日本の首相-3(管・安部・小泉)-1
2023.01.10-毎日新聞-https://mainichi.jp/articles/20230110/k00/00m/040/049000c
安倍氏銃撃 山上容疑者の鑑定留置終了、移送 殺人罪などで起訴へ
【吉川雄飛、川畑岳志、林みづき】
安倍晋三元首相(当時67歳)が奈良市で演説中に銃撃され死亡した事件で、
殺人容疑などで送検された山上徹也容疑者(42)の鑑定留置が10日、終了した。奈良県警は同日、山上容疑者を留置先の拘置施設から奈良西署に移送した。奈良地検は鑑定留置中の精神鑑定で山上容疑者の刑事責任能力を問えると判断した模様で、
勾留期限を迎える13日までに殺人や銃刀法違反の罪で起訴する見通し。
山上容疑者を乗せた車は午後2時20分ごろ、大阪市都島区の大阪拘置所を出発した。山上容疑者の車を別の複数の警察車両が挟んで移動する厳戒態勢で、午後3時10分ごろに捜査本部がある奈良西署に到着。約20人の署員が混乱を避けるため交通整理などに当たった。
駐車場で車を降りた山上容疑者はめがねをかけ、紺色のパーカに黒いズボン姿。5人ほどの警察官に囲まれ、集まった約80人の報道陣には目をやることもなく、うつむきがちに署内に入った。
山上容疑者は2022年7月8日午前11時半ごろ、近鉄大和西大寺駅北口で参院選の応援演説中だった安倍氏を背後から銃撃したとして、殺人未遂容疑で現行犯逮捕された。安倍氏は同日夕に死亡。県警は殺人容疑に切り替えて送検した。事件で手製の銃や実弾を使用したとして、県警は山上容疑者を銃刀法違反(発射、加重所持)容疑でも追送検した。
捜査関係者によると、山上容疑者は母親が入信した世界平和統一家庭連合(旧統一教会)を憎むようになり、教会の活動を国内に広めたのが安倍氏だと考え、銃撃したと供述している。
地検が山上容疑者を殺人罪などで起訴した場合、公判は裁判員裁判の対象になり、刑事責任能力の有無や程度が争点になるとみられている。そのため地検は同年7月25日から始まった鑑定留置で精神科医に依頼し、生い立ちや事件当時の精神状況などを慎重に調べていた。
【吉川雄飛、川畑岳志、林みづき】
2022.12.23-毎日新聞-https://mainichi.jp/articles/20221224/k00/00m/040/084000c
安倍元首相銃撃の山上容疑者、殺人罪で起訴へ 奈良地検
奈良市で参院選の応援演説中だった安倍晋三元首相(当時67歳)が銃撃され死亡した事件で、奈良地検が
鑑定留置中のA容疑者(42)=殺人容疑で送検=について、同罪で起訴する方針を固めたことが関係者への取材で判明した。精神科医による精神鑑定の状況から、A容疑者の刑事責任を問えると判断した模様だ。
A容疑者の鑑定留置は7月25日から始まり、期限は2023年1月10日。鑑定留置によって停止されていた勾留の期限は同13日までで、地検はその日までにA容疑者を
起訴するとみられる。
2022.10.14-NHK NEWS WEB-https://www3.nhk.or.jp/news/html/20221013/k10013857981000.html
安倍元首相「国葬」費用 12億円台に 事前の概算 下回る見通し
先月行われた、
安倍元総理大臣の「国葬」に実際にかかった費用は、事前の
概算を4億円ほど下回る12億円台になる見通しであることが分かりました。政府は14日に国会で与野党に示すことにしています。
先月27日に行われた
安倍元総理大臣の「国葬」の費用について、政府は実施前に16億6000万円程度になるという概算を示し、詳細は実施後に精査したうえで、できるだけ早く速報値を公表するとしてきました。
政府関係者によりますと、
これまでの精査の結果「国葬」に実際にかかった費用の総額は、事前の概算を4億円ほど下回る12億円台になる見通しだということです。
政府の担当者の1人は、NHKの取材に対し「外国要人を含めた参列者が、当初の想定より減ったこともあり、警備費や接遇費が抑えられた」としています。
政府は、14日に具体的な内容を公表するとともに、衆議院予算委員会の理事会で、与野党に示すことにしています。
今回の「国葬」は、世論の賛否が分かれるなか、全額が国費で賄われたこともあり、実際の費用が明らかになることで今後の国会審議でも、その妥当性が焦点の1つとなりそうです。
岸田首相 “費用適切だったかどうかも検証していきたい”
岸田総理大臣は13日夜、フジテレビのBS番組「プライムニュース」に出演し、実際にかかった費用が事前の想定を下回る見通しになったことを認めた上で
「海外から多くの賓客を迎えたが、滞在日数が当初の想定より限定されたことにより、警護費や接遇費が減った。そうした積み重ねによるものだと理解している」と述べました。
そして「しっかりと今後の議論に資するような形で数字を明らかにし、費用が適切だったかどうかも検証していきたい」と述べました。
2022.10.07-産経新聞-https://www.sankei.com/article/20221007-SZI7PGO2JFNEFNTPY6IMV4ALQU/
教団襲撃への協力求めメール 元教会幹部に容疑者 安倍氏言及なし
安倍晋三元首相が
奈良市で街頭演説中に銃撃され死亡した事件で、
殺人容疑で送検されたA容疑者(42)=鑑定留置中=が事件の約1年前、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の地元・奈良の元幹部(60)に、教団トップ襲撃への協力を募る趣旨のメールを送っていたことが分かった。安倍氏への言及は一切なかったが、メールに気付いたのは事件後だった。8日で事件から3カ月。元幹部は「早く気付いていれば」と悔やむ。
これまでの調べや親族への取材などによると、A容疑者の母親は平成3年ごろ旧統一教会に入信。相続した不動産の売却代金など1億円を超える献金を続け、14年に破産した。A容疑者はその後、旧統一教会への恨みを募らせ、教団幹部の襲撃を画策。安倍氏が昨年9月、旧統一教会の友好団体にビデオメッセージを寄せたことで、安倍氏に標的を変えたとされる。
元幹部によると、A容疑者とは高校時代から10年ほど交流。その後、連絡が途絶えていたが、昨年5月に「アドレスを聞きました」とメールが届き、「教会を憎んでいますか」という趣旨の質問があった。元幹部が否定すると、「もう結構です。この話はなかったことにしてください」と返信があった。
元幹部はこの時点でやり取りが途絶えたと思っていたが、別のメールが届いていたのを事件後に発見。文面の詳細は明かさなかったが、教団トップの襲撃を示唆するような内容だったという。
A容疑者はこのメールを送った直後、自身のツイッターにも《統一教会を、(教団トップ)一族を、許せないという思いがあるなら どうか連絡して下さい》と書き込んでおり、同じ内容だったとみられる。
元幹部は取材に「家庭を壊し、自己破産させた教団を潰さないといけない、という思いに駆られたのだろう。見落とさずに読んでいれば、また展開が違ったかもしれない」と話した。
2022.10.04-Yahoo!Japanニュース(KTV)-https://news.yahoo.co.jp/articles/dcfb8dbd05dd8e669dba48b943a19f1dc4d1b1a9
安倍元首相銃撃現場、慰霊碑設置せず花壇を整備 奈良市長「世論の分断生まぬよう判断」
安倍晋三元首相が銃撃された奈良市の大和西大寺駅前の現場について、
市は4日、慰霊碑やプレートなどは設置せず、現場近くに花壇を整備すると発表しました。
安倍元首相の銃撃事件から間もなく3か月。事件現場では4日も、手を合わせる人の姿が見られました。
男性「事件後初めてなので、そっと手を合わせた」
四方をガードレールで囲まれた特異な形状の銃撃現場について、慰霊碑などの設置を検討してきた奈良市の仲川市長は-仲川市長「
具体的な構造物等を設置するという形ではなくて、当初の計画通りに歩道と車道を整備する。一方で、
実際に事件の起きた現場については、花壇のような形で整備をする」、慰霊碑や事件を伝えるプレートなどは設置せず、その代わりとして、近くの歩道に花壇を作ると発表しました。
安倍元首相が倒れた現場に向かって手を合わせることができる作りにするといいます。 仲川市長「(安倍氏)一人の政治家の評価ということになると当然、賛成の方、反対の方、色んなお考えの方がおられるので、ある意味その行動自体が、世論の分断を生むという部分もあると感じたところもある」
安倍元首相の評価を巡り、賛否が割れている現状に配慮したということです。
街の人「別にそんな記念にすることでもないし、いいんじゃないですか道路で」 街の人「道路で踏みつけるのはちょっとなんか…。(かといって)形で残ったらつらいなと思って」
今から101年前。
当時の原敬首相が殺害された、東京駅の現場は、多くの人々が行き交う、切符売り場のそばにありますが、今も事件を伝えるプレートとマークが残されています。
一方、奈良市の判断はー 仲川市長
「何かしらの弔意や、何かしらの事件を記憶するような存在が、あると言えばあるし、ないと言えばない。それぞれのお考えによって、受け止められるという形を今回模索した」 事件の記憶をどのようにして後世に伝えていくか。
現場の整備は来年の春にも完了するといいます。
2022.10.01-東京新聞-https://www.tokyo-np.co.jp/article/205720
国葬で「感動的」と称賛された菅義偉前首相の弔辞…冷静に読むとにじむ「弱者切り捨て、身内優遇」
(特別報道部・木原育子、中山岳)-
(歩)
安倍晋三元首相の国葬で、
友人代表としての弔辞を読み上げた菅義偉前首相。その内容は、
首相在任中に発信力不足が批判された菅氏にしては、話しぶりも含め、友人としての思いがこもって感動的だったと評価する声も多いが、果たして手放しで肯定してよいのか、気になる点がたくさんある。感動でごまかされないよう、もう一度じっくりと菅氏の弔辞を見直してみた。
(特別報道部・木原育子、中山岳)
緊張だろう。弔辞を入れた包み紙を机に置く手がかすかに震えていた。日本武道館内の記者席から双眼鏡越しに見た菅義偉前首相の表情は硬く、伏し目がち。静まり返った会場で、誰もが菅氏の言葉を待った。
◆詩的で心地よい「まるで恋文」
「7月の、8日でした」。聞き慣れた菅氏らしい少し抑揚のない声が、波のようにひたひたと会場に広がった。安倍元首相が亡くなった衝撃のあの日に、一気に引き戻されていく。
どんな時も「総理」と呼んでいた安倍氏を「あなた」と呼び、「セミ」といった夏の季語から「高い空」「秋の雲」へと、季節の移ろいを表現した文章。予定調和な国会答弁と違い、詩的で心地よく感じた。
約12分間の弔辞は絶賛された。菅氏に近い自民党の三原じゅん子参院議員はすかさずツイッターを更新し「まるで恋文」と表現。国民民主党の玉木雄一郎代表も「感動しました。あの挨拶で国葬儀に対する印象が変わった人もいるのではないでしょうか」と持ち上げた。近現代日本政治史に詳しい
御厨貴・東大名誉教授は国葬当日夜のテレビ番組で、菅氏の弔辞の後、自然に拍手が湧き起こったことに触れ、「引き込まれた」と称揚した。
だが、国葬当日の高揚から日を置いて、
あらためて文字になったこの弔辞を読むと、ひっかかるところが随所にある。
例えば、読み上げ開始後40秒で飛び出した「あなたならではの、あたたかな、ほほえみに、最後の一瞬、接することができました」という部分。
奇跡のような話で確かに感動的だが、弔辞によると、菅氏は安倍氏銃撃の知らせを受け、現場の奈良にすぐに駆けつけたという。病室の安倍氏は心肺停止状態のはずだ。その状態でほほえむことはありうるのか。
医師の木村知氏は「菅氏が到着した時、安倍氏がどういう状態だったか詳細は不明だが、その状況で表情筋が感情で動くことは、医学的見地からは、極めて考えにくい」と話す。ただ、否定もしない。「安倍氏のお友達である菅氏にはきっとそう見えたのでしょう」
◆「よりにもよって」他の人ならよかったの?
再び弔辞に戻ると、菅氏は「天はなぜ、よりにもよって、このような悲劇を現実にし、いのちを失ってはならない人から、生命を、召し上げてしまったのか」と続けている。
木村氏は「『よりにもよって』を、漢字で書くと『選りにも選って』。この言葉に、選ぶならほかにもっと適当な人がいるのにとの意を感じる」と述べる。「よりにもよって」との修飾語は「
いのちを失ってはならない人から」にかかる。とすれば、「
この一文で、他に選ばれるべきだった者、すなわち死んでもかまわない人の存在を認めている。まさに優生思想の考え方そのものだ」と批判する。
「安倍政権は生産性の有無で人の価値を決め、弱い立場の人を切り捨てる一方、森友・加計学園問題のように身内を優遇する選別政治を行ってきた。この一文を見て、ああ、やっぱりと思う人がいても不思議ではない。『いのちを失ってはならない人』ではなく、単純に、『私の大切な友人』にすれば、何の問題も違和感もなかったのに」
◆事前に作成したのに「たくさん若者」確認は?
菅氏の弔辞は「武道館の周りには、花をささげよう、国葬儀に立ちあおうと、たくさんの人が集まってくれています。20代、30代の人たちが、少なくないようです」と続く。文面は前もって作ったはずで、菅氏は献花の参列者に若者が多いと確認してアドリブを入れたのかと疑問がわく。
ともあれ、この「若者のための安倍さん」アピールに不自然さを感じる人もいる。「SEALDs(自由と民主主義のための学生緊急行動、シールズ)」元メンバーの
是恒香琳さん(31)は「現実が見えていないのでは」とにべもない。「献花に訪れた若者もいたとは思いますが、私の周囲は仕事に忙しかったり、台風被害があった静岡にボランティアに行く準備で『国葬どころじゃない』と冷めている人は少なくなかった」
是恒さんは、安倍政権は就職率の高さを誇り、若者や女性の味方であるかのようなアピールが目立ったと言う。「実際は非正規雇用が多く課題も多かった。政策の中身はおざなりなのに『若者の支持が多い』と政治利用したのが安倍政権だったのではないか。何より選挙の投票率の低さが、政治に失望している若者の多さを表している」
菅氏は弔辞で、安倍政権の「成果」も並べた。まず挙げたのが環太平洋連携協定(TPP)。他国との交渉に時間をかけるべきだという菅氏に対し、安倍氏は「やるなら早いほうがいい」と考えていたという。菅氏は「どちらが正しかったかは、もはや歴史が証明済みです」と絶賛した。
ただ、TPPは2016年に日本を含め12カ国が署名したが、17年に米国が離脱。残り11カ国で合意し18年に発効したものの、多くの市民が恩恵を実感したとは言い難い。
東大大学院の鈴木宣弘教授(農業経済学)は「安倍政権は米国の意向に沿って必死にTPP交渉参加を急いだが、トランプ米大統領が離脱を表明してはしごを外された。米国離脱後の他国との交渉は、日本企業に有利な条項が凍結されるなどした一方、農産物の輸入枠は拡大されて国益を損なう点もあった」と指摘。国内農業への悪影響の検証もないままで、「TPPを正しかったと断じるのは、理解に苦しむ」と批判する。
◆特定秘密保護法も安保法も「正しい判断」
弔辞のハイライトで飛び出したのは「総理、あなたの判断はいつも正しかった」との言葉。特定秘密保護法、平和安全法制、改正組織犯罪処罰法を挙げ「難しかった法案を、すべて成立させることができました」
だが、いずれも国会審議中は国論を二分するような反対運動が起き、「自民1強」で採決が強行された法律ばかりだ。それを忘れたかのような賛美一色の弔辞に、評論家の佐高信氏は「自分たちだけが正しいというような独善的な考え、狭さを感じた」と語る。
佐高氏が特に見過ごせなかったのは、弔辞のクライマックス。菅氏が、安倍氏が読みかけだったという山県有朋を取り上げた本に触れたことだ。「山県有朋と言えば藩閥政治、言論弾圧の象徴だ」。山県の死去時、雑誌記者だった石橋湛山はコラムで「死もまた社会奉仕」と痛烈に批判した。佐高氏は「強権政治の親玉のような山県を持ち出すとは、おめでたい弔辞だ。自民で首相も務めた石橋が批判した逸話を知らなかったのか」と皮肉る。
駒沢大の山崎望教授(政治理論)は「自民の身内として、菅氏が情感に訴える表現で安倍氏を悼むことは理解できる。だが、国葬の弔辞で安倍政権や政策を賛美するのは危うい。政権の全てを正当化し、異論や反対論を封じることにつながるからだ」とし、こう警鐘を鳴らす。「安倍氏の死を悲しむことと、政権や政策への評価は本来、全く別のはず。それが今回の弔辞では一体化し、まさに政治利用と言わざるを得ない」
◆デスクメモ
頑張る選手の姿には誰もが感動したが、その裏側に汚職が広がっていた東京五輪。目を赤くして弔辞を読む菅氏の姿と声も、確かに感動的かもしれないが、冷静に読み返してみれば、これだけのひっかかりがある。感動で、安倍氏にまつわる負の記憶を上書きされるわけにはいかない。
(歩)