インドネシア問題-1



2021.09.30-Yahoo!Japanニュース(JB Press)-https://news.yahoo.co.jp/articles/b626289f91afa9b2ea09e1a0d893e87629a4ed73
中国にさらわれたインドネシア高速鉄道プロジェクトはいま…
塚田 俊三
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  インドネシアの首都ジャカルタと第三の都市バンドンとを結ぶ高速鉄道プロジェクトは、ご承知の通り、日本が先行して準備を進めいていたにも拘わらず、途中から中国が参戦し、最終的には、中国側に契約を奪われた。日本にとっては苦々しい思いが残るプロジェクトである。

  2015年9月に中国に発注され、今月でちょうど6年になるそのプロジェクトは、現在どのような状態にあるのだろうか?  残念ながらそれは、中国の当初の売り込み時点での提案からかけ離れたものとなっている。当初、2019年には操業開始としていたが、プロジェクトは、操業どころか、今もなお工事中である。プロジェクトコストに至っては、その総額は大きく膨れ上がり、当初の予定価格を4割も上回るとされている*1 。
  着工当時は大きな脚光を浴びて登場したプロジェクトが、今どうしてこのような残念な状況に陥っているのであろうか?  事業者側(中国側)に非があったからなのか?
  あるいは、発注者側(インドネシア側)に十分なプロジェクト実施能力がなかったからなのか?
  本稿においては、これまでの経緯を詳しくレヴューするとともに、その契約の裏に隠された構造を明らかにすることにより、これらの問いに答えてみたい。
   (TEMMPO.CO. Jakarta, 2021年9月1日及びVOI, 2021年9月2日)
■ 初めから疑問視されていたプロジェクトの経済性
   上記のプロジェクトの構想は、突然浮かび上がったものではなかった。当初は、インドネシアの二大都市であるジャカルタとスラバヤとを高速鉄道で結ぶとする構想であった。だが、実際にこれら2つの都市を結ぶとなると、730kmもの鉄道路線を建設する必要があり(東京―広島間に匹敵する距離)、その投資額は巨額となり、インドネシアの当時の財政事情からみて、到底取り上げられるようなプロジェクトではなかった
   しかし、このプロジェクトに対する地元政財界の関心は高く、その推進派は、代替案として、プロジェクトを二期に分け、第一期でジャカルタとバンドンを結び、第二期でスラバヤまで延伸するという案を出してきた。一見すると現実的な案に見えるが、これは当初案以上に難しいプロジェクトであった。
   というのも、ジャカルタ―バンドン間はわずか142kmしかなく、日本でいえば、東京―静岡間に当たり、高速鉄道を走らせるにはいかにも中途半端な距離であった。加えて、バンドンは標高700mの高地にあり、これを沿岸都市であるジャカルタから結ぶとなると大変な勾配を車両が駆け上らなければならない。更に、数多くのトンネル(13カ所)を建設する必要があった。また、一部経路は、人口集積地を通ることから、路線全体の4割弱は高架に、1割は地下に路線を建設する必要があり、建設コストは並外れて高いものになると予想された
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  JICAが2012年に行ったフィージビリティスタディ(F/S調査)でも、建設費の半分は政府が出さなければ採算は取れないとしていた。
■ 日中の受注合戦
  では、このように採算がとれそうもないプロジェクトが、どうして、国の最優先プロジェクトにまで伸し上がったのであろうか?
  それは、このプロジェクトがインフラ開発を最優先に掲げる3人の有力政治家の着目するところとなり、それ以来、このプロジェクトは、経済ベースでというよりは、むしろ政治家ベースで議論が進められるようになったからである。
   1人目は日本の安倍晋三首相(当時)だ。2012年末に発足した第二次安倍政権は、海外インフラの開発をその優先課題として取り上げ、中でも、日本技術の粋ともいえる新幹線技術の輸出には格段の力を入れた

   他方、中国の習近平総書記は2013年に一帯一路構想を打ち出し、その拡大を、海外進出政策の核として推進していた。中でも、新幹線技術については、日本に劣らぬ高い技術を有することを世界に誇示したいと考えていた彼が2人目の政治家だ。

   3人目はもちろんインドネシアのジョコ・ウィドド大統領である。2014年10月に大統領に就任したジョコ氏は、就任早々、インフラ・プランを打ち出し、これを政権の最優先施策とするとした。同大統領は、当初は、ジャカルタとバンドンとを結ぶ高速鉄道プロジェクトはコストがかかりすぎるとして懐疑的に見ていたが、途中で、「日中間の競争をうまく利用すれば、有利な条件を引き出せるかもしれない」と考え、その可能性を探るべく、翌年3月に、先ず日本を訪れ、安倍総理に会い、また、その足で中国を訪れ、習近平総書記とも会い、両首脳からプロジェクトに対する支援を取り付けた。こうしてインドネシアの高速鉄道計画は、3人の政治家の思惑が激しく交錯するプロジェクトとなった。

   他方、F/S調査については、日本は2012年に既に実施していたが、その内容は採算面で問題ありとするものであったこともあり、インドネシアは、中国に対してもF/S調査を実施するよう上記訪問中に求めた。これを受けて、中国側は即座にF/S調査に取り掛かり、わずか3カ月で報告書を仕上げた(環境影響調査に至ってはわずか7日間で)。JICAのF/S調査が1年弱を要したことを考えると、中国側のF/S調査はいかにも拙速との感を免れないが、いずれにせよ、報告書の内容は、JICAのそれとは際立った対照を見せた。プロジェクトの操業開始時期は、JICAが2023年とみていたのに対し、中国側は大統領選が行われる2019年には操業を開始できるとした。建設コストについても、JICAは61億ドルを要するとみていたところを、中国は55億ドルで完成できるとした。

  これ以降、高速鉄道プロジェクトを巡る日中間の競争は激しさを増す。そのような中で、中国側は、2015年4月突如プロジェクト企画書をインドネシア政府に提出したが、これは、日本側から見れば、不意打ちとも映る行為であった。このように激しさを増す両国間の競争を見て、インドネシア政府は、2015年7月、日中両国の事業者に対し、それぞれ提案を出すよう求めた。その後の2カ月は、両国間の競争は、入札を巡る技術的な競争の域を超え、現地でのロビー合戦に発展した。
   両国事業者の提案に対する審査結果は、関係者の間では、2015年9月初めに出るとみられていたところ、9月3日インドネシア政府は、突如会見を開き、その場において、高速鉄道プロジェクトはキャンセルすると発表した。同時に、仮に実施するとしても、G-Gベース(政府対政府ベース)では難しく、business-to-businessベース(企業対企業ベース)で進めるしかないとした。この背景には、インドネシア政府が、これ以上海外からの借入れ(政府の債務保証も含む)を増やせば、政府の対外債務の上限に達することが明らかになったことがある。
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  この予想外の発表を受けて、中国側はいち早く対応し、2015年9月半ば、改訂版入札書をインドネシア側に再提出した。そこで、プロジェクトはbusiness-to-businessベースに切り替えることを明確にするとともに、インドネシア政府からは一切の政府支出を求めないし、政府保証も不要とした

   中国側の提案はインドネシア側の要望を全面的に受け入れたものであったことから、9月下旬、インドネシア政府は、高速鉄道プロジェクトは中国に発注すると発表した。インドネシア政府のこの唐突な発表を受け、菅官房長官は即座にジョコ政権に対し遺憾の意を表明したが、時すでに遅しであった。
   この発表を受けて、中国の国営企業(中国鉄道建設公社)は、インドネシアの国営企業3社(建設会社のWijaya Karyaがリーディングカンパニー)との間で、高速鉄道プロジェクトの実施に関する契約を締結し、両者の出資による特別目的会社(SPC)を設置することに合意した。総コストは、55億ドルと見積もり、建設期間は、2016年から2019年までとし、その後50年間は政府から得るコンセッションの下、高速鉄道サービスを提供し、その事業収入をもって初期投資コストを回収するとするBOT(=Build Operate Transfer。民間が施設を建設・維持管理・運営し、契約期間終了後に公共へ所有権を移転する方式)に準じた契約構造を取るとした。
  更に、本プロジェクトの建設に係る必要資金は、中国開発銀行を通じて提供するとし、融資比率は、総コストの75%、grace periodは10年間、融資期間は50年とした。
■ 遅れに遅れたプロジェクトの建設
  契約当時、ジョコ大統領は日中間の競争を巧みに利用し、インドネシアに有利な条件を引き出したとして、大きな喝采を浴びた。だが、プロジェクトが実際に始まると形勢は大きく変わり、中国ぺースで事が運び、インドネシア側は、常に守勢に立たされることになった
   プロジェクトは2016年1月に開催された起工式で始まった。この起工式はジョコ大統領の列席の下華々しく開催されたが、その後は、土地収用が思うように進まず、建設工事はなかなか始まらなかった。運輸省からの「建設」許可は、直ぐには発出されず、2016年8月まで待たされた。また、路線の一部が空軍基地に掛かったことから、49haの土地は翌年3月まで明け渡されなかった。
   このような土地収用の遅れに対し中国側からは再三にわたりその促進を促されていた。このため、インドネシアは、国営企業大臣を北京に派遣し、中国政府への直接説明を行ったほどであった。
   中国開発銀行からも厳しい条件が提示され、土地収用が100%終了しなければ、融資は開始しないとされた。同行が資金を供給し始めたのは、起工式から2年半も経った2018年5月からであった。
   このように出足は大きく遅れたが、2018年半ばからは建設工事は徐々に進み始め、2019年に入るとそのスピードは加速化し、2019年5月には、工事進捗の象徴ともいえる最初のトンネルが完成した。
   一方、工事が進み始めると、逆に、周辺地域の環境への影響が増大し、地元企業、住民からの苦情が相次ぎ、2020年初めには2週間の工事中止命令が出されたほどであった。これに追い打ちをかけるように、2020年3月からは、新型コロナが蔓延し始め、このため、建設工事は一時中断された
   このように個別問題は次々と発生したものの、工事全体的としては、順調に進み始め、2021年3月時点では、70%が完了した。このまま順調に進めば、工事は2022年末までには完成するであろうとの見通しを出せるまでになった。
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■ 膨れ上がったプロジェクトコスト
   建設工事の遅れは、ここに来て漸く解決の目途が付いたが、ここで別の問題が浮上してきた。それは、コストオーバーラン問題であった。プロジェクトコストは、契約締結当時は55億ドルとされていたが、その翌年には、早くも、61億ドルに膨れ上がり、この9月1日の国会での国営建設会社の証言によれば、75~80億ドルに達するであろうとされた
   このような大幅なコストオーバーランが発生したのは、そもそも中国が拙速で準備したF/S調査のコスト見積もりが低過ぎたことに起因するが、勿論中国側が、これを認める訳はなく、このコストオーバーランは、主に、土地収用の遅れ等によるものとされた。
  このように言われてしまうのは、一つには、プロジェクトは(特別目的会社が下請けに出した)インドネシアの国営建設会社によって実施されていたからである。

  このようなアレンジの下では、プロジェクトの遅れや費用の拡大は、工事の実施業者の責任とされがちである。
  上記の国営建設会社がSPCと結んだサブコントラクトは、Engineering, Procurement and Construction契約(EPC契約)に基づくものであったが、Engineering部分は中国鉄道建設公団に委託して行われ、そこでは、資機材等は、中国の高速鉄道の規格に準じたものとすべしとされ、また、Procurementに関しては、中国開発銀行の貸付条件に従い、その資機材等はすべて中国サプライヤーから購入しなければならないとされた。通常のEPC契約であれば、これら資機材等については、幾つかのサプライヤーから見積もりを取り、それらを見比べたうえ、最も安価なものを購入するのが通常であるが、このプロジェクトにおいては、このような原則は働かず、全ての資機材、システムは、中国のサプライヤーから、しかも、その言い値で購入するしかない
  このようなアレンジの下では、資機材やシステムの購入価格は、高いものにつきがちであり、今回のコストオーバーランの背景には実は、このような要因が隠されていたと推察される。
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  このコストオーバーランは、国営企業が負担しうる額を遥かに超えていたので、国営企業省は、この問題を政府レベルでの討議に持ち込んだ。これに対するジョコ大統領の指示は、「本件国有鉄道の運営は、ジャカルタ-バンドン間だけでは、営業距離が短く、商業的には成り立たないので、これをスラバヤまで延伸すべきであり、このためには、日本側と協議を行い、その参画の可能性を当たってみるべきだ」とするものであった。これを受け、2020年7月、インドネシア側は、日本との交渉に入った。しかし、日本側は、これまでの経緯もあり、当然のことながら後向きの回答を行った。
   このような回答を受けたインドネシアは、今度は、中国側との折衝に入り、そこでSPCへの追加の資本投入を求めた(2021年1月)。その交渉結果は、“いつもの通り”明らかにされていないが、中国側からもいい返事はもらえなかったのであろうと推定される。
   これら2つの打開策が受け入れられなかったことから、インドネシア政府は、自ら動かざるを得なくなり、国営企業省は、本年7月に国会に対し、国営企業への追加の資本投入を認めるよう求めた。これを受けて、下院VI委員会は、3つの国営企業に対する33兆ルピアの資本注入を認め、その一部はSPCへの追加出資に当てられることとなった 。
  ただ、この金額だけでは、コストオーバーランをカバーするには十分ではなかったので、現在更なる追加支援策について下院VI委員会で議論されている模様である
■ 政府が乗り出さざるを得なくなった理由
  先にみたように、このプロジェクトは、business-to-businessベースで進めることが合意されたのであるから、インドネシア政府は、大幅なコストオーバーランが出たとしても、それは民間ベースで処理すればよいとして突き放しておけばよかったはずあるが、何故に、政府が、財政資金を使ってまで、その解決に乗り出さざるを得なくなったのであろうか?
  以下、ここに至るまでの、経緯を分析することによって、この問いに答えたい。
  ●中国側は、ジャカルタ-バンドン間の高速鉄道という、コスト高で、到底採算がとれそうもないプロジェクトを、コストを(人為的に)低く見積もり、その上で、これをいわゆるBOTベースで進めれば商業ベースに乗りうるとして売り込みをかけた。
  ●インドネシア側は、この提案に乗り、中国側に契約を付与した。その後、プロジェクトは建設段階に入るが、その過程で、大幅なコストオーバーランが生じた。通常のBOTプロジェクトであれば、プロジェクトは、海外企業 が実施するので、コストオーバーラン問題も、外国側に(中国側に)に処理させておけばよかったはずである。
  ●だが、このプロジェクトは上手く仕組まれており、プロジェクトを実施するために設置された特別目的会社は、インドネシアの企業で、しかも、その資本の6割は国営企業が保有している。このような体制の下では、コストオーバーランが起きれば、インドネシアの国営企業が大半を負担しなければならなくなる。
  ●ところが、これら国営企業は、既に多額の対外債務を抱えており、このような支払を行えるような財務状況にはない。このまま放置すれば、国営企業は破産に追い込まれることとなるので、このような事態を避けるため、国営企業の保有者である政府は、国営企業に対する財政支援に乗り出さざるを得なくなった。これが、本来は民間ベースで進められるべきであったプロジェクトに、政府が財政支援を行わなければならなくなった理由である。
  外国企業が株式の大半を有する合弁企業も含む
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■ 今後更に起きうるより大きな問題
   上記の問題は、数年間の建設期間中の問題であるが、プロジェクトは一旦完成すれば、その後50年間事業運営されることになる。従って、この間、もしも、経営が成り立たなくなれば、それは累積し、より大きな問題となる可能性がある。特に懸念されるのが、キャッシュフローの問題である。
   というのは、先に述べたように、このプロジェクトは、高速鉄道プロジェクトとしては、中途半端な距離であり、また、ジャカルタ、バンドンの二都市間には、既に既存路線が走っていることから、十分な運賃収入が見込めない。また、鉄道事業は、一種の装置産業であることから、(多額の減価償却費は勿論)高い維持管理費を払う必要がある。このような状況下では、営業段階に入ると、すぐに赤字経営に陥る可能性がある。
   それでも最初の数年間は、債務の弁済は猶予されているので、何とかしのいでいけるとしても、grace periodが終わる2026年からは毎年債務支払義務が発生する。この毎年の債務の支払は、SPCの経営に重い負担となる。なんとなれば、その金額は、元本に50年間の累積金利を足し合わせたものを40年間の均等払いとして計算される。これが、例えば、ADBからの融資であれば、その金利は1%弱(今年8月段階では0.856%)と低利であり、50年間の累積金利はそれほど高くはならないが、それが中国開発銀行からの融資である場合は、その金利は6%台と高く、50年間の累積金利額も多額となる。要するに、2026年からは、この債務負担がSPCの経営に重く圧し掛かり、数年もしないうち経営破綻に陥ってしまう可能性が高い。
■ インドネシア側が今後取りうる対応
   このように、このプロジェクトは、一旦事業運営段階に入れば、営業赤字に陥り、その赤字額は雪だるま式に増え続けていくと予想される。ということであれば、このプロジェクトについては、早めに見切りをつけ、出来るだけ早く撤退した方がいいということになる。
   だが、できるだけ早くと言っても、建設途中の今、これを投げ出し、巨大な施設を錆び付かせてしまうことは、現実的な方策とは言えない。兎にも角にも、残り3割の工事は終わらせ、鉄道プロジェクトとして一応完成させるべきであろう。プロジェクトが完成すれば、インドネシアは、専門家パネルを設置し、そこで、このプロジェクトを継続し、次の営業段階に入るべきか、あるいは、ここでプロジェクトをストップさせ、その解散に踏み切るべきかを、ファイナンスの問題を中心に検討する必要があろう。
   おそらくそこで出て来るである結論は、このままプロジェクトを継続すれば、累積赤字は年々増えていくことが予想されるので、傷口を最小に抑えるためのには、営業段階に入る前にこのプロジェクトをストップさせ、早期にSPCを解散させてしまうべきだ、ということになろう。
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  するとSPCはdefaultを起こすことになるので、中国開発銀行は、即座に債権の回収に乗り出すであろう。その際、SPCが有する唯一の資産はプロジェクト資産、即ちジャカルタ-バンドン間の高速鉄道施設、であるから、中国開発銀行はこれを先ず差し押さえるであろう。すると、高速鉄道施設の所有権は中国側に移ることとなるが、これは必ずしもインドネシア側にとって悪いことではない。というのは、インドネシアは、この赤字を生むだけの巨大な「ホワイトエレファント」を手放すことができるようになるからである。

   高速鉄道が中国の手に渡れば、中国側は、これを遊ばせておこうとはせず、直に事業運営に入ろうとするであろう。その際、鉄道サービスだけでは十分採算がとれないとして、必ずや、周辺地域での土地開発の権利の付与を求めて来ると予想される。
   中国側がこの土地開発権を得たとしても、それだけでは十分ではないとみた場合は、更に要求を拡大し、(他国で行ったように)原油や他の地下資源の採掘権も併せ、要求して来る可能性がある。

   そこまで、中国側の要求が拡大すれば、インドネシアとしてはこれを頑としてはねのけなければならない。というのは、中国からの借り入れ事案においては一旦債務の罠にはまってしまうと、どんどん深みにはまってしまい、ついには身動きがとれなくなる恐れがあるからである。これは、どこかで食い止める必要があり、このためには、断固とした姿勢で交渉に臨む必要がある。
   ただ、中国側も、インドネシアはスリランカやタジキスタンのような小国とは異なることは十分承知しているので、両国間の関係を悪化させてまで強引な要求を持ち出すことは避けようとするかもしれず、その場合は、インドネシア側も、中国側と対等に交渉できよう。
■ おわりに
  以上、本プロジェクトについてその経緯をレヴューし、その隠された構造を明らかにしてきたが、ここで冒頭で取り上げた2つの問いに戻りたい。
   第一の問い〈プロジェクトの遅れやコストオーバーランは事業者の非か〉に関しては、事業者側の非というよりは、むしろそれは戦略だったといった方が適切であろう。
   中国側が設定した工事の完成時期は、技術者の積み上げに拠って弾き出したものではなく、ジョコ大統領の再選時期に合わせて、政治的に設定されたものであり、初めから無理と分かっていたと言えよう。プロジェクトコストも、日本との競争に勝つために、JICAのそれよりは低めに出したというだけのことである。一旦これで受注を獲得すれば、工事の執行段階で、何かと理由をつけて、これを変えることはできるとみていたのであろう。
   BOT契約においては最初に出したコミットメントはこれを守らなければならないが、請負契約の場合は、正当な事由があればこれを変更できるので、契約の運用形態も、(当初これに基づくとされていた)BOTから、徐々に請負契約的なものに替えられていったように見える。中国側はこれを意識的にやったとは言わないが、少なくともインドネシア側は、この微妙な契約の変質に気が付かなかったと言える。

   第二の問い〈インドネシアは十分なプロジェクト実施能力を有していたのかどうか〉に関しては、プロジェクトの実施能力が欠けていたとまでは言わないが、事業者に最初にコミットした約束を守らせることができなかったという点で事業監督能力が不足していたと言えよう。
   というのは、事業を的確に監督するためには資機材の価格を始めとするコスト関係情報を十分に把握している必要があるが、高速鉄道に関する情報は、中国側に独占的に保有されており、インドネシア側はこのような情報を持たないので、サプライヤーの言い値をそのまま受け入れるしかなく、プロジェクトコストは徐々に膨らんでいった。
   要するに、このプロジェクトは、発注段階までは、インドネシアのペースで運んだが、一旦、実施段階に入ると中国ペースで進み、建築工事はいつの間にかBOTというよりは、むしろ請負契約に近い形で運用されてしまった。最後には、当初払わなくてもいいとされていた財政資金をインドネシア政府がつぎ込むこまざるを得なくなった
  一方、中国側は、当初は儲からないとみられてきたプロジェクトから、その資機材等の納入を通じ、着実に利益を上げていった。  このように契約が中国ペースで運用されてしまったことの背景には、インドネシア側が(中国版)高速鉄道に関する詳細情報を持っていなかったことに由来するが、この‟情報の非対称性“の影響がより顕著な形で現れるのは、プロジェクトが運営段階に入ってからである。
  この段階で何か問題が起きたとしても、高速鉄道の経営に関する十分な情報を持たないインドネシア側は中国側と有効に議論できず、結局は相手方の言いなりになるしかない。このような状況下では、プロジェクトは長く持てば持つほど、不利になり、相手側に取り込まれてしまう恐れがあるので、このプロジェクトについては、先に述べたように、早めに撤退し、SPCを解散した方がより賢明な選択といえよう。
   ただ、この最後の手段を取るに当たって、一点チェックしなければならないことがある。それは中国側と結んだ契約書である。中国側が途上国と結ぶ契約は、通常、対外秘とされ 、国際慣習に添わない不利益条項が多々含まれている。特に、注意を要するのは、キャンセル条項である。これまで、中国とのプロジェクトを途中で破棄したいとする途上国は幾つかあったが、その際降りかかってくるペナルティーの額があまりにも大きいので、マレーシアの例に見られるように、これを諦めた国が多い
  途上国が中国と契約を締結するときは、その内容に格段の注意を払う必要があるが、今回インドネシアが中国と結んだ契約はそのような不利益条項を含んでいなかったことを希望する。 この点については、世銀を始めとする国際機関が、透明性に欠けるとして、問題にしている
塚田 俊三


2021.05.11-産経新聞 THE SANKEI NEWS-https://www.sankei.com/politics/news/210511/plt2105110038-n1.html
〈独自〉インドネシアと艦艇共同生産 海自装備原型に 安保協力を強化

   日本政府が海上自衛隊の護衛艦を原型にした「共同生産」方式で、インドネシアへの艦艇の受注を目指すことが11日、分かった。平成26年策定の防衛装備移転三原則で「輸出」を認め得るのは救難や警戒監視などに用いられる装備に限られ、殺傷能力のある護衛艦を移転するには輸出ではなく、共同生産でなければ認めにくいためだ。艦艇の共同生産が実現すれば初めてとなる。

   インドネシアへの艦艇移転は日本とイタリア、トルコが受注を争う。日本が受注すれば共同生産を通じ、ASEAN(東南アジア諸国連合)の大国であり、南シナ海で中国の威圧にさらされるインドネシアとの安全保障協力を強化でき、対中牽制(けんせい)で意義が大きい

   インドネシアとの共同生産で原型にするのは最初の艦艇が来年3月に就役予定の海自の新型護衛艦「FFM」。対潜戦や対空戦、水上戦闘に加え、対機雷戦機能も備えたのが特徴だ。
   装備の海外移転に道を開いた防衛装備移転三原則では、輸出を認め得るのは(1)救難(2)輸送(3)警戒(4)監視(5)掃海-という用途の装備を想定している。昨年8月、国産初の「完成品輸出」としてフィリピンと契約した防空レーダーは警戒と監視に当てはまる。艦艇では救難艦や輸送艦は輸出を認め得るが、艦砲などを搭載した護衛艦は認めにくい。
   その上で、三原則で装備の用途を限定していない共同開発か共同生産であれば護衛艦も移転は可能だと判断した。共同開発は導入まで時間がかかり、海自護衛艦を原型にした共同生産を適用する。共同生産は技術移転などを通じ、単純な輸出よりも一層、協力関係を深められる利点もある。

   インドネシアは南シナ海南端にナトゥナ諸島を有し、周辺の排他的経済水域(EEZ)の一部は中国が一方的に主張する境界線「九段線」と重なる。一昨年12月にはEEZ内で中国海警局所属の公船が護衛する形で漁船団が違法操業したことを確認したとしてインドネシアは海軍艦艇を展開させており、早期に新型艦艇を導入したい意向を日本に伝えてきている。
   防衛装備移転三原則実質的な全面禁輸方針とされた従来の武器輸出三原則に代わり、平成26年4月に閣議決定された。(1)国連安保理決議の違反国や紛争当事国には移転しない(2)平和貢献・国際協力の積極推進やわが国の安全保障に資する場合に限定し移転を認め、透明性を確保しつつ厳格審査(3)目的外使用および第三国移転について適正管理が確保される場合に限定-の3本柱で構成される。


2021.04.24-NHK NEWS WEB-https://www3.nhk.or.jp/news/html/20210424/k10012995041000.html
インドネシア軍の潜水艦 酸素切れか 海外支援も加わり捜索続く

  53人が乗ったインドネシア海軍の潜水艦が消息を絶ってから24日で3日がたちました艦内の酸素は24日未明で尽きた可能性があり、海外からの支援も加わって捜索が続いています。
  インドネシア海軍によりますと今月21日、司令官と兵士合わせて53人が乗った海軍所属の潜水艦「KRIナンガラ402」がバリ島の北およそ37キロの海域で消息を絶ちました。
  海軍は事故が起きていた場合、艦内の酸素はおよそ72時間分だとしていて、現地時間の24日午前3時ごろ、日本時間の24日午前4時ごろには尽きる可能性があると指摘していました。軍は、潜水艦は水深500メートルから700メートルの所に位置しているとみていますが、特定できていません。
  このためインドネシア政府は海外にも支援を要請し23日、水中音波探知機やヘリコプターを備えたオーストラリアのフリゲート艦が到着して捜索に加わりました。
  またアメリカ海軍の哨戒機が24日未明、現場海域に到着したほか、シンガポールやマレーシアの救難艦なども向かっているということです。


2021.04.22-産経フオト-https://www.sankei.com/photo/story/news/210422/sty2104220002-n1.html
潜水艦、停電で制御不能か インドネシア、捜索急ぐ

  53人が乗ったインドネシア海軍の潜水艦がバリ島北方沖で21日の訓練中に消息を絶った事故で、潜水中に何らかのトラブルで停電が起き、制御不能になった可能性があることが22日分かった。水深600~700メートル付近まで沈んだとみられている。国防省が明らかにした。
  ロイター通信などによると、同艦は水深250メートル前後までの水圧に耐えられるように設計されている。オーストラリアは22日、捜索に協力する意向を表明。インドネシア国防省によると、インド、シンガポールにも救援支援を要請している。
   潜水した付近の海面に、燃料のような油が浮かんでいるのを21日朝に捜索ヘリコプターが発見。水圧で燃料タンクが破損して油が漏れ出した可能性があるという。(ジャカルタ共同)



2020.01.10-Livedoor ニュース-https://news.livedoor.com/article/detail/19512390/
消息絶ったインドネシア旅客機、ジャワ海に墜落 人体の一部発見

  【AFP=時事】9日に乗客乗員62人を乗せてインドネシアのジャカルタから離陸直後に消息を絶った格安航空会社(LCC)スリウィジャヤ航空(Sriwijaya Air)SJ182便のボーイング(Boeing)737-500型機は、ジャワ海(Java Sea)に墜落したことが分かり、10日朝までに残骸や人体の一部がジャカルタに近い海で見つかった。
  スマトラ(Sumatra)島ポンティアナク(Pontianak)行きのSJ182便は9日午後、スカルノ・ハッタ(Soekarno Hatta)国際空港を離陸した約4分後に急降下した。原因は分かっていない。当局は軍の艦艇10隻、ヘリコプター、ダイバーを出して、海と空から行方不明者の捜索に全力を挙げている。

ダイバーらは墜落した場所の可能性がある少なくとも3か所にオレンジ色のバルーンで目印をつけた。その位置は同機が消息を絶った位置とかなりの確かさで合致していると考えられると、インドネシア軍幹部は述べた。現場は日帰り観光客に人気の島の近く。
  ジャカルタ警察の広報担当者はメトロTV(Metro TV)に対し、「今朝までに警察は2つの遺体袋を受け取った。一つは乗客の持ち物、もう一つには人体の一部が入っていた」と述べた。
  当局によると、乗客乗員62人は全員インドネシア人で、うち10人は子どもだった。
 【翻訳編集】AFPBB News


2020.01.10-日刊スポーツ-https://www.nikkansports.com/general/news/202101100000131.html
1分で3300m急降下、インドネシア機墜落事故

  62人が搭乗していたインドネシアのスリウィジャヤ航空の国内線旅客機がジャカルタ北方沖で9日に消息を絶った事故で、機体は高度約3300メートル付近から急降下し1分以内に墜落したとみられることが、世界中の航空機を追跡する民間ネットワーク「フライトレーダー24」の記録で10日分かった。
  当局は現場海域から機体の一部とみられる破片を複数回収しており、分析を急いでいる。
  同機はカリマンタン(ボルネオ)島西部ポンティアナク行きのボーイング737-500型機。9日午後、ジャカルタ郊外のスカルノ・ハッタ国際空港を離陸し4分後に消息を絶った。地元メディアによると、ポンティアナクの空港には乗客の帰りを待つ大勢の家族が詰めかけた。
  フライトレーダー24によると、同機は1994年に製造され、米国の航空会社が運用した後、2012年からスリウィジャヤ航空が使用していた。同航空は03年に設立され主に国内線を運航している。(共同)


インドネシア
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

インドネシア共和国インドネシア語: Republik Indonesia)、通称インドネシアは、東南アジア南部に位置する共和制国家。首都はジャワ島に位置するジャカルタ首都特別州。5,110kmと東西に非常に長く、また世界最多の島嶼を抱える国家島国)である。赤道にまたがる1万3,466もの大小の島により構成される。人口は2億3,000万人を超える世界第4位の規模であり、また世界最大のムスリム人口を有する国家としても知られる。
島々によって構成されている国家であるため、その広大な領域に対して陸上の国境線で面しているのは、ティモール島における東ティモールカリマンタン島(ボルネオ島)におけるマレーシアニューギニア島におけるパプアニューギニアの3国だけである。海を隔てて近接している国家は、パラオインドアンダマン・ニコバル諸島)、フィリピンシンガポールオーストラリアである。
東南アジア諸国連合(ASEAN)の盟主とされ、ASEAN本部が首都ジャカルタにある。そのため、2009年以降、アメリカ中国など50か国あまりのASEAN大使が、ジャカルタに常駐。日本も、2011年5月26日、ジャカルタにASEAN日本政府代表部を開設し、大使を常駐させている。東南アジアから唯一、G20に参加している







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