ハンセン病-1



2022.12.04-毎日新聞-https://mainichi.jp/articles/20221204/k00/00m/040/201000c
死刑男性遺族が再審請求 ハンセン病理由に特別法廷の「菊池事件」

  1952年に熊本県で起きた殺人事件などを巡り、ハンセン病とされた男性が無罪を訴えながら隔離施設内の「特別法廷」で裁かれて死刑になった「菊池事件」で、男性の遺族が熊本地裁に再審請求を申し立てていたことが判明した。申し立ては2021年4月。熊本市内で4日に開かれた、再審を支援する市民集会で弁護団が明らかにした。

  菊池事件を巡っては、特別法廷での審理は憲法違反なのに検察が再審請求しないのは違法として、ハンセン病の元患者らが国家賠償を求めて熊本地裁に提訴。地裁は20年2月、特別法廷を「ハンセン病を理由とした差別だ」などとして、初めて違憲と認定する判決を言い渡し、確定していた。
  これを受け、元患者らは同7月、検察自らが再審を請求するよう求める要請書を検事総長へ提出したが、検察側は拒否。一方、弁護団は憲法の「請願権」を根拠に、市民や元患者ら約1200人を請求人とする「再審請求書」を同11月、地裁に提出していた。
  弁護団によると、男性の死刑執行後、遺族は差別や偏見を恐れて再審請求に否定的だった。ただ、再審を求める市民運動の広がりに後押しされたこともあり、遺族は一転して再審請求に踏み切ったとみられる。
  20年2月の熊本地裁判決は、特別法廷が違憲であることが有罪判決の事実認定に影響したとはいえず、再審を開く理由に当たらないなどと判断していた。
  弁護団の八尋光秀弁護士は「社会には今なお、ハンセン病に対する鋼のような差別や偏見がある。そんな中で我々は遺族の再審請求をどう育てていけば、よりよい結論が得られるのか。今は、そのことに全力を尽くしたい」と話した。
  地裁での再審請求の審理は、遺族と市民分の2本立てになる。【江刺正嘉】

菊池事件
  1951年8月、熊本県で元村職員宅にダイナマイトが投げ込まれ国立ハンセン病療養所「菊池恵楓園(けいふうえん)」(同県合志市)への入所勧告を拒んでいた男性(当時29歳)が殺人未遂などの容疑で逮捕された。隔離施設で52年6月に開かれた特別法廷で懲役10年の判決が言い渡されたが、逃走。指名手配中の同7月に元村職員が刺殺体で見つかり、数日後に殺人容疑などで逮捕された。男性は特別法廷で一貫して無罪を主張したが、53年8月に1審で死刑判決を受け、57年に確定62年9月に3回目の再審請求が棄却された翌日、死刑が執行された。



2021.11.22-DYODO(一般社団法人共同通信社)-https://nordot.app/835297406391009280?c=39546741839462401
戦前の療養所生活を冊子に・・・ハンセン病、菊池恵楓園

  熊本県合志市の国立ハンセン病療養所「菊池恵楓園」の入所者自治会が、1909年の開所から太平洋戦争終結までの所内の生活をまとめた冊子を作成した。炊事や清掃といった「患者作業」のほか、入所者を罰するための「監禁室」などを紹介。暮らしぶりが伝わる写真や資料を添えて解説している。

  掲載資料などは、来年5月に開館する園の歴史資料館で展示する予定で、自治会副会長の太田明さん(78)は「後世に歴史を伝える貴重な資料だ。資料館に足を運び理解を深めてほしい」と話す。冊子の一般配布は予定していないが、相談に応じるとしている。


2020.2.26-NHK 熊本 NEWS WEB-https://www3.nhk.or.jp/lnews/kumamoto/20200226/5000007561.html
菊池事件で熊本地裁「憲法違反」

ハンセン病の患者とされた男性が殺人罪などに問われ、無実を訴えながら死刑を執行されたいわゆる「菊池事件」をめぐって、元患者らが国に賠償を求めた訴訟で、熊本地方裁判所は男性が裁かれていた特別法廷が憲法違反だったとする初めての判断を示しました。
  「菊池事件」は、殺人罪に問われた、ハンセン病患者とされた男性が、菊池恵楓園などで開かれた「特別法廷」の裁判で死刑判決を受け、無実を訴えながらも昭和37年、40歳の時に執行されたものです。
  裁判では、男性を支援してきた元患者ら6人が「隔離された『特別法廷』での差別的対応は、憲法違反で検察庁が再審=裁判のやり直しを請求しないのは違法」で、精神的な苦痛を受けたとして1人あたり10万円の賠償を国に求めていました。
  26日の判決で熊本地方裁判所の小野寺優子裁判長は、特別法廷の審理について「検察官などが証拠品を扱う際にゴム手袋をはめ箸を用いるなどしたことは被告がハンセン病患者であることを理由とした差別ですべての国民の法の下の平等を定めた憲法14条1項などに違反する」としました。
  また、「法廷を裁判所外に設けたことなどはハンセン病に対する差別と偏見に基づき被告の男性の人格権を侵害したとして、憲法13条に違反する」としました。
  さらに、「特別法廷は、国民が訪問することが事実上不可能な場所が開廷場所に指定され、国民の傍聴を拒否したに等しいとも考えられる」として裁判公開の原則を定めた憲法37条1項と82条1項に違反する疑いがある」としました。
  一方で、原告の賠償請求については「検察が再審請求をしなかったことが著しく合理性を欠くと認めることは出来ない」などとして棄却しました。


裁判のあと、原告と弁護団は熊本市中央区のホテルで会見を開きました。
  
会見では、個人の人格権を定めた憲法13条、すべての国民は法の下に平等だとする14条について、違反だとする判決について、原告や弁護士から「画期的」とか「踏み込んだ判決だ」といった評価の声が聞かれました。
  弁護団の徳田靖之共同代表は「菊池事件における特別法廷が、明確に『憲法違反』と認めたことや、公開原則に違反する疑いがあるという判断は評価出来る。実質的な勝訴判決で、再審を勝ち取るという最終目的を達成するための一歩になったと思う」と話していました。
  原告のひとりで、菊池恵楓園で入所者の自治会長を務めている志村康さん(87)は「再審は認められなかったが、男性の人権を取り戻すための次の闘いへのとっかかりとなる判決が出たと思う。弁護士や法の専門家と相談し、この判決をいかせるすべを探っていきたい」と話していました。
  26日の判決で熊本地裁は特別法廷を憲法違反と判断しましたが、最高裁判所に特別法廷についての見解を改めて質問したところ、「調査報告書に記載した通りです」と回答しました。


【特別法廷をめぐる経緯】。
  ハンセン病の患者は、およそ90年間にわたって国の政策によって隔離され、療養所などに設けられた「特別法廷」で裁判が行われることもありました。
  ハンセン病は、感染力がきわめて弱く、治療法が確立された病気ですが、国は、平成8年に「らい予防法」が廃止されるまで、患者を強制的に療養所に隔離する政策を続けました。
 この間、各地の裁判所も、通常の法廷ではなく、隔離された療養所や刑務所などに設けた「特別法廷」で患者の裁判を行っていて、件数は95件にのぼりました。
  隔離政策について国と国会は平成13年に誤りを認めて謝罪し、厚生労働省の委託を受けた機関は平成17年に「ハンセン病を理由とした特別法廷は不合理な差別だ」とする検証結果をまとめました。
  しかし、最高裁判所はその後も当時の対応を検証せず、元患者などでつくる団体が第三者機関による検証を申し入れた結果、6年前に(2014年)ようやく検証を始めました。
  最高裁は外部の専門家による有識者委員会も設置し、この委員会は「通常の法廷で裁判を受けられなかったのは平等の原則を定めた憲法に違反していた」という意見をまとめました。
  一方、最高裁は手続きが違法だったことは認めましたが、憲法に違反していたとは認めませんでした。
【特別法廷とは】。
  ハンセン病の患者の特別法廷は昭和23年から昭和47年まで95件開かれ、一般の人の出入りがほとんどない療養所や刑務所などで審理が行われていました。
 刑事裁判や民事裁判は原則として裁判所にある公開の法廷で開くことになっていますが、最高裁判所が認めた場合、別の場所を特別法廷に指定することができます。
  最高裁判所によりますと、ハンセン病患者の特別法廷は、「感染のおそれ」を理由に、昭和23年から昭和47年まで95件開かれ、いずれも一般の人がほとんど出入りしない療養所や刑務所などの1室が指定されました。
 最も多かったのは、熊本県合志市の「菊池恵楓園」で、近くに設けられた医療刑務所も含めて35件開かれました。
  続いて、岡山県瀬戸内市の「長島愛生園」で9件、岡山刑務所で8件、東京拘置所で7件、群馬県草津町の「栗生楽泉園」で4件などとなっていました。
 今回の「菊池事件」も含めて特別法廷のほとんどは刑事裁判で、元患者の団体は、「裁判官や弁護士、検察官が予防着と呼ばれる白衣に帽子やマスク、長靴をして審理に臨んだものもあった」と指摘しています。


ハンセン病
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』


ハンセン病Hansen's disease, Leprosy)は、抗酸菌の一種であるらい菌 (Mycobacterium leprae) の皮膚マクロファージ内寄生および末梢神経細胞内寄生によって引き起こされる感染症である。

病名は、1873年にらい菌を発見したノルウェー医師アルマウェル・ハンセンに由来する。かつての日本では「癩(らい)」、「癩病」、「らい病」とも呼ばれていたが、それらを差別的に感じる人も多く、歴史的な文脈以外での使用は避けられるのが一般的である。その理由は、「医療や病気への理解が乏しい時代に、その外見や感染への恐怖心などから、患者への過剰な差別が生じた時に使われた呼称である」ためで、それに関連する映画なども作成されている。

感染経路は、らい菌の経鼻・経気道よりのものが主であるが、他系統も存在する(感染経路の項にて後述)。らい菌の感染力は非常に低く、治療法も確立した現状では、重篤な後遺症を残すことや感染源になることは無いものの、適切な治療を受けない・受けられない場合、皮膚に重度の病変が生じ、他者へ感染することもある。

2016年のWHOによる統計では、世界におけるハンセン病の新規患者総数は、年間約21万人である。一方、日本の新規患者数は年間で0〜1人に抑制され、現在では極めて稀な疾病となっている








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