示 - 脱退すると霊に打たれる、霊界で先祖が苦しんでいる、水子が祟っている、等と不安を持たせる[297][298]

宗教学者のダグラス・E・コーワン英語版、宗教社会学者のデイヴィッド・G・ブロムリー英語版 は、洗脳理論そのものには数々の問題点があると述べている。

第一に洗脳の技術が反カルト活動家が言うほどの効果があり、無差別なものであるのなら、対象や時代に関わりなくその技術は機能するはずであるが、実際北アメリカでは新宗教が若い人の勧誘にかなり成功していたのは、1960~70年代の対抗文化運動の間だけであり、以降は劇的に減少している[299]

第二に洗脳を効果的に行うには、おそらくある程度の専門技術が必要なはずであるが、洗脳を行っていると非難されている新宗教では、加入間もない新人メンバーたちが勧誘活動を行っている[299]。時間の経過で技術は向上するはずであるが、そういった成果の向上は見られない[299]。また実際のところ、新宗教は全体として信者を引き付け維持することに失敗しており、1970年代にE・パーカーが統一教会に対して行った最も徹底的で信頼できる調査(期間は6年)で、パーカーは入門者が会員として残る確率は、極めて低いと結論付けている[299]。統一教会に勧誘された人々のうち、実際に会員として加わったのはごくわずかで、新会員もほとんどは短期間で活気を失っていた[292]

洗脳解除(デプログラミング)・脱会カウンセリング

1970年代から80年代には、反カルト運動の関係者、マスメディア、信者の家族によって、文鮮明は信者を「洗脳」し、自律した思考や行動ができなくなるほど強い思想統制や行動修正の体制を信者に押し付けているとして非難された[300]

「洗脳」とは、朝鮮戦争後に捕虜生活から戻った兵士たちや、共産党革命後の中国再教育キャンプの収容者の態度変化を説明する際に使われたメタファーであり、アメリカでの1960年代終わりにかけての新宗教の急増や、それらの組織による勧誘活動の「成功」(実際には当事者が主張するほど成功しておらず、信者数は100倍近く誇張されていた)を説明するための枠組みとなっていた[300]

洗脳や思想改造、強制説得といった理論の提唱者は、「回心を外在的な作用によるものだと考え、それによって回心は自発的で本心からくるもので、新しい人生が本当に幸せである」という新宗教側にみられる主張を効果的に無効化した[300]。信者はすでに洗脳されているのだから、まともな意思決定はできないとし、回心に対する責任を各人から取り去って「人を欺くカルトの指導者たち」に責任があるとした[300]。そして、信望者に個人的責任はないとする洗脳理論は、親たちが大人である自分の子供に責任能力がないことを示して、信者である自分たちの子供の法律的な保護を要求し、さらに「救済」するために強制的な洗脳解除を実行するための概念的な基盤となった[300]

多くの信者の親たちは、「洗脳解除(デプログラミング)」と呼ばれる強制手段を利用したが、強制的な脱会、監禁、再回心を内容とする[300]

洗脳解除について、社会学者のA・シュープとD・ブロムリーは「公衆の面前での拉致、強制的拘留、『カルト』が植え付けた心の統制(マインド・コントロール)を破壊することでプログラマーたちが信じる除霊的儀式、そして、多くの場合は、家族や聖職者や友人も一緒に行う、入信に至った経緯の振り返り」などの多様なプロセスを含むと述べている。

評論家のルムールは、「(それは)それぞれの集団にそのメンバーたちが入信していく過程よりもはるかに『洗脳的』である。その内容とは、監禁、睡眠の剥奪、継続的な語りかけ、非難、厳しい口調と優しい口調の交互の語りかけ、感情的な訴え、意志の喪失に至るほどの詰問といった、犠牲者に対するある種の権力をプログラマーに与えつつ行われるものである」と指摘している[300]

洗脳解除は、少なくとも北アメリカでは、犠牲者たちによるデプログラマーへの訴訟によって次第に衰退した[300]。アメリカでは、物理的強制力を行使するデプログラミングは、信者の身体だけでなく心も傷つけるため採用されなくなり、1980年代中盤以降は、本人の同意を得た上で、情報、意見の交換を行い、脱会の最終決定は本人に任せるカウンセリング方法「脱会カウンセリング」が開発された[284]。現在のアメリカでは、信者への直接介入自体が控えられるようになっており、家族のカウンセリングに重点を置く「思想改造コンサルテーション」というやり方が一般的になりつつある[284]

ジャーナリストの米本和広は、統一教会に関連する現在進行形の問題は、関連組織による霊感商法と、信者を脱会させるための強制説得、拉致監禁であると述べている[256]

日本では、山崎浩子の脱会の際には、家族による拉致・監禁が行われており、本人の手記によると家族によってマンションに連れ込まれたときには、拉致監禁だと認識していたという[256]

米本和広は、この山崎浩子の脱会の顛末には週刊誌「週刊文春」と脱会請負人が関わっていたと述べている[256]。家族や元信者が信者を脱会させようとして行った強制説得には、12年におよぶ監禁の例もある[256]。米本によると、日本で80年代後半から信者を脱会させるための拉致監禁は盛んになり、これまでの拉致監禁は3千~4千人に上り、うち3千人が脱会しているという[256]。1999年に拉致監禁されたとする女性信者が日本基督教団の牧師を提訴したことで、拉致監禁は沈静化したが、米本は以降も続いていると述べている[256]

1970~80年代に洗脳仮説が定着した国では、洗脳解除から攻撃性の少ない(とはいえ問題はある)「脱会カウンセリング」に移行しているが、洗脳仮説は依然として統一教会を含む新宗教に大きな影響を与え続けている[300]

宗教社会学者の櫻井義秀は、日本は脱会カウンセリングに関しては過渡期であり、「カウンセリングに関わる倫理綱領を設けて脱会支援にあたるグループ(日本脱カルト協会等)もあれば、デプログラミングに近い奪回・脱会のカウンセリングを行う個人もいる」と述べている[284]

麻薬関連のマネーロンダリングと密輸

2020年1月20日、統一教会の南米代表(総裁:ハク・ジャハン)が麻薬関連のマネーロンダリングと密輸で米国連邦捜査局(FBI)に逮捕・起訴された事実が遅ればせながら明らかになり、被告人と教会幹部との接点が疑われている[301]

同年20日、米司法省によると、米司法省は世界平和統一連盟の政治団体である国際平和議員連盟(IAPP)の会長シンシア・エリザベス・タラゴ・ディアスらパラグアイ国籍の3人を起訴した。FFWPU)は、2019年11月21日(現地時間)、FBIの捜査結果に基づき、マネーロンダリングとドラッグ密輸の容疑でニュージャージー州地方裁判所に提訴した[301]。タラゴはパラグアイの元国会議員(MP)で、他に夫のレイモン・ヴァと両替商の幹部ロドリゴ・アルバレンガ・パレデスが共にに起訴された[301]

タラゴとヴァの夫婦はマネーロンダリングにより空港に到着した直後の同日にニューアーク・リバティ空港近くのホテルで逮捕され、現在はニュージャージー州モンマス郡の連邦刑務所に収監された[301]。共犯者のAlvarengaは未逮捕であるが、国際刑事警察機構(インターポール)に指名手配されていおり、パラグアイに潜伏しているとみられる[301]

日本統一教会


1958年、当時まだ国交のなかった日本での伝道のため崔奉春(日本名:西川勝)を密入国させ[108]1959年[302] 10月[108] に日本統一教会を立ち上げ、1964年には東京都知事の認証で宗教法人となった[108][302]。1960年代初めには立正佼成会庭野日敬会長(当時)の指示で統一教会の教えを学んでいた立正佼成会の青年部の信者50名ほどが統一教会に転じ、2年後に日本の会長になった久保木修己をはじめ、後に教団幹部となる者が出た。

戦後の外来宗教としては古い部類であり、ミッション(伝道団)であると考えるならば、その中では日本で最も勢力を拡大している[303]

日本では多くの社会問題を起こしたことから、社会的評価は低いが、政治家との強い関係や経済組織を持ち[303]、数十万の日本人を活動に巻き込み[303]、現在も数万人の熱心な日本人信者を持つなど[303]、社会的影響力は弱いものではない[303]

日本において最初に問題になったのは「原理研究会」であった。大学生の子どもの様子がおかしい、ホームや教会に寝泊まりしながら販売活動や募金活動や布教活動に奔走しており、家に戻れと言っても言うことを聞かず、原理研究会や統一教会の批判をすると血走った尋常ではない目で反論して来る、果ては大学を中退し、合同結婚式に参加する[304]。これを朝日新聞が1965年7月7日に「親泣かせの原理運動」と報じた[305] のが皮切りである。

1960・70年代には、統一教会の学生組織である「原理研究会」が大学構内で示威的な布教活動を行い、大学を中退して統一教会に献身する学生が問題となった[306]。現在も大学では学生を守るための対策が講じられている[307]

統一教会は、霊障や祟りを強調し、占いや先祖祭祀の観念を利用するなど、日本の宗教文化を偽装した布教を行い、違法な物品販売活動で資金集めをした。

1980年代には姓名判断や印相鑑定と絡めたいわゆる「霊感商法」が大きな社会問題となり[112]、1989年には霊感商法被害対策弁護師団が結成された[112]

統一教会がらみの訴訟が1986年以降100件を超え、献金勧誘行為の違法性と賠償責任を認める判決が複数ある[308]。また、金銭トラブルや教義の妥当性だけでなく、「人生の目的」「生そのものをより良くする」「自分らしく生きる」「幸せな家庭、家族」を望む志向性そのものの侵害、すなわちスピリチュアリティを巡るトラブルという点も注目された[309]

日本では2008年の特定商取引法の改正以来、統一教会の物販の販社にも司法の手が及ぶようになってきたため、集金が困難になってきている。浅見定雄は、日本からの資金を命綱とするとするこれまでの在り方に、大きな転換を迫られていると述べている[86]

1967年9月[304] には、自分の子供は洗脳を受けたから家出したと考える親たちが「原理運動対策全国父母の会」を結成[304][305] し、教団本部に対し

などの9項目を申し入れた[304] が効果はまるでなかった[304]

1977年6月に早稲田大学で反原理運動が始まり、全国に広がった[305]

統一教会は、他のキリスト教や新宗教の団体には見られない特異な勧誘方法(統一教会所属していた鄭明析による新宗教団体・摂理は同様の手法を使っている[310])と、教化システムを確立している。

統一教会では、入信、回心を経てしばらくすると教団に献身することが求められるが、青年信者のうち一定の割合が献身してしまうことから[311]、一般にはこのような急激な態度変化は洗脳マインド・コントロールであるという認識が少なくなかった[311]。しかし、宗教研究宗教社会学では、統一教会の事例であっても自発的な入信、回心であると理解されており[311]、マインド・コントロールされたという臨床心理社会心理学の立場と、学問や法廷で20年以上論争が続いてきた[311]

日本では、当初は自覚的な参画者からなる宗教運動だったが[112]、1980年代に大きな路線転換があり[112]、以降、教団名や活動内容を説明した上での布教活動を30年近く行っていない[312]

統一教会の「新規の入り口」は文化系サークルや教養講座、鑑定所等に擬態したものであったため[312]、日本の統一教会には、宗教団体とは自ら信じて集まった人の団体であるという「宗教」の前提が通用しない[312]。信仰とは自発的なものであるはずだが、日本の統一教会の信仰には、そうとも言い切れない複雑さがある[312]。韓国では正体を隠した勧誘は行われていない[261]

1980年代からは印鑑、壷、多宝塔、高麗人参濃縮液等の販売の比重が高まり[305]、「マインドコントロールで一般の人を信者とし、霊感商法などで金をだまし取る」と批判を浴びて社会問題化し有名になった。

統一教会の宣教活動には社会の規範意識や法律と軋轢のある部分が多く、宗教学者の櫻井義秀は、「教説の創唱性、教祖のカリスマ、教団内婚制という点だけを取り上げても、宗教学的には新宗教と定義して構わないし、再臨主を称する教祖を信奉する少数者の集団という意味では宗教社会学的にはカルトと類型化される」述べている[175]

韓国では異端、偽宗教といわれることもあるが、霊感商法や正体を隠した勧誘といった日本のような社会問題化する教団活動を行っておらず、献身(後述)や布教の強要もなく[313]、祝福献金の金額は日本よりはるかに安いといわれており[313]、日本のような特異な信仰になっていない[313][261]。このように被害者がおらず、日本での被害の実態もあまり報道されていないことから、韓国ではあまりカルトとは見なされていない[261][87]

1992年に芸能人の桜田淳子・元新体操選手の山崎浩子が合同結婚式に参加したことが報道され、翌年、 山崎浩子が脱会し記者会見で「私はマインド・コントロールされていました」と述べて自らの体験を語ったことからマインド・コントロール・洗脳であるという批判が高まり、1980年代末まで盛り上がっていた活動は以降停滞した[77][86]

日本統一教会は資金面でも人材面でも世界の統一教会の供給源になっている[108]

赤旗社会部は、経済活動で得た金の大半を文鮮明に送金、その額は一時年間約1億ドル(当時のレートで約240億円)に達してその私腹を肥やした他、その反共右翼政治活動の資金源となっていたと述べている[108]。また赤旗社会部は、信者は言葉も分からないまま外国へ送られ花売りやキャンデー売りをさせられ、場合によっては観光ビザで入国して現地の系列企業で働き国外退去を命じられた例もあり[108]、美人の女性会員を動員して対米議会工作に当たらせたとも言われ、元会員の証言では文鮮明が日本の女性会員を集めて「君たちを各国大使の貢ぎ物にする」と語ったことがあると述べている[108]

赤旗社会部は、崔奉春は「日本宣教の父」と言われていたが1987年1月に退会し、末端会員を「伝道」「募金」「経済」と称する金集めに駆り立てる教団のやり方を批判、「良心的に生きない人は偽善者ではないのか」「私は、信仰の道を行っても、絶対に自分の良心と理性だけは、殺したくない」と語っている、と述べている[108]

統一教会旗下には、勝共連合という反共政治団体、純潔教育ジェンダーフリー・バッシングを行う市民運動体、統一教会信者向けの商品を製造販売する会社、信者が物販する商品を卸す会社、世界日報やワシントンタイムズという新聞社や信者向け出版を行う光言社という出版社、平和運動や社会事業に市民を勧誘するNGO・NPO組織など様々な組織がある[314]

2016年には、テレビ東京の人気番組「世界ナゼそこに?日本人 〜知られざる波瀾万丈伝〜」の中で、合同結婚式で海外信者と結婚した統一教会信者が、信者であることを隠し、虚偽の経緯・経歴で複数回にわたり出演しているなどとして、全国霊感商法対策弁護士連絡会が同局に事実関係や出演の経緯などについて回答するよう申し入れた。局側は「きちんと取材した結果に基づいたもの」と回答している[315]

息子の文亨進は分派を形成した[316]

日韓以外の統一教会

韓国と日本以外には、米国ウクライナなどに拠点が存在している[16][17][18][19][20][21]

ヨーロッパ各国では 1980年代世界基督教統一神霊協会(統一協会)に入信した信者と家族の間で問題が頻発したことを受け、当時のフランス首相、ピエール・モーロワから調査を委嘱された下院議員、アラン・ヴィヴィアン 1985年4月、「フランスにおけるセクト、精神的自由の表現か悪質なかつぎ屋か」と題する報告書を提出した[317]。 その後1984年4月と6月にEC議会が統一教会に対する対策を求めるに当たっての調査の中で同様の問題のある宗教団体があることが認識されるようになった[318]。これにより樹立されたフランスの反セクト法は、統一教会、サイエントロジーエホバの証人創価学会崇教真光などの現地法人がフランス国内での犯罪性や人権侵害の度合いなどに基づきセクトとして取り扱われた[319]

1990年代、統一教会はソビエト連邦で活動を開始したが、ロシアを含む多くのポスト・ソビエト諸国(ロシア寄りの元ソビエト諸国)の宗教当局は統一教会を安全保障上の問題があるとして規制と監視対象とした[24]。ロシアを含む多くのポストソビエト国家の宗教当局は、統一教会の運動をセクトと呼び厳しく批判し、その結果それらの場所で統一教会の活動が抑制された[24]。2012年2月の始め、旧ソビエト国家であるキルギスでは、キルギス国家保安委員会、キルギス検察庁、および州宗教問題局が、統一教会の活動が適切な登録なしに非伝統的な宗教的見解を強制的に広めることにより、キルギスの国家安全保障に脅威を与えたと主張[24]。裁判所に苦情を申し立てた[24]ビシュケク裁判所は、キルギスの領土での統一教会の活動を実質上不可能とする判決を下した[24]。2016年、ウラジミール・プーチン及びプーチン政権は、ネオナチ勢力(セクト勢力)への新たな対テロ法として、布教活動や私的な参拝を禁ずるとし、すべての伝道師や布教者は「登録済み」の組織に所属していなければならない事を取り決めた[25]

教祖文鮮明韓鶴子の7男の韓国系アメリカ人であり、アメリカ家庭連合(アメリカ統一教会)会長であった文亨進は、父親の文鮮明が2012年に亡くなった後、母親の韓鶴子が父親の教え以上に自らの立場を上位の物にしようとしたとして、韓鶴子との違いを明確に表明した事により対立、2013年には韓鶴子により教会の複数の立場から解任され、文亨進は分家組織である世界平和統一聖殿(通称:サンクチュアリ教会)を、アメリカ統一教会とは別にアメリカ国内にて立ち上げた[94]。統一教会は現在、文亨進のサンクチュアリ教会を「脱会組織」とみなしており、文亨進が主導した統一運動の変革のほとんどは、彼の解任後に却下された[95][96]。文亨進は有力なトランプ支持者であるとされ、AR-15を重要視する“Rod of Iron Ministries”を率いている事で知られ、2021年アメリカ合衆国議会議事堂襲撃事件にも参加した[97][98][99][100]

2022年2月24日からのウクライナ侵攻後、ウクライナの家庭連合(ウクライナ統一教会)会長アーニャ・カルマツカヤは、「ウクライナとはロシアと戦っているだけではありません。人類の平和、自由、人権の為に戦っているのです。」とメディアやSNS上などを通じてウクライナ愛国心反ロシア思想を世界へ向けて説いている[101]

経済活動

統一教会では、資金調達は罪深いサタンの領域から罪のない神の領域への合法的な金銭の移動と考えられている。それは、勧誘活動と共に非常に儀式的な活動であり、多くの人に(相手がその霊的意義を認識していなくても)復帰に参与する機会を与えるものと考えられていた[254]

韓国と日本での商業上の関心は、工業分野で多様化し、鉱山、建設、製造、製薬を含んでおり、韓国やブラジルで相当の大きさの不動産保有地を手に入れている[320]。また海域への関心もあり、いくつもの漁業事業が設立されている[320]

統一教会のこれらの幅広い企業活動は、単に利益を得るためだけではなく、「文鮮明を新しいメシアとする世界復帰という統一教会の使命を果たすための経済基盤」でもある[320]

日本ではより多くの「献身者」を出すことが目指され、違法な布教、資金調達活動が20年以上行われた[77]スピリチュアリティ(霊性)を濫用した収奪のシステムは、額においても国際的なネットワークのスケールにおいても非常に大規模で、組織的で高度に計算されたものであった[321]

統一教会元広報局長[305][317] 世界日報編集局長[305] だった副島嘉和によると、1975年[305] 文鮮明から日本統一教会に送金命令が下り[305]、毎月約20億円[305][317]、1985年までの[305] 10年間に合計約2000億円が文鮮明に送金された[305][317]。これに伴い被害相談額だけで2001年までの25年間で1100億円を超える大きな傷跡を残した[302]

赤旗社会部は、「元会員の一人は、幹部が何もせずにぜいたくな暮らしをしていることに裏では不満もあったと証言した」と述べている[322]

信者による莫大な献金は、アメリカ本部に送られ、そこから世界各国の統一教会に流れるが、ジャーナリストの米本和宏は、韓国に最も多く送られており、使い道は関連施設費(土地購入・建設費)、新規の事業投資と赤字補填に充てられていると述べている[323]

2009年に日本統一教会の会長徳野英治が、印鑑や風水など霊が絡む物品販売の禁止、「家系図等を用い、先祖の因縁ないし先祖開放等を理由に(した)献金」の禁止、ビデオセンターに勧誘する場合は統一教会の名前を明示すること、「霊能力に長けているといわれる人物をして、その霊能力を用いた献金の奨励・勧誘行為をさせない」という、これまで社会から批判されてきた問題点の一掃を目指す新方針を示した[324]

この統一教会の動きについては、警察を意識した通達文に過ぎないのではないかという意見もあるが、ジャーナリストの米本和広は、韓国統一教会員の話として、2008年に新潟で統一教会系企業の社員が逮捕され(1983年の青森事件以来の教会員の逮捕である)、それを文鮮明に報告した際に怒りを買ったことを紹介している[324]

2008年、文鮮明の息子でハーバード大卒の文国進が日本担当になり、各企業の役員に民間人を入れ、横領などを繰り返した腐敗幹部を一掃、教会員役員をリストラするなどの改革を行い、万年赤字であった朝鮮人参販売会社の一和を黒字転換するなど、統一教会系企業を次々再生させている[323]。この改革で日本からの献金を赤字補填に当てる必要はなくなったが、2009年時点では日本の信者への献金要請は続いている[323]

関連企業や関連団体

世界基督教統一神霊協会の財産を管理するため1963年に世界基督教統一神霊協会維持財団が設立[317] され、その元に多くの企業を擁している。韓国では財閥の一つとみなされ、系列企業は「統一教グループ[317]」と呼ばれ、宗教としてより統一系企業の方が有名[305] で、文鮮明は事業家としてのイメージが強いという[305]。文鮮明の親族がそれらの企業の幹部になっていることもある。漁業事業の一つトゥルー・ワールド・フーズ社は、アメリカ最大の寿司用魚の卸業者で、アメリカで75%のシェアを持っているという報告(2006年)もある[320]。2021年には8300以上の顧客を持ち、寿司レストランの7割から8割の食材供給を担い、年間で500億円もの年間売上を誇るなど、名実ともにアメリカの寿司産業界を支配している[325]

赤旗社会部は、日本では霊感商法に関する社会の追及を逸らしごまかすため「霊石愛好会」や「天地正教」といった仏教色の強い団体を作っていたと述べている[326]。また赤旗社会部は、系列企業は普通の企業を装い和服や不動産の売買など多様な経済活動をしていると述べている[108]

メディア事業

宗教学者のダグラス・E・コーワン英語版、宗教社会学者のデイヴィッド・G・ブロムリー英語版 は、全企業の中で最も顕著なものはメディア事業であり、その世界観を伝えるためのメディア組織が世界中で設立され続けていると述べている[320]。統一教会のメディア「ワシントン・タイムズ」は、今日アメリカの政治的保守層の間で非常に影響力があり、この新聞を刊行するニューズ・ワールド・コミュニケーションズ社は、2000年に由緒あるUPI通信社を買収した[320]

募金活動

米本和広は、真の目的を明かさず、難民救済などと嘘を言って行なわれていたと述べている[304]。集まったカンパから自分たちの食費を出しており、従事者も当時から全額が難民に届いていないことを知っていた[317]

訪問販売活動

これまで信者たちは様々な経済活動をして来た。「赤旗」社会部は、苦学生を装い、玄関で土下座して売ることから「土下座商法」と呼ばれたこともあると述べている[108]。また「赤旗」社会部は、数名で「マイクロ隊」と呼ばれる隊を組み、マイクロバスやワンボックスタイプのライトバンに寝泊りしながら、全国をインチキ募金[108] 珍味やハンカチ[108] やマスコット[108] 等の販売で回ったと述べている。極端な睡眠不足で自動車を運転するので交通事故も多く、例えば1988年12月には7人が乗ったワゴン車尾鷲市ガードレールに激突し2人の女性信者が即死している[317]

弁護士の郷路征記は、「札幌青春を返せ訴訟・最終準備書面」で、統一教会は組織的、体系的に脱税をしており、関連会社のハッピーワールドでは、委託セールスマン(会員)に落とした70%の利益はハッピーワールド本社に個人の必要生活費を除いて全額献金するシステムで、証言では信者が受け取るのは月四万二千円のお小遣いとお昼代のみであったと述べている[327]

霊感商法

先祖の因縁話などをもとにした詐欺・脅迫まがいの物品販売であった[305]

手口のマニュアル化とその「成果」

元信者によれば、効能を謳って販売し薬事法(現医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律)違反に問われ販売に行き詰まっていた高麗人参や、美術品としてはあまり売れなかった韓国の統一教会系企業「一信石材」が製造した大理石壺を売るために、教義を使って売って行こうということになったのが霊感商法の始まりだという[328]。それまでのトークに代え、「壺は霊界を解放するため」とか、“救いのためには血統を転換しなければならない”という教団の教義を使い、「高麗人参は血を清めるため」というようにトークを体系化して行き、基本トークを作り上げ、1977年から1978年頃には霊能者役のトーカーが全国から400人ほど集められて体験交流会が行われた[328]

トークの体系化により、それまで5-6時間かかっていた販売時間が2-3時間に短縮され、3日間ぐらいの展示会で1億-2億円(悪いところでも5千万円)の売り上げがあった。この展示会を毎日のように北海道から九州まで行い、1983年から1984年までの間は、韓国の文鮮明のもとに100億円を送金する月まであったとされる[328]

統一教会系企業「一信石材」から壺や多宝塔を統一教会系の商社「ハッピーワールド」が輸入し、全国に8社あった「世界のしあわせ」(旧社名)に卸し、統一教会の信者が委託販売員という名目で働く100社以上の販社で販売した[329]

1980年代初めから、占いなどを切っ掛けに、ゲストを「霊場」と呼ばれる会場に連れて行き、家系図などを鑑定しながら、霊能者を装った信者が聞き出した本人や家族の不幸の原因を先祖の因縁話を使って説明し「先祖が救われる」「このままでは不幸になる」などと不安を煽り、法外な値段で多宝塔などを買わせてきた[330]

典型的な手口

姓名判断、印相鑑定、手相占い等でアプローチする。ゲストを連れて行った案内役の信者は、霊能者を装った信者を徳の高い「先生」のように扱い、「霊山でご修業を積まれ、過去、現在、未来を見通す霊力をお持ちです」「大変人気のある方で、相談に乗ってもらえるのはかなりラッキー」など、いかにその霊能者が優れているかを説いて信頼させる[注釈 3][注釈 4]

物品の契約をしたゲストにはクーリングオフ訪問販売の一種と考えられる場合が多いので)を阻止するために、それにあたる期間は人に言えば御利益がなくなる、あるいは不幸な目に遭う等と説明をしたり、現金一括払いに持ち込もうとするなど、全てにおいて用意周到に考え抜かれている[331]

社会問題化

これらの「霊感商法」はマスメディアで度々その被害や手口が報じられた。1987年昭和62年)2月には、全国の弁護士により「全国霊感商法被害対策弁護士連絡会」が結成された[305]国民生活センターや各地の消費生活センター等に多くの苦情が寄せられ、多額の金銭的被害を生んだこの商法は大きな社会問題となった。

「霊感商法」に関係した各地の販社は、設立後2-3年で次々と解散し、遠隔地に住所移転したり社名を変えたりした[305]。「TV100」は“Total Victory”の略と言われ、ハッピーワールド元社長で当時の経済の責任者であった古田元男は「文鮮明からの指示ではなかったが、小柳定夫副社長(当時)と相談し、文鮮明が言ったかのように誇張して話したことがある」と語っている[328][332]

昭和62年の第108回国会法務委員会で、警察庁刑事局保安部生活経済課長の上野治男は「最近、私どもの都道府県の警察の相談の窓口等へ、先祖のたたりがあるとか、そういったことでもってそのたたりを解消するためと称して高価なものを売りつけるということで相談のあるケースがかなりございます。昨年は、一年間に二百件ほど相談が来ております。それからそういったものに対しまして、従来から各種の悪質商法について私ども取り締まりをしておるわけでございますが、その取り締まりの中でもこの種の商法というのは人の弱みといいますか、人の不安につけ込むというもので、悪質商法の中でも最も悪質なものの一つということで、全国の警察に繰り返し厳しく取り締まるように指示をしておるところでございます。その結果、この数年間で十三件検挙した事例が出ております。各種の法令を適用して検挙しておる実態でございます。」と答弁した[333]

赤旗社会部は、「霊石愛好会」は1988年1月北海道帯広市で「天地正教」として法人登記していると述べている[334]。赤旗社会部は、「弥勒菩薩を本尊とする」「南無霊妙大慈尊というお経を作る」等仏教を装っているが、教祖の川瀬カヨは統一教会の古参会員であり、天地正教の道場にある祈祷室には文鮮明の写真が飾られ、この道場で統一教会の献身儀式が行われるなど実体的に統一教会と一体であり、悪事を隠す仮面として仏教の装いを作っているに過ぎないと述べている[334]

教団側は信者に向けては「昭和57年ごろから文先生が創設した政治団体国際勝共連合が日本を共産主義の間接侵略から守るためにスパイ防止法制定運動を活発に推進しました。これに対して共産党および社会党は制定運動の資金源が統一教会であると誤認し、教会攻撃のために引き起したのがいわゆる”霊感商法問題”です。」という説明をした[335][336] が、その一方で世間に向けては「教会一切の収益事業はおこなっておらず、教会員の献金によってのみ運営されています。…個人の職業に対しては一切関与するものではありません。ゆえにいかなる商法とも教会は関連ありません。」と教団の関与を全面否定してきた[335]

しかし日本弁護士連合会は1988年3月にまとめた『霊感商法被害実態とその対策について』の中で、この悪徳商法が統一教会信者によって組織的に行なわれていることを具体的証拠をもって証明し、結論として「霊感商法に関わる販売業者群の背後には統一教会の存在が推認される」とした[305]

「霊感商法」が社会的な問題になった1990年頃から、信者達は着物、貴金属、絵画、毛皮、高麗人参等の商品を展示会形式で販売するようになった[337]

1994年7月12日、日本社会党(当時)の北村哲男が「霊感商法」などの反社会的なことを行う統一教会に対する政府の見解を質す質問主意書を政府に提出したが、政府は村山富市首相名で「宗教法人法第79条は、宗教法人が行う公益事業以外の事業の停止命令について規定しているが、所轄庁である東京都知事は、いわゆる霊感商法については、現在、統一教会の規則には事業として記載されておらず、また、統一教会が行っている事業であるという確証もないことから、現在のところ、同条を適用することは基本的に困難であると判断している。」と回答した[338]

しかし民事訴訟では霊感のない信者を“徳の高い霊能者の先生”に仕立てて売るための詳細なマニュアルがあったことや、「連絡協議会」の存在を教団が主張し始めたのは、民事訴訟が提起されてから7年も経ってからであり、証人に立った教団側の信者もその存在を知らなかったと証言し[339]、裁判所からも当時の「連絡協議会」の存在を示す実体もないと認定された(2001年6月29日 札幌地裁)。

訴訟においては、1984年1月12日、青森地方裁判所が、大理石の壺を販売した信者2名の販売行為が恐喝罪に当たるとして懲役2年6月(執行猶予5年)の判決を下したが、教団事体の責任は問われなかった[340]。その後、教団は1990年頃までは弁護士からクレームがあれば、お金を払って和解していた。1993年[341](平成5年)福岡地裁の訴訟において、原告は教団から有利な和解条件を持ちかけられたが、裁判で決着を着けなければという思いから和解を拒否[328]、これ以降、教団の責任を認める判決が[342]相次ぐようになった。

2009年6月11日印鑑販売をめぐる特定商取引法違反事件では渋谷教会に対する家宅捜索警視庁公安部が乗り出した。[343] またそれを遡る5月27日福岡県の事件においては福岡県警公安一課が立件した。[344]以前はこの種の悪質商法事犯には警視庁や各県警の生活安全部が担当していたが[333]オウム真理教事件以降、カルトに対しては公安部が担当している[343][344]

自己啓発セミナー

統一教会のビデオセンターなどは自己啓発セミナー[注釈 5] を装っていた。赤旗社会部は、横浜市の統一教会系自己開発セミナー「グローバル・アイ」のマークは自己開発セミナーの最大手ライフダイナミックスのマークを反転させただけであると述べている[322]。赤旗社会部は、会場はビデオセンターの他大学の原理研究会グループのたまり場だったり、主婦協会員のための託児所だった例もあると述べている[322]

赤旗社会部は、実際の講義は第一段階が「創造論」「堕落論」「復帰論」など宗教的な布教であり、毎週末に箱根の研修センタ−で2泊3日の合宿を行なったと述べている[322]赤旗社会部は、アイドル歌手のコンサートや東京ディズニーランドツアーなど若者受けする催しもあったと述べている[322]赤旗社会部は、1987年の講師は世界日報の論説委員長であった井上茂信[322] や、国際勝共連合新宿支部長で千葉大学名誉教授であった清水馨八郎[322] など統一教会系組織の幹部であったと述べている。赤旗社会部は、受講料は入会金や旅費を含めて7万円、受講生の帰宅時には再会を約束する手紙を渡すなどの手法も自己開発セミナーと同じであると述べている[322]

還故郷

1991年9月29日に文鮮明は世界日報講堂で「故郷へ帰れ」という演説を行ない[305]、教会活動に専念する献身者の制度が解消され、各自が故郷に戻って定職につき、親族へ伝道するように方針転換がなされた。これは内部では「還故郷」と呼ばれた[328]。これは日本で霊感商法が問題になって1987年から送金額が減り始め、1991年になってからはほとんど送金されなくなり、従前世界日報や一和が出していた大赤字を埋められなくなって統一教グループ全体の資金繰りが苦しくなり、新たな資金源としての合同結婚式への参加人数を増やすため、経営不振の企業から信者を退職させて合理化すると同時に、故郷に帰して韓国農村で結婚できていない男性を捜し「信者になれば日本人女性と結婚させてやる」と勧誘させるためだったという[317]

献金

ジャーナリストの米本和宏は、統一教会に関する社会的に非難されてしかるべき問題として、信者に対する「高額でエンドレスな献金」要請を上げている[345]。販売活動や募金活動の目的は、文鮮明への献金である[304]。文鮮明一家が贅沢な暮らしをしていることは長男の嫁の暴露本などで明らかにされているが、最盛期で2000億円に上った献金すべてを文一家が使い切れるわけでもなく、献金は、金銭に限らずすべてを神に返し、地上天国の出現を目指す「万物復帰」と関連している[345]

ただしこれはあくまで宗教における象徴的な概念であり、世界の統一教会の信者の中で、献金に追われているのは日本の信者だけである[345]。日本だけが献金に追われていることについては、文鮮明によって日本が「エバ国家」(罪深き国)とされたことに関連しているが、なぜ日本がエバ国家であるかは明確には説明されていない[345]。日本が文鮮明が生まれた朝鮮半島を支配していたことへの感情との関連や、1970年代は日本は高度成長期のただ中で、多額の献金が期待できると考えられたのではないかとも指摘されている[345]

政治活動

オウム真理教などの宗教問題を専門とするジャーナリスト出身の有田芳生は、統一教会の本質について、「多国籍企業を上回る準軍事的な国際政党」「宗教という仮面をかぶった経済=政治複合組織である」との見解を示し、その活動は日本韓国アメリカ合衆国をはじめ、世界を股にかけるものとしている。1978年に公表された米下院のフレイザー委員会報告書では、「厳格な規律をもった国際政党の特徴を備えている」と評価されており、教団の最終目的を、教祖文鮮明を頂点とする「世界的な政教一致国家を樹立すること」だと断定している[350][351]。教祖の文鮮明本人は「現人神である自分を中心とする神国政治を創る」と言っていたとされる[352]

韓国を中心とする世界統一運動

赤旗社会部は、「事実上の教典である『原理講論』韓国語版には、世界は第三次世界大戦を経て、政治面では韓国を中心として、宗教面では文鮮明と統一教会を中心として統一される旨の記述があるが、この部分は日本語版に訳出されず隠蔽されて来た」と述べている[108]。赤旗社会部は、「この隠蔽の目的は日本の右翼に取り入り日本での策動を有利にするためだったという指摘がある」と述べている[108]

統一教会が四大名節と呼ぶ記念日には、早朝5時からの「敬礼式」中、日本の昭和天皇、アメリカ合衆国のロナルド・レーガン大統領、韓国の全斗煥大統領、等各国代表の身代わりをそれぞれその国の教団幹部が担当して聖壇に座った文鮮明夫妻に対し拝跪する儀式が行われていた。赤旗社会部は、この際に昭和天皇の身代わりとなり文鮮明夫妻に対し拝跪したのは日本統一教会の長であった久保木修己であったと述べている[108]

反共主義

教団は共産主義革命の防止を主たる目的とし、日本においては岸信介らが中心となり、1968年(昭和42年)に韓国と日本で「国際勝共連合」(通称「勝共連合」)という政治団体を組織した。勝共連合では反共主義が徹底されており、共産主義は神を否定するサタンの思想であると説く「勝共思想(勝共理論)」[353] の啓蒙を運動方針の第一義に掲げ[354]、具体的にはスパイ防止法青少年健全育成法の制定運動、日本国憲法教育基本法改正の推進、性教育に関する教科書改訂や子宮頸がんワクチン撲滅キャンペーンなどに取り組む一方、選択的夫婦別姓制度やジェンダーフリー人権擁護法案外国人への参政権付与には反対する[355][356]。また専守防衛非核三原則武器輸出三原則の破棄などを提唱し[357]原子力発電所の必要性も唱えている。[要出典]

1976年(昭和51年)の第78回国会外務委員会で、田英夫は、元在米韓国大使館付武官であった朴普煕と非常に親交のあったというロバート・ロランドというユナイテッド航空の人物が、1967年(昭和41年)に文鮮明が「世界反共連合を設立するために日本の山中湖畔で児玉譽士夫、笹川良一と会合をした」「この会合の結果、世界反共連合というものが1968年の1月に韓国に本部を持って発足をし、同年(68年)4月には日本支部が設立され岸信介氏がこれに加わった」と証言している、と述べている[358]

ことに自民党の「韓国ロビー」といわれる政治家と親密で[359]、古くは岸信介福田赳夫安倍晋太郎といった領袖が文鮮明主催のパーティーに参席したり、同僚議員を教義セミナーへ勧誘するなどして尽力[360]。1989年(平成元年)に東京で開かれた「勝共推進議員の集い」[注釈 6] には自民党・民社党を中心とする国会議員232名が一堂に会しており、近年でもシンパ議員は250人にのぼると漏れ伝わった[361]。自民党内には嘗て教団が支援する教育関係の議員連盟が設立されたこともあり[362]、地方議員が関連団体の地元支部で役職に就くことも珍しくない[注釈 7]

1977年(昭和52年)の第80回国会文教委員会で、政治家の大塚喬は、「1961年の朴政権発足とともに、その庇護のもとに急速に勢力を伸ばしてまいりました。」と述べている[359][363]。後に教団ナンバー2となる朴普煕を始めとした韓国軍の高級将校も入教しており、系列企業の「統一産業」が小銃工場を建設する際に、文鮮明の側近となった朴普煕朴正煕大統領(当時)が事業支援について協議したことや、公務員教育が国際勝共連合で行われたことなどが報じられた[364]。昭和53年の第84回国会予算委員会で、内藤功は「米国議会フレーザー委員会におきまして「米韓関係の調査」と題する報告書が公表された。その中で統一教会はKCIAが政治活動の目的のために組織したものだ、こういう米CIA資料を公開しております。」と述べ、園田直(当時国務大臣)は 「米国下院国際関係委員会の国際機構小委員会、いわゆるフレーザー委員会が米韓関係に関する調査との関連で先月開催した一連の公聴会の冒頭、韓国中央情報部長であった金鍾泌氏が統一教会を設立した旨の米政府部内資料が公開されたということは承知しており、すでにその資料の写しを取り寄せ済みでございます。ただ、同資料がどのような裏づけを持ってやられたものか等を含め、同資料の性格はまだ判明しておりません。なお、この公聴会では、後日、22日だと思いますが、公聴会で統一関係者が右資料の趣旨を否定する証言を行った旨、これまた報道で承知しております。」と述べている[365]

日本では、日本共産党をターゲットにさまざまな妨害工作を仕掛けていたとされる。有田芳生右翼の畑時夫から得た証言として、袴田里見副委員長が共産党を除名になった直後の1978年に、統一教会の久保木修己会長と国際勝共連合の梶栗玄太郎理事長が、京都市内のホテルで、袴田と面識があった畑時夫と面会し、「金はいくらかかってもいいから袴田をなんとか手に入れることができないか。共産党を攻撃する材料ができる」と相談したという[366]

教団などは文鮮明が北朝鮮を訪問し、朝鮮半島の非核化宣言の合意形成に成功したお陰でこの時期の半島での戦争を避けられたと主張している[367]。訪朝後は経由地の北京で「私が過去40年の東西冷戦時代に誰よりも徹底した反共指導者であり、国際勝共連合の創始者として一生を勝共闘争に捧げてきたことは、世界がみな知っている」としつつ「しかし、私の勝共思想は共産主義を殺す思想ではなく、彼らを生かす思想、すなわち人類救済の思想」[368][369] とする声明文を発表した。

有田芳生によれば、1992年3月の文鮮明来日時にも、自民党関係者との密接なつながりが見られたという。文鮮明は過去に二度来日したが、出入国管理法に違反して宗教活動を行なったため、1979年1981年1982年にわたり、入国を三度拒否されている。この異例の来日が実現した背景には自民党副総裁の金丸信の働きかけがあったとされる。来日した文鮮明は29日に中曽根康弘と会談し、30日夜には「北東アジアの平和を考える国会議員の会」が主催した晩餐会で、三十一人の国会議員の前で講演を行なった。31日には金丸信と密室で会談した。金丸との会談の内容は主に北朝鮮をめぐるものだったとされ、金日成の親書を金丸側に手渡したとの噂まであった[370]

保守派支援


1970年代から文鮮明はアメリカに居を構えて、大規模な講演会を幾たびも開催した。日本から渡米した信者らも活発に伝道と経済活動をした。自ら創刊した保守系新聞『ワシントン・タイムズ』などのマスメディアで政治的に保守政党である共和党を一貫してバックアップしたほか、ニクソンレーガンブッシュなどを支援し、関係を築いてきた[371][372][373]。1995年9月には東京ドームで関係団体により開かれた集会でジョージ・H・W・ブッシュが演説した[374]

日本での選挙の際にも信者を運動員として派遣し主に保守系候補を積極的に支援することが知られ、1986年(昭和61年)のダブル選挙では教団が肩入れした候補150人のうち134人を当選させ、後にその全員が教義セミナーを受講したと勝共連合の機関紙が伝えた[375]。1978年(昭和53年)の第84回国会地方行政委員会で、政治家の正森成二は、勝共連合が「「やっぱり杉村氏は極秘党員か」、こういうビラを全戸に一斉に配布いたしました。」と述べている[376]

赤旗社会部は、信者が自由民主党の事務所に派遣された際には「統一教会ではなく勝共連合から来ましたと言いなさい」と言い含められたと述べている[298]

教団の日本の政治への影響力を高める方法として主流だったのは、信者を議員秘書に育成して国会議員のもとに派遣することだったとされる。当時ジャーナリストとして活動していた有田芳生の調査によれば、1991年当時、自民党の新井将敬東力民社党菅原喜重郎公設秘書が統一教会の信者だったという。私設秘書はさらに多く、自民党の高橋一郎伊藤公介平沼赳夫原健三郎大塚雄司らの議員秘書が信者だったとされ、ある自民党大物議員も「こんなものじゃない。私設秘書だって数十人の規模でいる」と証言していたというほどだった。1990年2月の大塚の選挙活動には数十人規模の信者が関与していたとされ、カンパポスター貼り、他陣営候補者のポスター破り、推薦はがきの宛名書き、演説会の案内状書き、支持依頼の電話などを熱心に行ったという。教団は京都嵐山神戸須磨の関連施設を、信者を議員秘書とするための養成所とし、話し方、接待の仕方、お茶の出し方、受付や名刺交換、電話の応対の作法などを泊まりがけで叩きこんだとされる[377]。このほかにも、勝共連合では「まず秘書として食い込み議員の秘密を握り、次に自ら議員になれ」との指示が下されているという[360]

文鮮明本人がアメリカで行った演説の内容として「先生(文鮮明が使う一人称)は、上院議員一人あたり三人の若い夫人を割り当てるだろう。・・・・・上院議員を正道に戻すには、まずその助手たち、とくに秘書たちを友達にしなければならない」(1972年)「先生には、多数の美貌の女性たちが必要である。三百人ほど必要である。先生は上院議員一人あたり三人の若い夫人を割り当てるだろう。一人は選挙、一人は渉外、一人はパーティーを担当する。もし女性会員たちが多くの点で上院議員たちにまさっていれば、その上院議員はまさにわれわれの会員のとりこになるだろう」(1973年)とあり、同様の戦術を米国でも行っていたことを教祖自ら語っていたことになる[378]

政治家の中村敦夫は、1998年(平成10年)の第143回国会法務委員会で、国会議員に対して統一教会やその政治組織などから秘書が派遣されており、多い人は統一教会から一人の議員に、9人もの秘書がついているというようなこともあったと述べている[379]。在任中の法務大臣であった保岡興治が政策秘書として使う信者(1800双)[注釈 8][380] 秘書官に登用したことが週刊誌で報じられ[381] 国会で追及を受けたこともある[382]。1992年(平成4年)3月には国会議員による法務大臣への働きかけが奏功し、本来であれば米国で1984年に受けた実刑判決の影響で日本へ入国できない文鮮明が、14年ぶりの来日を果たし各地で説教した[379][383]

また秘書となった信者が自ら選挙に立候補するケースもあり、例えば渡辺美智雄国会議員)の元秘書(6000双)で、霊感商法でトーカーと呼ばれる霊能師を担当していた者が衆院選候補に転身し、後に自民党が公認[328] している。2010年(平成22年)にも市議選への女性信者の出馬が発覚した[384]

弁護士の渡辺博は、安倍晋三への銃撃事件を受けて会見し、「二十数年前の調査では、統一教会の信者百数十人が自民党などの国会議員の秘書になっていた」と述べている[385]

有田芳生によれば、1980年代から始まった「スパイ防止法」の制定運動など、自民党の一部議員が推進する政策にも教団の思惑が反映されているという。また、「日韓トンネル」の建設推進運動の背後にも、教団関係者の暗躍がみられるとしている[386]

1987年(昭和62年)の第109回国会法務委員会で、政治家の安藤巖は「霊感商法をやっておる「世界のしあわせ」、「世界のしあわせ北海道」、「世界のしあわせ名古屋」あるいは「世界のしあわせ九州」、「(世界のしあわせ)広島」」といった団体から自民党の保岡興治議員、桜井新議員、亀井静香議員に政治献金がなされており、政治資金報告書によると、わかっている範囲で保岡が400万円、桜井が150万円、亀井が300万円、また自民党の中村文教部会長が国際勝共連合から10万円の政治献金を受け取っていると述べている[387]。 1977年(昭和52年)の第80回国会予算委員会で、政治家の石橋政嗣は、総理あてに原理運動被害者父母の会から出された陳情書の中に、「(真っ先に自民党に陳情したが)多くは儀礼的な挨拶だけで、中には「自民党では、この問題はタブーです」とハッキリ断られた人も居ります。」と書かれている、と述べている[388]

韓国の統一教会で発行された『統一世界』1990年4月号では、文鮮明本人が日本の政治に対する影響力の大きさを自慢する演説の要旨を紹介している[389]

日本の今度の選挙だけでも、私たちが押してあげたのが、百八議席当選しました。今回、私たちが援助しなければ、無所属で出てきた中曽根なんか吹けば飛んだよ。また派閥で見れば、中曽根派は六十二議席にもなって、安倍派は八十三議席です。私がそういうふうに作ってあげたんですよ。この二派閥を合わせるといくつになりますか?それで安倍とか中曽根は、原理の御言を聞け!と言ったら聞きはじめました—  文鮮明の演説より抜粋『統一世界』1990年4月号[389]

宗教ジャーナリストの鈴木エイトは、「政治家が教団に求めるのは『票集め』ではありません。選挙戦での運動員、事務所スタッフなどの『人的貢献』です。それは政治家が何よりほしがるもので、教団は無尽蔵に提供してくれるわけです。政治家と旧統一教会――その関係は、世間一般の人たちが思うよりも、ずっと深いものなのです」と語っている[390]

韓国では教団自ら政党を設立して政界進出を企図することもある。2008年4月に行われた総選挙では「平和統一家庭党」から全245地方区(選挙区)と13比例区に候補を立て臨むも全員落選。更に、政党得票率が全有効票の2%に満たなかったため、選挙法の規定により政党登録を抹消されることとなった[391][392]。こうした教団の動きに対し同選挙では、「統一教会対策協議会」を中心に全キリスト教派が連携し、統一家庭党候補への落選運動も展開された[393]

政治に関する出来事

安倍晋三との関係


安倍晋三と教団の関係は、祖父の岸信介、父親の安倍晋太郎の親子三代にわたるものだったと伝えられる。ジャーナリスト活動家有田芳生も「岸信介氏、安倍晋太郎氏、安倍晋三氏は三代続けて、統一教会を日本社会に深く浸透させる政治的に重要な役割を果たした」と評価している[385]週刊朝日の報道によれば、統一教会の日本での拡大には、笹川良一児玉誉士夫らのフィクサーと岸信介の尽力が大きかったとしており、父親の安倍晋太郎も「勝共推進議員連盟」に参加していたとされる[412][413]。文鮮明が、アメリカのCIAが創設に深く関与した大韓民国中央情報部の支援のもとにアジアの反共団体の結成に動き[414]、笹川が勝共連合の名誉会長に就任すると、協力関係にあった岸も教団に接近。日本本部は岸がかつて所有していた土地に置かれ、教団は様々な訴追を受けずに済んだ。さらに、教団関係者は自民党の内部にも浸透した[415]カーター政権下の1977年FBIによるレポートなどによると、上記の3者が文鮮明の強大な支援者となり、また文鮮明は日本政府上層部との繋がりを保っていたとしている[416]ジェフリー・ジェムズ・ホールFTなどの取材に対し、反共産主義活動により自民党の有力な支持団体になった統一教会は、のちに安倍晋三の派閥になる岸の派閥を特に支持したとしている[417][418]

2006年5月、『しんぶん赤旗』などによれば、安倍晋三は、教団関連団体の天宙平和連合が全国各地で開いた大会の複数会場に内閣官房長官の肩書きで祝電を送付。この前年にも同様の大会への祝電が確認されている[419][420]

また、文鮮明が設立した米ワシントン・タイムズ紙2011年5月10日付に掲載された意見広告にと共に署名[421]。2010年2月と2012年7月には幹部信者(12双)が代表を務めるシンクタンク「世界戦略総合研究所」で講演[422]。さらに、『FLASH』誌などは父親の金脈、人脈を継いだため教団とは切るに切れない事情があると報じており[423]、教団内では「安倍先生なくしてみ旨は成就できない」と伝えられる[424]

ジャーナリストの有田芳生は、『週刊朝日』2006年6月30日号において、安倍と教会の"祖父の代から脈々と続く関係"について「私は以前、安倍さんから統一教会と北朝鮮の関係について聞かれたことがある。そのときは『統一教会が接近してきている。会おうと言われているが断っている』と言っていました。安倍さんは北朝鮮に対して強硬な立場で総裁選も近いということから考えると、少なくとも本人の意思では(前述の祝電を)送っていないとは思います」とコメントしていた[425]

しかし、長期安定政権樹立を目指していた安倍は、2013年頃から教団の持つ組織票と無尽蔵の人員を目当てに、一時は距離を置いていた教団に再接近したと宗教ジャーナリスト鈴木エイトにより確認され、さらに安倍晋三と統一教会の関係について、「癒着」との表現を用いて極めて密接であったとしている[426]

安倍が「じきじきに」後援を依頼して、教団による選挙協力・動員が得られた例として、2013年夏の参議院議員選挙比例区で出馬した北村経夫があるとされる。鈴木の調査によれば、北村の後援会名簿には教団系の政治団体である国際勝共連合世界平和連合の幹部の名があり、北村の選挙事務所には世界平和連合の女性スタッフが事務員として派遣されていたという。教団による組織票は約8万票であり、北村の総得票数142613票の大半を占めていたとされる[427]。また、安倍政権下で開催された桜を見る会にも、2013年から2016年にかけて教団関係者が招待されていたとされる[428]

霊感商法の被害者支援を行う弁護士の集まり「全国霊感商法対策弁護士連絡会」が一貫して名称変更反対の申し入れを文化庁に行ってきた中でも、2015年に教団の「世界平和統一家庭連合」(家庭連合)への名称変更が許可された背景に、安倍の関与があったとされる。ほかにも安保法制の改定時期に「安倍政権を支えよう!」と街頭で安倍政権支持デモを繰り返すなど活発に活動した大学生集団「勝共UNITE」のバックには教団系の国際勝共連合があり。この集団は教団の二世信者により結成されたものだったと伝えられる[412][429][430]このほかにも、教団系の雑誌『世界思想』2013年9月号は「安倍政権の救国ロードマップ」を特集し、街頭演説をする安倍晋三の姿を表紙に使った[431]

安倍は2021年9月12日(日本時間)に開催された天宙平和連合(UPF)主催のイベント『THINK TANK 2022 希望前進大会』にも、UPFインターナショナルとワシントン・タイムズからの依頼に応じる形でビデオメッセージを寄せている[406][407][408][409]。このビデオメッセージについて、全国霊感商法対策弁護士連絡会は同年9月17日、安倍に対し公開抗議文を送付している[410][411]

ほかにも、第一次安倍政権で内閣総理大臣秘書官を務めた参議院議員の井上義行は、2022年7月6日、埼玉県で行われた教団の会合で、幹部から「(井上は)もうすでに信徒になりました」と紹介され、「信念を持って同性婚反対と言っている」とも演説している[432]

弁護士の山口広は「安倍政権になってから、若手の政治家が統一教会のイベントに平気で出席するようになった。それまでは、政治家が参加しても名前は出さないとか、統一教会側も名前を伏せて『衆議院議員が参加してコメントした』と言っていた。安倍さんには、統一教会と仲良くすることに開き直るというか、顕著なものがあり、憂慮していた」と発言している[385]

なお、安倍は選挙応援演説中の2022年7月8日に、41歳の海上自衛隊に短期在籍経験のある奈良県在住の男から銃撃を受け死亡したが(安倍晋三銃撃事件)、犯人の男は、母親が統一教会に多額の献金をした挙句に破産し、家庭が崩壊したことで同教団に恨みを募らせたことにより、殺害が困難な同教団幹部に代わって安倍をターゲットに犯行に及んだことを明かしている[433][434]。なお、犯人の男は、前日の7日、朝4時頃に世界平和統一家庭連合奈良家庭教会を銃撃している[435]

一連の報道を受けて、日本での会長である田中富広が2022年7月11日に記者会見をおこない、犯人の母親が信者であることを認めると共に、安倍との関連性については「友好団体(UPF)が主催する行事にメッセージが送られてきたことがあり、『世界平和運動』に関しては賛意を示してくれた」としつつ、「会員や顧問になったことはない」との見解を示した[436]

この会見について、霊感商法などの宗教問題を専門とする弁護士の紀藤正樹は、「UPFと統一教会はいわば一体の組織であって、友好団体という言い方は極めてミスリード」と述べ、「多くの信者は区別がつかない」として、田中の見解を完全に否定した[437]2009年以降は教団にまつわる献金トラブルがないとの説明も、裁判の判決文を見せた上で「これは平成25年(2013年)とか27年(2015年)とか、その頃の事件の判決です。その頃でもまだ高額献金をやってた」と完全に否定する見解を示した[437]。全国霊感商法対策弁護士連絡会も、2009年から2020年にかけて献金を含む被害を年に61件から1113件を確認しているという。2021年は47件で、被害総額は3億3153万507円という[385]

2022年7月15日、岩手県達増拓也知事は記者会見にて安倍晋三元首相の銃撃事件に関連し、「世界平和統一家庭連合(旧統一教会)とその関連団体が自民党と結び付いていたことが明らかになった」と批判[438]。達増は「自民党や所属議員が団体から選挙で支援を受けている」と指摘すると共に、「政策が極端な特定の宗教団体と関連グループが法外な寄付金を集め、選挙結果や政府の政策に影響を与えている」とし、「そういう団体と深く結び付いている自民党を有権者は支持し続けてくれるのか」と自民党の姿勢を疑問視した[438]

2022年7月17日、安倍晋三銃撃事件の犯人の男が、事件以前に「憎むのは統一教会だけだ」「オレが14歳の時、家族は破綻を迎えた」「統一教会の本分は、家族から巻き上げさせたアガリを全て上納させることだ」などと教団への恨みをツイッターに投稿していたとみられることが判明した。また、事件の直前に中国地方に住む男性宛てに、銃撃を示唆する手紙を送付していたことが判明した。この手紙の中では、「本来の敵ではない」「あくまでも現実世界で最も影響力のある統一教会シンパの一人に過ぎない」と安倍を評価している[439]

初の内部告発者「副島嘉和」襲撃事件

統一教会系新聞世界日報1980年代初頭赤字経営だったが、編集長として統一教会幹部の役職が与えられてた副島嘉和独立可能なほど興隆させる[63]。それを乗っ取りと見た統一教会は、渋谷のビルを勝共連合信者約百人で占拠監禁暴行し、福島を強制解任した[63]副島嘉和と元営業局長井上博明は、連名で文藝春秋1984年7月号に「これが『統一教会』の秘部だ―世界日報事件で『追放』された側の告発」という18頁に渡る手記を暴露発表した事で、1970年代の10年間で日本から韓国へ約2000億円が送金された事など、初めて日本国内の一部に統一教会の内情が露見した[64][62]。1984年6月10日頃には全国の店舗に並んだが、その直前の1984年6月2日夜、副島が帰宅途中に何者かに襲撃され、全身を刺され瀕死の重傷を負った「副島襲撃事件」が発生[65]。この襲撃事件時、世界日報の元社会部記者が副島の自宅に偶然おり、副島が瀕死の状態で自宅にたどりついた時の様子を証言している[136]。副島は全身を刺され、最も深い物で刃渡り15㎝まで到達していたが、心臓からわずかに2センチメートル外れており、また世界日報の別の記者が事件直後にたまたま副島の自宅を訪ねており、救急車に担ぎ込まれた事により副島は奇跡的に生還した[137][138]

この事件の後、統一教会は「副島は闇の世界と深い付き合いがあった。闇の世界のプロの刺客に襲われたようだ」との風説を盛んに流している[440]

副島らは、この襲撃事件前後の統一教会との確執に関して原稿を書き『週刊文春』に持ち込んだが採用されなかった[67]。また、マスコミも襲撃事件を言論事件として取り上げようとするところはなかった[67]。副島らは孤立無援の状態で統一教会の告発を続けたが、さまざまな事情によりグループから脱落者が出て、それを続けることは難しくなっていた[139]。偶然ではあるが、1984年秋から『朝日ジャーナル』が統一教会、霊感商法の批判キャンペーン記事を掲載しはじめたため、副島らが始めた統一教会批判は実質的には『朝日ジャーナル』へ引き継がれることになった[139]。この襲撃事件は殺人未遂事件としてではなく、傷害事件として捜査された[66]。しかし、犯人を特定できないまま、1991年6月2日に公訴時効を迎えた[66]

文鮮明のインタビュー

1976年に文鮮明は、アメリカの『ニューズウィーク』誌のインタビューには応じた[441][442]。以下は統一教会によって一部抜粋された物である[441][442]。インタビュアーは『ニューズウィーク』誌の編集長リチャード・Z・チェスノフと編集者アンドリュー・ナゴルスキ(以下、Qと表記する)[441][442]

Q. 統一教会が他のキリスト教の宗派と違う点は何ですか?

A. 私の受けた新しい啓示が神の意思を明確にしました。その意思とは何か? 世界を救うことです。ですから、統一教会はただの宗派ではありません。世界を救うための運動なのです。そして、 私たちの運動に関わる個々人は、神の言葉の教えにより、神様を中心とした個人、神様を中心とした家庭、神様を中心とした国、そして神を中心とした世界という概念を明確に知ることができます[441]

Q. 神の意思はどのように明かされたのですか?

A. 16歳の時に、韓国の郊外でイエス・キリストに出会うというとても霊的な深い体験をしました。それが啓示の始まりでした。それからというもの、真実を探求する時、私は常に、神様と、イエス様を含む霊界の聖人たちと対話しています[441]。これは言葉ではうまく言い表せません[441]

Q. 神はなぜあなたに語ったのでしょうか?

A. 神様のタイムテーブルに従って、 神様は私を召命または抜擢されました。なぜ? それは神様に聞かないと分かりません。私が知っていることはただ一つ、その使命が私に与えられたということです。神様の主な頭痛の種は3つです。1つ目は、道徳の崩壊が広がっていることです。2つ目は、キリスト教会は分裂し、衰退しており、霊的力を回復しなくてはいけないこと。そして3つ目は、神様の目から見て悪の勢力にあたる共産主義が台頭していることです。これは地上に神の国を創る上での最大の障害です。私は、これらの啓示を原理講論として完成し、体系化させてから、一つの運動を組織しました。それが統一教会です[441]

Q. あなたは「私は世界を抑圧し、支配するだろう。私が求めなくても、世界が法律に従うように私の言葉に従う時が来る」と語られました。あなたの政治的目標は何ですか?

A. 政治的目標などありません。その特定の文章だけが周囲の文脈を無視して引用されているのです。長い、即席の演説から文章を引用すると、誤解が生じる場合があります。韓国語の翻訳の問題もあります[441]

Q. つまり、世界を支配するつもりはないということですね?

A. もちろんです。政治的に支配するつもりはありません。世界を支配するのは神様であって、私は神様の位置に立つつもりはありません。しかし、神様のが私を通して語られるのであり、語っているのは神様です。だからこそ、多くの若者が私に従うのです[441]

Q. あなたの信者たちはとても質素に暮らしていますが、あなたはとても楽に暮らしています。どうして贅沢するのですか?

A. 私は人生の大半を質素に暮らしてきましたが、好むと好まざると、私は世界的に知られる人物になってきました。私に会いに来る有名人はたくさんいます。外交儀礼の問題です。すると、人々は私に、保護と威厳が必要だと言います[441]

Q. どうして統一教会とその信者たちは常にお金を稼いでいるのですか? なぜ物質主義を強調するのですか?

A. 私は物質の価値を否定しません。しかし、それは神様のために使われるべきです。地上に神様の理想の概念を実体化する私たちの運動には莫大な資産が必要なのです[441]

Q. その資産の少なくとも一部分でも、飢餓撲滅などのために割り当てないのはなぜですか?

A. 福祉活動はいくつか展開しています。しかし、分かっていただきたいのは、貧者や孤児を助ける能力のある人や、助けている人はたくさんいるということです。私の特別な任務は、人々に神様を知らせることです[441]

Q. 信者たちを洗脳しているというのは本当ですか?

A. 連邦議会の議員たちと話した時も同じ質問をされましたが、私はこう答えました。「あなた達アメリカ人は韓国から来たレバレント・ムーンに洗脳されるほどの愚か者ですか? それに、私は通訳を使っています」。統一教会にやってくる若者たちはバカでも凡庸でもありません。賢明で、理想家で、自信に溢れています。彼らは、神様の力と愛に気付くと、磁石のように惹きつけられます。統一教会のセンターのドアは24時間開いています。入るのも出るのも自由です[441]

Q. 家庭の重要性を強調されていますが、あなたのやり方は家庭内の不和を引き起こしているのではありませんか?

A. もし私の信者の中に親を糾弾する者がいるとしたら、彼は私の本当の信者ではありません。本当の信者なら、親から尊敬されるでしょう。多くの若者は無視され、に飢えています。彼らは本当に感動し、喜びに満ちて入教してきます。彼らは、生まれて初めて、信じて愛せる何か、そして、誰かに出会ったのです。こうして彼らは熱心な信者になり、統一家の一員になるのです。一部の親たちは嫉妬しますが、その他の親たちは自分の息子や娘が、韓国人である私に従っている事実以外に反対する理由を持ち合わせていません[441]

Q. あなたは明確に、再臨主が現れること、その再臨主は結婚した韓国人であること、そして、新しいイデオロギーが韓国に出現すると言われました。なぜ韓国なんですか?

A. 韓国は神様に選ばれた国です。韓国は分断されています。板門店の分断線は神側の世界とサタン側の世界の分断線のようなものです。対決は韓国で行われるしかないのです。韓国の勝利、特に共産主義との戦いにおける勝利は、韓国だけのものではありません。私は、その戦闘の現場を再びアメリカに移すためにやってきました。アメリカは世界に対する責任から後退してきました。これは、既にベトナムで起こったことです。世界、そして神様の運命を決めるのはアメリカです。神様は、チャンピオンを必要としています。アメリカは共産主義と戦う運命にあるのです。イデオロギーの対決は避けられません[442]

Q. あなたは韓国政府や韓国CIAの関係者ですか?

A. それはばかげた考えです。統一教会は宗教運動であって、政府の指示は受けません。実際には、韓国政府の人たちが私たちの運動を弱体化させたり、抑制しようとしたことは過去に何度もありました。しかし、今は、韓国の国家目標に対して私たちが貢献するところが非常に多いので、韓国政府も私たちの業績を無視できないでしょう。私たち自身のイニシアチブで、2千万人以上の人が私たちの勝共理論を聞きました[442]

Q. 韓国や世界の反共団体、例えば、日本の児玉誉士夫から、支援を受けたことはありますか?

A. 一銭も受け取っていません。児玉さんには会ったこともないし、彼とも、彼の団体とも、やり取りしたことはありません。共産主義者たちが、統一教会の印象を悪くするためにそのような噂を流しているのです[442]

Q. 世界中の教会の金銭的な所有財産の規模は?

A. 分かりません。正直な話、私は数字は把握していません。興味を引かれないので。私は霊的な指針を与えるだけです[442]

Q. あなたと統一教会のセキュリティーの堅さは歴然としています。異常とも取れるほどです。どうしてですか?

A. 私は命懸けの使命を遂行しています。私は共産主義者に命を狙われているし、危険な目には何度も合いました。私の運動が勢力を増すに従って、私の命を狙う組織的陰謀の可能性も増します。例えば、北朝鮮の金日成は、彼の革命戦略への第一の脅威は私であると公言しています。しかし、陰謀家たちは、私が何らかの理由で失敗したとしても、新たなレバレント・ムーンがたくさん現れるということを知らずにいます。神様の意思は続くのです[442]

Q. 他のキリスト教会から叙任されたことはありますか?

A. 歴史上の多くの預言者たちがそうであったように、私は神様に叙任されました。私は常に神様と対話しています。生ける神様が私とともにあるのです。これに勝る叙任はありません[442]

その他の活動

「赤旗」社会部は、アンケート[445]、戸別訪問等が最初の窓口である。統一教会である旨名乗らず、内容も明かさず、通りがかりの人に賛美のシャワーを浴びせて[445]「教養講座」「カルチャーセンター」「自己啓発」「無料映画会[445]」「マンガ研究会[445]」などとだましてビデオセンターに連れ込むと述べている。

「赤旗」社会部は、ビデオセンターで12巻のビデオ受講[446] の後、ツーデイズ修練会(2日間)[446]、ライフトレーニング(約2週間)[446]、フォーデイズ修練会(4日間)[446] と続くが、内容は「エバが淫行したことで人間はサタンの子孫であり、これを救える救い主は一人しかいない」という話が繰り返し教えられるだけで、結局「その救い主は誰か」は明らかにされない[446]。ライフトレーニングは長期にわたるため親に不審を抱かせる場合もあるが、説明する手引書も用意されている[296]。聖書の引用はされるが決して「聖書の何ページを開け」とは言わず、前後の文脈を無視した引用部分を読み上げるだけである、と述べている[447]

「赤旗」社会部は、「救世主が文鮮明である」旨明かされるのはフォーデイズの最後であると述べている[448]。また組織内での地位や入会歴で少しでも上位の者に対しては絶対服従を強いられ、同等の者同士で話してはいけないことになっており、それで不平不満が出るのを防いで統制を保っていると述べている[298]

宗教学者の櫻井義秀はその教説の特徴を簡単に言うと、「陰陽二元論による宇宙論やナショナリズム的歴史観に裏打ちされた、韓国に土着化されたキリスト教の一変種ということができよう」と述べている[303]

マスコミ報道


ジャーナリストの米本和宏は、新宗教の研究はマスコミ報道抜きにはできないが、統一教会はとりわけそうであると述べている[256]。1992年から始まった、芸能人の桜田淳子や新体操選手の山崎浩子などへの報道合戦は、当初の興味本位のゴシップとしての扱いから、激しい統一教会バッシングに変わり、1995年のオウム真理教の地下鉄サリン事件まで途切れることなく続いた[256]。米本は、思想家の吉本隆明や作家・「プレジデント」元編集長の諸井薫ら著名人らは、その異常なバッシングに疑問の声を上げていたが、歯牙にもかけられない雰囲気であったと述べている[256]。パラグアイの土地管理会社の社長であった教会員が2007年に身代金目的で誘拐された際には、当人がまだ解放されていない段階で週刊誌が「身から出たサビ」と報道し、統一教会は抗議文を送った[256]。米本は、バッシングのすさまじさを、戦後最も叩かれた宗教団体である創価学会の25年分に匹敵する記事量が、4年間で集中してなされたと表現している[256]。これら一連の報道で、統一教会は邪悪な集団というイメージが社会に定着した[256]

教団をめぐる裁判

統一教会に対して起こされた裁判は2006年6月現在、1986年の初の提訴以来、100件を越えており、このうち83件で和解。11件で統一教会側の責任を認める判決が最高裁で確定している。[要出典] 2016年5月に放送されたフジテレビの「みんなのニュース」の報道によれば、現在、統一教会が抱えている訴訟は3件である[要出典]

教団側勝訴の判例

統一教会信徒の拉致監禁問題の違法性
人身保護請求が認められた事例(実質的勝訴)
  • 統一教会信者(30歳男性)が拉致された上、精神病院に強制入院させられ改宗を強要された事件で人身保護請求訴訟により解放された事例[449][要出典]
  • 統一教会信者(26歳女性)が拉致された上、精神病院に強制入院させられ改宗を強要された事件で、高村正彦弁護士等による人身保護請求訴訟により解放された事例[450][要出典]
  • 統一教会信者(25歳女性、小学校教員)が拉致された上、精神病院に強制入院させられ改宗を強要された事件で、上野忠義弁護士等による人身保護請求訴訟により解放された事例[451][要出典]
強制改宗の違法性
2002年2月20日 統一教会の信者(31歳女性)に対して、信者の両親が信者を監禁、脱会を強要した事件において、「逮捕・監禁」は不法行為であり、脱会の説得に協力した牧師も連帯して責任を負うとの判決。被告は上告はせず判決が確定した。(広島高裁・宮本定雄裁判長)[要出典]
献金の正当性
2003年11月27日 名古屋高裁が統一教会の献金の正当性を認め、原告の献金返還請求を棄却。[要出典]
教団の関連する「天地正教」の導師部長を務めていた元信者が1000万円の献金について、「信者の因縁話によって畏怖して献金したもの」として、「天地正教」への貸付など、約3700万円の損害賠償を求めた事案。[要出典]
(2001年)2月28日、名古屋地裁は「自主的に献金した」「統一教会の信者等における脅迫等、違法な働きかけは認められない」として原告の訴えを退けた。1000万円という額についても「宗教活動として許された範囲を遥かに逸脱した違法なものとまでは言えない」と判断した。原告が控訴した名古屋高裁も一審判決を支持。2004年10月22日、最高裁への上告も棄却され、統一教会側が全面勝訴した。[要出典]

教団側敗訴の判例

献金勧誘行為の違法性
1993年(平成5年)5月27日福岡地方裁判所での判例
統一教会の「霊感商法」に対する損害賠償請求訴訟で、全国で初めて統一教会の関与と賠償責任を認め、3670万円の支払いを命じる判決が出た。信者らは2人の未亡人に対し、亡くなった夫に関して、先祖の因縁話で、不安を煽り、執拗に迫って高額の献金をさせたり、弥勒像等を購入させた。福岡地裁は「献金勧誘行為は、布教活動の一環として行われたものであったとしても、その目的、方法、結果において到底社会的に相当な行為であるということはできず、違法であり、民法709条の不法行為に該当する」、「信者らと教団は実質的な指揮監督関係にあり、信者が献金勧誘行為が教団の教義である万物復帰の実践として理解していたことや献金がいずれも教団に帰属していることなどからみて、原告らに対して不法行為責任を負う」と判断し、教団に使用者責任を認め、献金相当額と慰謝料の支払いを命じた[452]
2002年(平成14年)10月28日、新潟地方裁判所での判例
元信者が、教団による違法な入信勧誘・教化行為によって損害を受けたとして、不法行為に基づく損害賠償を教団に求めた事案で、裁判所は「信者らもしくは信徒会の伝道・経済行為は、被告(統一教会)が経済的な利益を追求するという目的のもとになされ」「信者らが、文鮮明の配下というべき教団の幹部らの意を受けてその指揮・命令の下に実行された結果と認められ、(中略)原告らに対する、法人としての教団自身の故意に基づく違法行為であると評価することができる。」として民法709条に基づいて、その違法行為による損害を賠償する責任を負うと判断された[453]
1997年(平成9年)4月16日、奈良地方裁判所での判例
信者らの違法な献金勧誘行為により、原告らが損害を被ったとして、教団に対して、民法709条又は715条に基づき損害賠償を請求した事案で、裁判所は教団の献金勧誘のシステムの特徴として、[要出典]
  1. 「万物復帰の教えの下、個々の対象者からその保有財産の大部分を供出させ、被告全体としても多額の資金を集めることを目的とするものである」、[要出典]
  2. 「対象者がある一定レベルに達成するまで、被告の万物復帰の教えはもちろんのこと、被告や文鮮明のことを秘匿あるいは明確に否定したまま、対象者の悩みに応じた因縁話等をして不安感を生じさせあるいは助長させる方法をとっている」[要出典]
  3. 「各種マニュアル等により勧誘方法が全国的に共通していて、組織的に行われている」[要出典]
教団への入会ないしは献金等については「入会ないしは献金等をしようとする者の判断に影響を及ぼすこととなる重要なものにつき、不実のことを告げ、また、被告への入会ないしは献金等をさせるため、対象者を威迫して困惑させるものであり、方法として不公正なもの」と判断し、教団の献金勧誘のシステムは、「不公正な方法を用い、教化の過程を経てその批判力を衰退させて献金させるものといわざるを得ず、違法と評価するのが相当である。」として教団に原告2人に対する損害賠償を命じた(平成9年(1997年)4月16日判決言渡 平成9年4月16日判決原本交付 裁判所書記官 平成6年(1994年)●第二〇七号 損害賠償請求事件)[454]
2020年(令和2年)2月28日東京地方裁判所での判例
信者から違法な勧誘を受けて多額の献金をさせられたとして、東京都に住む元信者の60代女性が約520万円の損害賠償を求めた訴訟の判決で、東京地裁は家庭連合と信者に約470万円を支払うよう命じた。判決では「女性は信者から、亡くなった夫や長男が地獄で苦しんでいるとの不安や恐怖心をあおられ続けており、献金の要求は社会的に相当な範囲を逸脱した違法な行為だ」と指摘し、家庭連合には信者の使用者責任があるとした[455]
準禁治産者申し立て事件
教団に献金を続ける信者に対し、親族が家庭裁判所に準禁治産者、保佐人選任の申し立てを行い、審判前に保全処分が認められた事例がある[456][457]。しかし、2000年4月の「禁治産・準禁治産制度」から成年後見制度への制度変更により、準禁治産の事由に含まれていた「浪費者」を制度の対象から除外したため、このような申し立てはできなくなった。[要出典]
伝道に関する違法性(青春を返せ裁判
損害については「過酷な経済活動や伝道活動に従事して労役の提供を余儀なくされ、さらに、献身するために勤務先の会社をやめることを余儀なくされるなど献身期間中、従前の人間関係や社会生活等を破壊された。」「文鮮明の選んだ相対者を断ると、自己や先祖の救いの道が閉ざされ、病気や怪我をしたり又は死んだりすることになるとか、死後地獄に行くことになるなどと思って苦悩し、相当の精神的苦痛を被った。」などとして、教団に対し原告の3人に対する慰謝料の支払いを命じた。被告の高裁への控訴、最高裁への上告はいずれも棄却された(平成14年(2002年)8月21日判決言渡 同日原本領収 裁判所書記官 平成11年(1999年)(ワ)第18400号 平成15年(2003年)5月13日口頭弁論終結)(平成15年(オ)第1770号 平成15年(受)第1880号)。
婚姻の無効性
1993年10月7日 福岡地裁で、統一教会の合同結婚式に参加し、教会の指示により婚姻届をした日本人女性が婚姻意思の不存在を理由とした日本人男性との婚姻の無効の訴えが認められた。信者の福岡高裁への控訴・最高裁への上告ともに棄却(1995年10月31日1996年4月25日[458][459]
その他
  • 強制改宗をめぐる記事の信憑性
  • 統一教会の現役信者夫婦が、日本人妻の両親と説得に関わった牧師に対し、人格権に基づき、拉致監禁、棄教強要などの差し止めと、牧師に対し約1330万円の損害賠償を求めた訴訟。

和解の事例

統一教会の信者である夫婦が自分達を連れ去り、脱会の説得を行った親、次女、親族、牧師らの8名を被告として、自分達の意思に反する違法な拉致、監禁及び教団からの脱会の強要等の共同不法行為に基づく差止請求及び損害賠償請求を求めた事案。
2004年1月23日 横浜地裁は原告の請求を棄却した。横浜地裁は、「両親の行為が原告の意思に反する、違法な、拉致、監禁及び統一教会からの脱会の強要とまで認めることはできない」「両親による暴行の事実があったと認めることはできない」と判断し、両親に協力した牧師の行為についても「牧師らの指示、指導があったとは言えない」「統一教会からの脱会の強要にあたらない」とし、原告の請求を棄却した [4]
請求額以上を返金する事で和解した事案
“因縁話”により2億1千万を献金、画や宝石など1千万円分を購入させられたとして千葉県の女性が、賠償を求めたことに対し、教団側は1億3千万での和解案を提示。交渉が進展しないため、所管庁たる文部科学省をも共同被告とした訴状を送付したところ、2008年3月に2億3千万円の和解案が提示され、和解が成立した[460]。実損額を超える和解は極めて異例である[461]
アメリカにおいて、不当な勧誘(伝道の初期段階に教団の名前を正式に述べなかった「不実表示による詐欺」)、洗脳、虚偽の監禁などを理由として2人の元教会員が訴えた民事訴訟。
1審、2審は「訴訟自体が法廷を宗教問題に踏み込ませるものだ」として原告の訴えを棄却したが、カリフォルニア州最高裁は教団の名前を隠した伝道は「聖なる詐欺」(Heavenly deception )と呼ばれる、教団の教義に基づく宗教行為であるが、市民が騙され、強制的説得による不利な環境に服従することから保護するという州の利益のために、教団の活動に制限を加えることは憲法上認められるとして、1、2審の略式判決を破棄し、陪審員による事実審理をするようにと差し戻した。結果的に教会と原告は和解したが、「信教の自由」があっても、伝道の方法によっては詐欺にもなり得る場合があることを示唆したものとなった(モルコ・リール事件 1998年10月27日 カリフォルニア最高裁)[462][463][464][465][466][467]

他の宗教・教団との関係

立正佼成会

1963年、当時の庭野日敬会長が青年部員を統一教会の修錬会に参加させた結果、次期会長候補とされていた久保木修己を初めとする50名ほどの会員が統一教会に転じた[359]

生長の家

1970年安保闘争の時代に、互いの集会に参加したりするような関係であり、谷口雅春は「勝共連合は朝鮮の文鮮明と称する予言者を八紘一宇の世界の中心者とする運動だったので私たちは今まで協力できなかったが、(中略)日本中心の運動にすることが出来れば協力してもよいのである」と述べている[468]

ダミー団体

それぞれ別組織であり、友好団体だと公言しているが、同一の創設者によって作られ、日本支部では同一の建物で同一のスタッフが運営する組織である

[469]

  • 5F
    • 天宙平和連合(UPF)日本事務局
    • 平和大使協議会
    • 平和外交フォーラム
    • ピース・メディア・フォーラム(PMF)
  • 4F
    • 真の家庭運動推進協議会
    • PLA-Japan事務局
    • 統一思想研究院
    • 一般財団法人国際ハイウェイ財団
    • 国際ハイウェイ建設事業団
    • 世界平和宗教連合
    • 国際宗教自由連合
    • 世界平和島嶼国家連合
    • 宗教新聞社
    • 東京同胞教会(事務局)
  • 3F
    • 東京同胞教会
  • 2F
    • 世界平和教授アカデミー
    • 一般社団法人平和政策研究所(分室)
    • アジアと日本の平和と安全を守る全国フォーラム
    • 世界平和統一家庭連合
    • 平和統一聯合
    • 天一國歌舞連合
    • 在日平和統一祝福家庭婦人会
    • 世界圓和道連盟日本本部
    • 世界平和青年連合(YFWP)
    • 日韓トンネル推進全国会議
    • 東西南北統一運動国民連合
  • 1F
    • セミナールーム
    • 受付

田中富広会長は「私たちの“友好団体”が主催する行事に、安倍元総理がメッセージ等を送られたことはございます。当法人と友好団体の区別がついていなかったのではないか。どちらも創設者が一緒なので、すべてが同じに見えていたのかなと」と無関係を主張した[470]



セクトまたはカルトと分類された例

統一教会は、いくつかの政府によって、セクトまたはカルトと分類されている。例として以下の政府・議会報告が挙げられる。

関係人物

日本の政治家


その他

反対派








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