金正男事件-1



2020.11.18-産経新聞 THE SANKEI NEWS-https://www.sankei.com/world/news/201118/wor2011180013-n1.html
正男氏息子、オランダ亡命に同意 高級ブランド身に着け

  ソウル=桜井紀雄】米誌ニューヨーカーは18日までに、北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長の異母兄、金正男(ジョンナム)氏2017年2月に殺害された事件後、息子の金ハンソル氏一家を中国・マカオから救出した反正恩体制組織「自由朝鮮」のリーダーらの証言を掲載した。ハンソル氏は当初、オランダで難民申請する意向を示したが、米中央情報局(CIA)の要員に連れ出されたとみられるという。

  「自由朝鮮」リーダーでメキシコ国籍を持つ韓国系のアドリアン・ホン・チャン氏らが韓国系作家のインタビューに応じた。ホン・チャン氏がハンソル氏とパリで初対面したのは13年ごろ。高級ブランドの靴を履いた姿から「こんな金持ちの子は初めて見た。正男氏はどれほどの金を隠していたのか」と感じたという。
  正男氏殺害の翌日、ハンソル氏から「私と母、妹はすぐマカオから逃げなければならない」と救助を求める電話があった。警護してきた警察が消えたという
  組織の別のメンバーが台湾の空港でハンソル氏一家と合流したところ、CIAだと名乗る男性2人が面談を求め、一家のオランダ行きに同行すると告げた。ホン・チャン氏は待っていたオランダで一家と会えなかったという。インタビューした作家はCIAが連れ出したとの見方を伝えた。
  韓国の脱北者団体代表は、18年に米国で会ったホン・チャン氏からハンソル氏一家が「首都ワシントン近くの州で暮らしている」と聞いたと説明していた。


2019.6,11-産経新聞-https://www.sankei.com/world/news/190611/wor1906110014-n1.html
金正男氏はCIAの情報提供者 マレーシアでCIAと接触 米紙報道

【ワシントン=黒瀬悦成】米紙ウォールストリート・ジャーナル(電子版)は10日、北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長の異母兄で2017年2月にマレーシアで暗殺された金正男氏が米中央情報局(CIA)の情報提供者だったと報じた。関係筋によると、金正男氏はCIA工作員と複数回接触しており、双方には「つながりがあった」としている。 関係筋によると、正男氏がマレーシアを訪れた目的の一つはCIAの連絡係と接触することだったとみられるが、別の目的もあった可能性があるとしている。

 暗殺事件の公判では、正男氏が事件の数日前にマレーシアのランカウィ島で韓国系米国人と接触したことが捜査員の証言で判明しているが、この米国人の正体は判明していない。 関係筋はまた、正男氏がマカオに滞在することが多かったことから、中国など他国の治安機関と接触していたのはほぼ確実だとしている。

 CIAが正男氏に接触したのは北朝鮮情報の収集が目的だったとみられる。ただ、複数の元米政府高官は同紙に、同氏は北朝鮮を長らく離れており、確認された権力基盤も存在しなかったことから、北朝鮮の詳細な内情を提供できたとは思えないと指摘した。

 米当局者や専門家は、金正恩体制が崩壊の危機に陥った場合、正男氏が後継候補になり得るとの見方が中国など諸外国の間で出ていると指摘していた。しかし、複数の元米政府高官が同紙に語ったところでは、米情報機関は正男氏が後継候補に適任でないと結論づけたという。

 正男氏はクアラルンプール国際空港で、猛毒の神経剤VXを顔面に塗られ、間もなく死亡。暗殺を主導したとみられる北朝鮮国籍の男4人は逃亡し、北朝鮮に戻ったとみられている。


2019.5.16-産経新聞-https://www.sankei.com/world/news/190516/wor1905160003-n1.html
金正男氏、殺害前に亡命政府首班の打診断る「静かに暮らしたい」 関係者が証言

【ソウル=桜井紀雄】北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長の異母兄で2017年にマレーシアで殺害された金正男(キム・ジョンナム)氏が生前、
 正恩体制に替わる亡命政府の首班を打診され、「静かに暮らしたい」と断っていたことが15日分かった。打診したのは、正恩体制打倒を目指す
    組織「自由朝鮮」のリーダー格で、正男氏の息子の金ハンソル氏らの保護や在スペイン北朝鮮大使館襲撃を実行したという人物。ハンソル氏については
    「米ワシントン郊外で暮らしている」と説明したという。
 この人物は、大使館襲撃でスペイン当局が国際手配しているメキシコ国籍で韓国系のアドリアン・ホン・チャン容疑者(35)。北朝鮮の民主化や脱北者支援活動
    をともにした経験のある韓国の脱北者団体「北朝鮮人権団体総連合」の朴相学(パク・サンハク)常任代表が、ホン・チャン容疑者から直接経緯を聞いた
    として産経新聞の取材に明らかにした。
  ホン・チャン容疑者は米国で北朝鮮の人権問題に取り組む市民団体代表として活動していた08年ごろ、北朝鮮から韓国に亡命した黄長●(=火へんに華)
    (ファン・ジャンヨプ)元朝鮮労働党書記に朴氏と3人で会った際、亡命政府の「主席に就くよう」要請したが、強く拒まれた。それから約6年後には、
    正男氏にも直接会って亡命政府の「首班になるよう」打診したが、「そんなことはやらない」と断られたと朴氏に説明した。
 北朝鮮で金日成(キム・イルソン)主席の息子や孫は「白頭(ペクトゥ)の血統」として神聖視されていることから脱北者らの結束の柱に据えようとしたとみられる。
    正男氏は、西側情報機関の要員らしき人物との接触を北朝鮮当局に捕捉されたことが殺害要因の一つになったと指摘されている。
 殺害事件翌月の17年3月には「自由朝鮮」の前身組織「千里馬民防衛」がホームページでハンソル氏のビデオメッセージを公開し、正男氏の家族を
    中国・マカオから安全な場所に移したと表明した。
 朴氏は昨年6月に米当局の招請による講演のために訪米した際、ホン・チャン容疑者に声を掛けられた。容疑者は、ハンソル氏について「彼の母と妹と一緒に
    シンガポールとオランダを経由して連れてきた。私が最初から最後まで付き添った」と説明。「ワシントンから最も近い州に暮らしている」ともし、4、5日
    あれば会えるとも告げられたが、日程が合わずに面会は実現しなかったという。
 ハンソル氏は朝鮮語が流暢(りゅうちょう)でなく、主に英語でやり取り。米連邦捜査局(FBI)の保護下で暮らし、ひそかに米大学に通っているとも聞いた
    としている。
自由朝鮮
 北朝鮮の金正恩体制打倒を掲げる反体制派組織。3月1日、ホームページ上で「臨時政府」の樹立を宣言した。2月の在スペイン北朝鮮大使館襲撃事件
    への関与を認めており、米当局は実行グループの1人を逮捕した。以前は「千里馬民防衛」を名乗り、正恩氏の異母兄、金正男氏が2017年に殺害
    された直後には、息子のハンソル氏の動画を投稿。ハンソル氏ら家族を安全な場所に移したと表明した。


2019年5月3日-朝日新聞(https://www.asahi.com/articles/ASM530C8MM52UHBI02B.html)
金正男氏殺害事件、実行役ベトナム人女性が出所 帰国へ

北朝鮮の金正恩(キムジョンウン)朝鮮労働党委員長の異母兄、金正男(キムジョンナム)氏が2017年にマレーシアで殺害された事件で、正男氏に
     毒を塗ったとして有罪判決を受けた実行役のベトナム人、ドアン・ティ・フォン元受刑者(30)が3日午前、マレーシアの刑務所から刑期を終えて
     出所した。同日午後にもベトナムに帰る見通し
  指示役の北朝鮮の男らが国外に逃れる中、残された実行役のフォン元受刑者だけが刑事罰を受けていた。フォン元受刑者の出所により、
     世界を揺るがせた事件は発生から約2年2カ月を経て、全ての手続きを終えた。 
  フォン元受刑者は2017年2月、マレーシアの空港で正男氏の顔に猛毒VXを含む液体を塗ったとして殺人罪で逮捕された。「北朝鮮の男にだまされた」
     「いたずら番組の撮影だと思っていた」と無罪を主張したが、裁判所は殺意を認定。殺人罪が確定すれば死刑の可能性があった。 
     ところが、裁判所は今年4月1日、審理を大幅に端折り、殺人罪から刑の軽い「危険な凶器で傷害を負わせた罪」に変更して禁錮3年4カ月の
     判決を下した。背景にはベトナム政府からの働きかけがあったとされる。逮捕後の勾留期間が差し引かれ、入所から約1カ月で刑期を終えた。
     弁護士などによると、フォン元受刑者は3日午後の飛行機でハノイに移動し、家族と再会する予定だという。
  (クアラルンプール=乗京真知、ハノイ=鈴木暁子)

金正男
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』


金 正男(キム・ジョンナム、1971年5月10日 - 2017年2月13日[6][7])は朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)第2代最高指導者・金正日労働党総書記長男かつ
     第3代最高指導者・金正恩労働党委員長の異母兄。北朝鮮の元政治家。
出生
1971年5月10日、北朝鮮の初代最高指導者・金日成の息子である金正日を父に、成蕙琳を母に平壌で生まれる。出生当初、父・正日は正男の存在が外部、
     とりわけ、蕙琳との結婚に反対していた祖父の日成に漏れないように努めていた。しかし、後に日成も娘の金敬姫張成沢夫妻のとりなしを受けて
     初孫である正男の存在を認め、活動に専念する正日に代わって可愛がるようになったとされ[8]1994年に訪朝した
     ジミー・カーターアメリカ合衆国大統領にも「自分が一番愛する孫」と紹介してる[9][8]。対照的に父・正日と後妻の高英姫の間に新たに生まれた孫の
     金正恩金正哲を祖父・日成は孫として認めなかったされ[9][10][11]、金敬姫・張成沢夫妻によって面会もできなかったとされる[12]。異母兄弟の金正恩
     らは平壌から離れた元山市で生活しており、誕生日を祖父・日成から直接祝福された金正男は謂わば「皇太子」の地位を確定したと当局からみなされて
     いたとされる[13]。金正男の誕生日は豪勢に祝われ、毎年の誕生日プレゼントに100万米ドル(日本円で1億円相当)が費やされたとされる[14]
  12歳から14歳まではソビエト連邦の首都モスクワで生活していたという[15]1981年からスイスベルンにあるインターナショナルスクールに留学した後、
     1980年代後半にジュネーブ大学に入学したという[16]。この際にコンピュータに触れて関心を持ったとされる[17]1995年からは中華人民共和国
     首都北京でも暮らし始め、上海の経済発展ぶりを見て北朝鮮の改革開放を志すようになる[18]
  母国語の朝鮮語の他に英語フランス語(それぞれ2007年2月12日2007年11月13日フジテレビFNNスーパーニュースで記者とのやり取りが報道
     された)を話し、またロシア語中国語広東語)もある程度話せるようである。日本語については、日本人記者の「日本語は分かりますか?」という
     朝鮮語の質問に、日本語で「日本語ワカリマセン」と答えている[19]
職務と生活
1988年
に17歳[20]でコンピュータ委員会委員長に就任して北朝鮮のIT政策の最高責任者となり[17]朝鮮コンピューターセンター(KCC)を設立させ[21][16][22][23]
     北朝鮮サイバー軍を育成する金策工業総合大学や金日成総合大学などでプログラミングを直接監督して[22]、軍の地下光ファイバーケーブルなど
     北朝鮮のITインフラの整備に関わったとされる[24]
  1995年には朝鮮人民軍の大将となり[25]1996年に新設された秘密警察朝鮮人民軍保衛司令部の責任者になったとされる[26]投資家死の商人
     という実業家の一面も持ち、スカッドS-16などの武器を輸出して得た元手で株式不動産に投資して、マカオスイス香港・日本・シンガポール
     イギリスなど、銀行にある保衛司令部の秘密資金を管理し[27][24][25]朝鮮労働党39号室の責任者でもあったという[28][23]。また、 金一族の秘密口座
     の管理も担当していたとも報じられている[29]1990年代から毎晩平壌高麗ホテルメルセデス・ベンツで乗り付けて豪遊していたとされ、
     一晩で10万米ドルを浪費することもあったという証言もある[13]
  2000年6月の父・正日と金大中大統領南北首脳会談の前に現代グループが行ったとされる5億ドルや4億ドルとも言われる巨額の対北送金は経由地の
     マカオで秘密資金を管理していた金正男の手にも渡ったとされる[30][31]
  2001年1月に父・正日が訪中した際の上海市のIT技術視察にも同行し[17][32]、父・正日は江沢民中国共産党総書記との会談で摩天楼が並び立つ上海の
     経済発展を「上海は天地開闢した。改革開放が中国の経済発展に重要な役割をしたことが十分に証明された」と絶賛して改革開放に意欲を
     見せた[33][34][35]。この時、金正男は江沢民の長男である江綿恒と会談して太子党と親交を結んだとされる[36][37]。しかし、金正男によれば父・正日
     の改革開放への警戒心は変わらなかったとされる[38]
  2007年1月30日に在香港の複数の情報筋が、金正男と思われる男が、中国の特別行政区であるマカオ入りしたことを明らかにした。アメリカ合衆国の北朝鮮
     に対する金融制裁により、マカオの金融機関「バンコ・デルタ・アジア (BDA)」にあった約2400万ドルに上る北朝鮮関連口座が凍結されており、
     中朝関係筋は、北京で同日始まった金融制裁問題に関する米朝専門家会合に関連して、正男がマカオ入りした可能性を指摘している。なお、
     エレベーター内の取材で「日本の拉致問題」の事を話すとノーコメントだった。同年8月27日大韓民国の「朝鮮日報」は、正男が2007年6月帰国し、
     以前父親の金正日が所属していた朝鮮労働党組織指導部に所属していると報道した。なお、同時に日本や韓国のメディアで、「金正男とその家族が
     マカオ市内に住居を構え長期間滞在し、マンダリン・オリエンタルホテルなどでヨーロッパの高級ブランド品などのショッピングを楽しんでいる」
     と報道された。
  2011年当時はマカオに滞在して活動していたとされる。金正日の長男という立場でありながら、後継者問題(後述)を巡り、北朝鮮の政治体制を揺るがしかね
     ない批判、あるいは意見を広く西側に向けて発信していたことから、軍部を中心に北朝鮮側にとって疎まれる存在であるとみられた。2011年時点では
     父親である正日への接触はもちろん、公式非公式問わず北朝鮮への入国や北朝鮮指導部とも接触が報道されたことはない。同年12月17日
     正日の死去においても、テレビで初めて知らされたことが伝えられている。しかし正男は直後に「金哲(キム・チョル)」という名義のパスポートを使い、
     平壌直行便のある北京経由ルートを避けて本国に帰国、正日の霊前との対面を果たし、後継指導者である金正恩を含む家族とともに別れを告げた
     とみられる。数日後にはマカオに戻った[39]。なお、公式な葬儀への参列は確認されていない[40]
  その後、ロシアメディアなどが、正男の妻や子供は中華人民共和国の支援により、マカオ市内の高級マンションに住み、正男本人は北朝鮮支援による
     ホテル住まいであることなどが伝えられていたが、北朝鮮本国で金正恩体制が確立された2012年に入り、ホテルの1万5000ドルの宿泊代を払えずに
     退去し、これは北朝鮮側からの送金停止によるものではないかと伝えられた[15]。さらに、4月22日に、朝鮮労働党書記の金永日北京市戴秉国
     会談した中で、マカオに住む正男の身柄引き渡しを要求し、中華人民共和国側が拒否したと伝えられた[41][リンク切れ]。これは朝鮮半島で有事が起きた
     際に、かつて北京に亡命したカンボジア国王ノロドム・シハヌークを保護した理由と同様に正男を擁立して北朝鮮に傀儡政権を樹立する手段
     (羈縻政策)を保持するためと言われている[42]。韓国メディアは正男が中国の太子党と強い繋がりを有していることから庇護を受けていると報じた[43]
暗殺実行
2017年
2月13日午前9時頃(日本時間同10時)に、「キム・チョル(Kim Chol)1970年6月10日平壌生まれ」という、北朝鮮国籍パスポートを持つ男性が
     クアラルンプール国際空港で、マカオへの出国手続きのためにエアアジアの自動チェックイン機を操作している最中に、ベトナム人とインドネシア人の
     女性2人が突然襲いかかり逃げ去った[44][45]。直後に襲われた男性は体調不良に陥り、空港内の医務室から近くのプトラジャヤの病院への搬送中に
     急死した[45][46]。翌14日に、マレーシア政府が金正男の死亡を発表し、複数の韓国メディアが、「キム・チョル」名義の偽造パスポートを所有した金正男
     が女2人に殺害され、実行犯がタクシーで逃走したことを報じた[44][6][47][48]
  マレーシアの華字紙「東方日報」によると、逮捕されたベトナム国籍の女が「1人がハンカチで顔を押さえ、もう1人が顔にスプレーを吹きかけた」と供述していた
     という[45]。マレーシア政府が死体の指紋照会を14日に行なったので、韓国側が以前採取した金正男の指紋と、死体の指紋を照合すると「指紋が同一」
     として「死亡した人物は金正男氏」と断定した[7][49][50]
  一方、北朝鮮当局は2月23日朝鮮法律家委員会名義で「わが共和国公民」の死因は「ショック状態」であるとの談話を発表した。その上で「誰それによる」[51]

  暗殺説は「(「南朝鮮[52]大統領の)朴槿恵逆徒」の陰謀と発表した。また、死者は外交パスポートを所持しており、治外法権の対象であるから、
     マレーシア側が遺体解剖を行うことは「わが共和国の自主権に対する露骨な侵害、人権に対する乱暴な蹂躙」と外交特権を主張した。しかし北朝鮮は
     「共和国公民」が何者か?については、一切触れなかった[53][54]。しかしマレーシア警察は、2月24日に冷凍保存していた遺体を解剖して「殺害に使用
     されたのは、致死性があるVXガス」と断定した[55]
遺体引き渡し
2017年3月30日朝鮮中央通信で、北朝鮮とマレーシアの間で遺体の引渡しや、出国禁止の解除、ビザなし渡航制度の再導入への協議開始などを行うとの
     共同声明が出されたと伝えられた[56]。翌31日、陸慷中華人民共和国外交部報道局長により、遺体が北朝鮮に到着したことが発表された。
     また同日北朝鮮籍の被疑者が中国国際航空で帰国し、北朝鮮で事実上の人質となっていたマレーシア人9名もマレーシアに戻った[57]
暗殺犯と司法手続
事件後、実行犯であるベトナム国籍とインドネシア国籍の2人の女性と、マレーシア在住の北朝鮮国籍がマレーシアの警察に逮捕された。
  ベトナム国籍とインドネシア国籍の2人の女性は殺人罪で起訴されたが、両被告の弁護団によると2人は北朝鮮の工作員にだまされて事件前の数日間複数
     の空港やホテルやショッピングモールでテレビ番組の企画としていたずらにより報酬を得ており、クアラルンプール国際空港での行為も同様のいた
     ずらと思い込んで実行に及んだと主張している[46]。両被告のうちインドネシア国籍の女性被告については2019年3月11日に起訴が取り下げられて
     釈放された[46]。起訴が取り下げられた理由について公式発表はないが証拠不十分だったのではないかと報じられている[46]。一方のベトナム国籍の
     女性被告についても検察当局は訴因を殺人罪から「危険な武器などを使った傷害罪」に変更した[58]。このベトナム国籍の女性被告は起訴内容を認め、
     2019年3月にマレーシアの高等裁判所は禁錮3年4月を言い渡した[58]。北朝鮮当局は事件への関与を一切否定している[46]。一方、マレーシア当局は
     事件当日にマレーシアを出国した北朝鮮国籍の男4人が事件に関与したと反論している[46]。2人の女性に指示や訓練を行うなど、事件の中心的役割
     を果たしたのは、毒殺専門たる朝鮮人民軍偵察総局19課と見られている[59]。これら北朝鮮籍容疑者4名に関しては、事件後、搭乗したと見られる
     高麗航空JS272便が、ジャカルタドバイモスクワウラジオストクを経て、北朝鮮に入国すると思った韓国情報当局が、ロシア連邦政府に抑留要請
     したが、ロシア政府は受容せず出国を容認している[60]。マレーシア当局は4人を国際刑事警察機構を通じて国際手配している[46]
暗殺原因
金正男は暗殺直前に、アメリカ情報機関の関係者と接触して、アメリカ合衆国連邦政府から資金援助も受けていたという報道もされており[61]、マレーシア警察
     の捜査関係者も金正男は暗殺の4日前に米国人と接触していたことを裁判で証言している[62]。事件後に金正男の長男の金漢率を保護した組織とされる
     千里馬民間防衛(チョルリマみんかんぼうえい、朝: 천리마 민방위/千里馬民防衛〈チョルリマ・ミンバンウィ〉、: Cheollima Civil Defense)は「金正男
     の家族の人道的避難を支援した米国政府、中国政府、オランダ政府、匿名の政府に感謝する」と発表している[63]。暗殺の理由は脱北者亡命政府
     構想と関係を持ったこととする見方もされている[64][65]2017年11月20日ドナルド・トランプ米大統領は理由に金正男殺害の事件を示唆して北朝鮮を      テロ支援国家に再指定し[66]2018年3月6日にはアメリカ政府は金正男の事件についてVXガスによる北朝鮮の暗殺と結論して追加制裁を発表した[67]
  韓国の情報機関である国家情報院は、金正恩は5年前から正男の殺害を計画しており、暗殺の理由は金正恩の「偏執的な性格による」とした[68]。また、
     中国は太子党とパイプを持つ金正男を北朝鮮の最高指導者に担ぐ狙いがあったと分析した[69]
  暗殺から1周年となる2018年2月13日、NHKが中国の政府関係者から取材で得た情報として、張成沢の処刑とその後の正男の暗殺の原因は、
     元中国共産党中央政治局常務委員周永康が、張成沢が正男を後継にしようとしているという情報を金正恩に密告したことにあると報じた。
     これによると、2012年8月に北京で張と胡錦涛国家主席の会談が行われたが、この際、周永康が部下を使った盗聴により、張成沢が胡錦涛に金正男
     を後継者に就けようと思っていると発言したことを掴んだ。2013年初頭に周永康がこの情報を金正恩に密告したことで金正恩の逆鱗に触れ、その後の
     張成沢の処刑と正男の暗殺につながったという。その後、周永康は国家機密漏洩罪と汚職で無期懲役の判決を受けたが、機密漏洩は本件の
     事であったとされる。密告した理由については、周永康はこの時汚職容疑で捜査を受けており、金正恩が後継者指名を得た2010年に
     金正日・金正恩親子と肩を並べた唯一の外国人[70]という緊密ぶりを内外に示していた北朝鮮とのパイプを利用することで中国指導部の動きを
     けん制しようとしたのではないかと推測されている[71]。一方、中華人民共和国外交部はこの報道を「でたらめ」と記者会見で否定した[72]
  同時期、NNNがマレーシア警察の捜査関係者と捜査資料から得た情報として、暗殺直前の正男はマレーシアのランカウイ島CIA関係者と接触していたと
     報じた[73]。また、日本円で1300万円相当の米ドルの授受もあったとされる[73]
  また、2018年2月14日付の朝日新聞は正男はマスコミを避けるためにシンガポールの代わりにマレーシアに滞在するようになってアメリカ情報機関の関係者
     と半年に1度は会っており、暗殺前の2017年1月26日にマカオで会った友人の話として正男が「米国のカジノ関係者」なるトランプ米大統領の密使と
     接触していたことを認めていたと報じた[74]








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