習政権が払う「カビ給食」のツケ――矢板明夫・外信部次長
【「矢板明夫の中国点描」産経新聞 H31(2019).3.20 】


中国の国会にあたる全国人民代表大会(全人代)が開かれていた3月13日、北京から約2千キロ離れた四川省で、学校の給食の安全をめぐり、市民と
     警察隊が衝突する事件が起きた。きっかけは数枚の写真だった。

   衝突が起きた前日の12日、四川省の成都市第7実験中学校で行われた植樹のイベントに参加した数人の保護者が、同校の厨房(ちゅうぼう)に立ち寄り、
     冷蔵庫の中をのぞいた。生徒の給食の食材となる冷凍肉に白いカビと黒い斑点があり、トマトなどの野菜も腐っていることを発見。保護者たちが写真
     を撮り、インターネットにアップしたところ大きな反響を呼んだ。「子供にこんなものを食べさせているのか」と翌日、保護者たちは学校に詰めかけ、
     周辺住民も巻き込んで大きな抗議デモに発展した。結局、警察隊が出動し、10人以上が拘束される騒ぎとなった。

   「カビ給食」の写真はSNSを通じて全国に拡散し「うちの子の給食は大丈夫か」といった問い合わせが各地の学校に殺到した。不安になった親は子供に
     弁当を持たせたり、昼食のときは外出させたりし、一部の地域で混乱もあった。

   成都市の地元政府は当初、同校の管理責任を認め、校長を更迭し、食材を提供する業者に対し業務停止命令を出した。しかし、デモが拡大し、真相究明
     を求める声が高まると、態度を一変させた。15日になってから、成都市は「食材を調べたが、基本的に問題はなかった」と発表し、ネットにアップされた
     写真については「捏造(ねつぞう)されたものだ」として、撮影した保護者ら3人を「騒ぎを起こそうとした」容疑で検挙した。

   当局の変わり身の早さに市民は不信感を募らせた。

   「問題がないならなぜ校長を更迭したのか」「保護者が写真を捏造する動機がない」といった声がインターネットに寄せられたが、次々と削除された。

   事件を取材した中国人記者は「学校と業者側が癒着し、食費を不当に低く抑えたという単純な話だ。各地で同じようなケースが多いので、これ以上追及する
     と収拾がつかなくなり、政府の責任に発展することを恐れた」と解説した。

   中国で近年、政商癒着によって子供が被害者になる事件が頻発している。昨年夏には欠陥ワクチンが政府系医療施設を通じて流通し、数十万人もの児童
     に接種された事件が起きた。2016年には、遼寧、江蘇、広東省など各地の小学校に設けられたグラウンドの合成樹脂製トラックに有害物質が含まれて
     いたことが判明し、多数の児童に、鼻血、めまい、吐き気などの異常が出ている。

   これらの事件はいずれも今回と同様、当初は大きな話題となったが、その後、抗議者の拘束と厳しい情報統制が敷かれた。被害状況や原因といった
     真相は今も隠蔽(いんぺい)されたままだ。

   政商癒着が教育現場に浸透し、ここまでひどくなったことは、中国共産党の官僚腐敗の深刻さを物語っている。習近平政権が「トラもハエもたたく」と称して
     ここ数年、全国的に展開している腐敗撲滅運動にほとんど成果が出ていないことの表れともいえる。

   そのツケを払うことになるのは共産党政権だろう。わが子が不正の餌食になっているのに、抗議の声すら抑えつけられている国民の不満は蓄積され続けて
     いる。将来、そのマグマのようにたまった不満が大きな力となり政権を揺るがしかねないからだ。

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